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来訪者編
83 アクアヴェール
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「それにしても、また急だねぇ。そんなに水遊びがしたかったの?」
私が収納から取り出したタオルで、自分にかかってしまった水を拭いながらアルトさんが尋ねる。
私は腕を突き出し、そこにピッタリとはまっているアクアヴェールを二人に見せた。
「これ、魔道具やさんで見つけたの。水中呼吸と水中での服や肌の保護ができる魔道具なんだって。これを試してみたくて」
へぇ……と、二人は興味深げにそれを見つめる。
「それ、別にお風呂でも……」
ライくん、お口にチャックだよ。
確かにそうだけど、これを見た瞬間にプールを思いついちゃったんだから仕方がない。
どうせなら遊びたいじゃないか。
それに……
「水中戦の訓練にも役立つと思うの!!」
魔物は、海にもいる。
私はまだ海を見たことはないけど、これからも旅を続けるなら、いつかは海に行くこともあるだろう。
戦うまではいかなくても、足手まといにならないよう水中での動きを訓練しておくに越したことはない。
なんて、たった今思いついた後付の理由を、さも初めからそのために作りました!とでも言うように説明する。
「チナちゃんっ……!」と、感激のアルトさんと、無言で頭を撫でてくるライくんに申し訳ない気持ちになり、視線をそらすと、ジト―っとした目のミカンとホムラがいた。
二匹にはバレてるな、私がただ遊びたいだけだって……。
そんなこんなで、無事アルトさんからの説教ルートを回避した私は本題に入ることにした。
遊びたい気持ちを押し隠して、まずは魔道具の性能チェックだ。
アルトさんとライくんは足を水につけながら見学するらしい。
ひんやりした水に、再びつま先から入る。
さっき慣らしたから、びっくりするほどの冷たさは感じなかった。
そのまま水に浸かる範囲を増やしていき、膝まで入ったらドボンとプールに浸かる。
「うぅ~!きもちぃ~!!」
まさに、暑い夏にピッタリの水温。
ちょうどいい風が吹いて、爽快感が駆け抜ける。
もちろん、プールの底に足がつくことは無いので縁に掴まりながらふよふよ浮いている。
前世の感覚は抜けていないようで、このまま泳ぐこともできそうだ。
試しに両手を放してみても、難なく浮き続けることはできた。
次に、大きく息を吸って頭まで潜ってみる。
アクアヴェールに水中呼吸の効果がついているとはいえ、いきなりそれを試すのはさすがに少し怖い。
私は、息を止めたまま水中で目だけを開けてみた。
水中で目を開けるのは少し苦手だ。
目に水が触れている感覚や、ぼやける視界が怖く感じられて、すぐに目を閉じてしまうのだ。
しかし、どういうわけか今の私は、水中でもはっきりものを見ることができていた。
まるで、ゴーグルをつけているような感覚で、ここが水中だと一瞬忘れてしまいそうになるくらいだ。
そのまましばらく水中をキョロキョロと見回してみたが、どこまでもクリアな視界に驚くばかりだ。
息が苦しくなってきたところで水面に上がり、ぷはぁ、と大きく息を吸う。
そして、すぐに気がついた。
――髪が、全く濡れていない。
所々に水滴はついているものの、まるで私自身に撥水加工を施したように水が弾かれていくのだ。
残っている水滴も、軽く撫でればポロポロと滑り落ちていく。
水から上がったばかりだと言うのに、肌に張り付かず、サラサラを保っている髪の感覚がなんとも不思議である。
髪や肌が濡れていないのであれば、服はどうだろう、と確認してみることにした。
プールの縁に手をついて飛び上がり、そのまま体を反転させて縁に座る。
やはり、思った通り。
服も、肌や髪と同様に、まるで撥水加工されているようにポロポロと水滴が滑り落ちていった。
思えば、水中でも服が肌に張り付くようなことはなく、水を吸って重くなるなんてこともなかったので、動きを阻害されている感じはしなかった。
なるほど、これが『水中での服や肌の保護』の効果か。
物理防御的な側面もあるのかとも思ったが、それに関しては今のところ感じられない。
水が触れている感覚は確かにあるのだ。
それは、完全に私自身と水が遮断されていないことを意味する。
これでは、物理防御はあまり期待しないほうが良いだろう。
実際になにか攻撃を受けて確認したというわけではないので、正確なところはわからないが、防御があるという前提で動くのも良くないので、これはないと思っておこう。
ふと視線を感じ、振り返ってみると目をまんまるに開いたアルトさんと目があった。
水から上がったばかりだと言うのに、全く濡れていない私を見て驚いているようだ。
私はニッと笑って、もう一度水中に潜る。
そのままソロ―っと泳いでアルトさんの前まで行った。
透明な水の中じゃ、何をしているか丸見えだと思うが、私はそのまま「ばぁっ!」と飛び出す。
分かっているのに驚いたふりをしてくれるアルトさんと笑い合って、近くで私の濡れていない髪を見せつける。
隣で一瞬ビクッとしたライくんはうたた寝していたようだ。何事かとパチパチ瞬きをして、なにもないことを確認すれば、再びまぶたが降りていった。
こんなところで寝ずとも、部屋に戻ればいいのに、と苦笑をこぼす。
「すごいね。全然濡れてない……」
私の髪を一房取って撫でるように確認すれば、アルトさんの手からサラサラとこぼれる髪が再び水面についた。
本当に、何度見ても不思議な光景だ。
これだけでも、十分立派な魔道具として機能している。
しかし、この魔道具はこれだけじゃない。
『水中呼吸』
息継ぎができないという、私の最大の弱点を補ってくれるであろうこの性能。
これこそが、アクアヴェールのメインと言っていいだろう。
これを試すのは、なかなかに心構えが必要だが、やらないわけにはいかない。
心の準備なんて全然できていないままに、私は意を決してもう一度水中に潜った。
相変わらずクリアな視界に視線を彷徨わせながら、私は息を吸うタイミングを探る。
なかなか勇気が出ずに、時間だけがじわじわと過ぎていく中、とうとう私の限界が近づいてきた。
このまま水面に上がってしまえば、この後何度挑戦しても同じ結果になるだろう。
すでにアクアヴェールは魔道具としての優秀さを見せているんだ。
大丈夫、大丈夫。
そう、自分を落ち着かせ、限界を迎えたところで私は勢いよく呼吸した。
――空気が、吸える。息が、できる!
それに気づいたのは、すぐだった。
苦しさを一切感じない。違和感なく、呼吸ができている。
それを感じた瞬間、私は一瞬空を飛んでいるんじゃないかと錯覚した。
クリアな視界で、呼吸ができる。
ふわふわと浮かぶように水中で漂う感覚は、未知のもので、どこまでも飛んでいけそうだと漠然と感じた。
私は、心の思うままに体を動かす。
壁を蹴ってまっすぐに伸びれば、スーッと前に進んでいく。
足で波を立て、腕で水を押し出す。
まだ、息を吸うタイミングに慣れないところはあるが、顔を上げずとも呼吸ができるために、私はいつまでも泳いでいられた。
楽しい。気持ちいい。
心が踊っているのを自覚しながら、まるで踊るように、自在に泳ぎ回る。
まるでここが、自分だけの世界になったように。
と、その世界は唐突に終わりを告げた。
大きな圧力がかかり、私は引き上げられる。
眼の前には、頭の天辺からぐっしょり濡れている、水も滴るいい男となったライくんがいた。
「……生きてる?」
突然何を言い出すんだこのいい男は。
私は頭にはてなを浮かべながら、ライくんを見つめかえす。
「チナちゃん、大丈夫?!」
焦った声に振り返れば、立ち上がってこちらを凝視するアルトさんが。
「全然顔を出さないからびっくりしたよ!」
なるほど。
私が息継ぎもせずいつまでの泳ぎ回っているから流石に心配になったと。
ライくんは焦ったアルトさんの声を聞いて反射的に飛び出してきたとかかな?あくびしてるし……。
何はともあれ、私は無事です。
ご心配をおかけしました。
私が収納から取り出したタオルで、自分にかかってしまった水を拭いながらアルトさんが尋ねる。
私は腕を突き出し、そこにピッタリとはまっているアクアヴェールを二人に見せた。
「これ、魔道具やさんで見つけたの。水中呼吸と水中での服や肌の保護ができる魔道具なんだって。これを試してみたくて」
へぇ……と、二人は興味深げにそれを見つめる。
「それ、別にお風呂でも……」
ライくん、お口にチャックだよ。
確かにそうだけど、これを見た瞬間にプールを思いついちゃったんだから仕方がない。
どうせなら遊びたいじゃないか。
それに……
「水中戦の訓練にも役立つと思うの!!」
魔物は、海にもいる。
私はまだ海を見たことはないけど、これからも旅を続けるなら、いつかは海に行くこともあるだろう。
戦うまではいかなくても、足手まといにならないよう水中での動きを訓練しておくに越したことはない。
なんて、たった今思いついた後付の理由を、さも初めからそのために作りました!とでも言うように説明する。
「チナちゃんっ……!」と、感激のアルトさんと、無言で頭を撫でてくるライくんに申し訳ない気持ちになり、視線をそらすと、ジト―っとした目のミカンとホムラがいた。
二匹にはバレてるな、私がただ遊びたいだけだって……。
そんなこんなで、無事アルトさんからの説教ルートを回避した私は本題に入ることにした。
遊びたい気持ちを押し隠して、まずは魔道具の性能チェックだ。
アルトさんとライくんは足を水につけながら見学するらしい。
ひんやりした水に、再びつま先から入る。
さっき慣らしたから、びっくりするほどの冷たさは感じなかった。
そのまま水に浸かる範囲を増やしていき、膝まで入ったらドボンとプールに浸かる。
「うぅ~!きもちぃ~!!」
まさに、暑い夏にピッタリの水温。
ちょうどいい風が吹いて、爽快感が駆け抜ける。
もちろん、プールの底に足がつくことは無いので縁に掴まりながらふよふよ浮いている。
前世の感覚は抜けていないようで、このまま泳ぐこともできそうだ。
試しに両手を放してみても、難なく浮き続けることはできた。
次に、大きく息を吸って頭まで潜ってみる。
アクアヴェールに水中呼吸の効果がついているとはいえ、いきなりそれを試すのはさすがに少し怖い。
私は、息を止めたまま水中で目だけを開けてみた。
水中で目を開けるのは少し苦手だ。
目に水が触れている感覚や、ぼやける視界が怖く感じられて、すぐに目を閉じてしまうのだ。
しかし、どういうわけか今の私は、水中でもはっきりものを見ることができていた。
まるで、ゴーグルをつけているような感覚で、ここが水中だと一瞬忘れてしまいそうになるくらいだ。
そのまましばらく水中をキョロキョロと見回してみたが、どこまでもクリアな視界に驚くばかりだ。
息が苦しくなってきたところで水面に上がり、ぷはぁ、と大きく息を吸う。
そして、すぐに気がついた。
――髪が、全く濡れていない。
所々に水滴はついているものの、まるで私自身に撥水加工を施したように水が弾かれていくのだ。
残っている水滴も、軽く撫でればポロポロと滑り落ちていく。
水から上がったばかりだと言うのに、肌に張り付かず、サラサラを保っている髪の感覚がなんとも不思議である。
髪や肌が濡れていないのであれば、服はどうだろう、と確認してみることにした。
プールの縁に手をついて飛び上がり、そのまま体を反転させて縁に座る。
やはり、思った通り。
服も、肌や髪と同様に、まるで撥水加工されているようにポロポロと水滴が滑り落ちていった。
思えば、水中でも服が肌に張り付くようなことはなく、水を吸って重くなるなんてこともなかったので、動きを阻害されている感じはしなかった。
なるほど、これが『水中での服や肌の保護』の効果か。
物理防御的な側面もあるのかとも思ったが、それに関しては今のところ感じられない。
水が触れている感覚は確かにあるのだ。
それは、完全に私自身と水が遮断されていないことを意味する。
これでは、物理防御はあまり期待しないほうが良いだろう。
実際になにか攻撃を受けて確認したというわけではないので、正確なところはわからないが、防御があるという前提で動くのも良くないので、これはないと思っておこう。
ふと視線を感じ、振り返ってみると目をまんまるに開いたアルトさんと目があった。
水から上がったばかりだと言うのに、全く濡れていない私を見て驚いているようだ。
私はニッと笑って、もう一度水中に潜る。
そのままソロ―っと泳いでアルトさんの前まで行った。
透明な水の中じゃ、何をしているか丸見えだと思うが、私はそのまま「ばぁっ!」と飛び出す。
分かっているのに驚いたふりをしてくれるアルトさんと笑い合って、近くで私の濡れていない髪を見せつける。
隣で一瞬ビクッとしたライくんはうたた寝していたようだ。何事かとパチパチ瞬きをして、なにもないことを確認すれば、再びまぶたが降りていった。
こんなところで寝ずとも、部屋に戻ればいいのに、と苦笑をこぼす。
「すごいね。全然濡れてない……」
私の髪を一房取って撫でるように確認すれば、アルトさんの手からサラサラとこぼれる髪が再び水面についた。
本当に、何度見ても不思議な光景だ。
これだけでも、十分立派な魔道具として機能している。
しかし、この魔道具はこれだけじゃない。
『水中呼吸』
息継ぎができないという、私の最大の弱点を補ってくれるであろうこの性能。
これこそが、アクアヴェールのメインと言っていいだろう。
これを試すのは、なかなかに心構えが必要だが、やらないわけにはいかない。
心の準備なんて全然できていないままに、私は意を決してもう一度水中に潜った。
相変わらずクリアな視界に視線を彷徨わせながら、私は息を吸うタイミングを探る。
なかなか勇気が出ずに、時間だけがじわじわと過ぎていく中、とうとう私の限界が近づいてきた。
このまま水面に上がってしまえば、この後何度挑戦しても同じ結果になるだろう。
すでにアクアヴェールは魔道具としての優秀さを見せているんだ。
大丈夫、大丈夫。
そう、自分を落ち着かせ、限界を迎えたところで私は勢いよく呼吸した。
――空気が、吸える。息が、できる!
それに気づいたのは、すぐだった。
苦しさを一切感じない。違和感なく、呼吸ができている。
それを感じた瞬間、私は一瞬空を飛んでいるんじゃないかと錯覚した。
クリアな視界で、呼吸ができる。
ふわふわと浮かぶように水中で漂う感覚は、未知のもので、どこまでも飛んでいけそうだと漠然と感じた。
私は、心の思うままに体を動かす。
壁を蹴ってまっすぐに伸びれば、スーッと前に進んでいく。
足で波を立て、腕で水を押し出す。
まだ、息を吸うタイミングに慣れないところはあるが、顔を上げずとも呼吸ができるために、私はいつまでも泳いでいられた。
楽しい。気持ちいい。
心が踊っているのを自覚しながら、まるで踊るように、自在に泳ぎ回る。
まるでここが、自分だけの世界になったように。
と、その世界は唐突に終わりを告げた。
大きな圧力がかかり、私は引き上げられる。
眼の前には、頭の天辺からぐっしょり濡れている、水も滴るいい男となったライくんがいた。
「……生きてる?」
突然何を言い出すんだこのいい男は。
私は頭にはてなを浮かべながら、ライくんを見つめかえす。
「チナちゃん、大丈夫?!」
焦った声に振り返れば、立ち上がってこちらを凝視するアルトさんが。
「全然顔を出さないからびっくりしたよ!」
なるほど。
私が息継ぎもせずいつまでの泳ぎ回っているから流石に心配になったと。
ライくんは焦ったアルトさんの声を聞いて反射的に飛び出してきたとかかな?あくびしてるし……。
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