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来訪者編
78 可愛いお客さん。
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つまらない。
鍛錬と薬草採取を繰り返す、代わり映えのない日々。
目に映るのは、緑の芝生、緑の森、緑の薬草。
いい加減、飽きてきた。
旅をしている間は楽しかった。
毎日が新鮮で、似ていてもどこか違う、毎日変わっていく景色にワクワクして。
大変なことも、疲れることもたくさんあったが、それでもやっぱり、楽しかったという気持ちが一番に来る。
刺激的な時間が過ぎ去ると、残ったのは楽しかった思い出と代わり映えのない日々。
何か、新たな刺激がほしい。
ワクワクして、ドキドキして、キラキラ輝くような時間が……。
裏庭の芝生に寝っ転がって、悠々と飛び回るホムラを見上げながら、そんなことを考えていた。
ぼーっとホムラの姿を目で追っているうちに、私はどうやら眠ってしまっていたらしい。
目を開けば、さっきよりほんの少しだけ上に昇った太陽が、サンサンと私を照らしていた。
太陽の眩しさにクラリとめまいがして、目を眇める。
腹筋の力で上半身を起こせば、丁度、清々しい爽やかな風が吹いた。
起き上がったことで、私のそばで寝ているホムラの姿が目に入る。
寝ている私につられたのか、単に飛びつかれて休憩していたのか。
ぐっすりと眠り込んで、起きる気配の無いホムラに、時間がまったり流れるような心地がした。
と、そこで、見慣れないものがホムラの下にあるのに気がつく。
「……ウォータークッション?」
丸くて、つるつるで、柔らかそうな水色のなにか。
まるでホムラのために作られたベッドのようなフィット感だ。
また何か、ライくんかアルトさんかに作ってもらったのだろうか?
ツンツンと指でつついてみると、それはぷにぷにで、少しひんやりとしていた。
なんだか癖になる感触に、ぷにぷにとつついたり、なでてみたりしていると、突然そのウォータークッションらしきものが、プルンと自ら震えたように感じた。
びっくりして手を離し、じっと観察してみたが、それはピクリともしない。
気の所為だったか?と思い直し再び触れると、再びプルプルと動きはじめるのを感じた。
――ぽふょん
水色の物体は突然、そんな効果音がつきそうな動きを始めた。ふにゃんと潰れてから、一気にもちっと伸び上がり、再び潰れる。
その反動で投げ出されたホムラは、芝生で何度かバウンドして、コロコロと転がっていった。しかしホムラは目を覚ますこと無く、そのままぐっすり寝ている……。
しかし一体、この謎の物体はなんだ?ともう一度よく観察してみる。
もちもちと伸び縮みを繰り返す水色の半透明の物体。
生き物には見えないが、しかしそれは生きているようだ。
そして、さっきはホムラに隠れていたため見えなかったが、その物体の中には、少し色が濃くなった丸い塊がひとつ。
まさかとは思ったが、やっぱりこれは……
「スライムだ!」
旅の中で幾度と出会った、可愛い魔物。
しかし、こんなところにスライムがいるとは思わず、全然気が付かなかった。
この、ルテール町には、スライムはいないはずだった。
なぜなら、この町に隣接する森――私が生まれ落ちた森は、凶暴な魔物の生息地なのだ。
こんな危険な場所では、スライムは生きていけない。戦うすべを持たない、か弱い魔物なのだから。
スライムは、少なくともリッテン町付近までいかないと出会えないはずなのに……。
いつものように持ち上げようと両手を差し出せば、スライムはコロコロとこちらに転がってくる。
今まで出会ったスライムたちは、逃げることさえなかったが、こんなふうに自ら近づいてくることもなかった。
スライムに意思は無いものだと思っていたが、そういうわけでも無いのか……?
珍しいスライムの反応に目を丸くしているうちに、すぐそばまでやってきたスライムが私の手にすり寄ってくる。
すべすべつるつるの肌触りが、私の手に押し付けるようにすり寄ってくる姿に私はもうメロメロだ。
直前まで考えていたことは頭の中から吹き飛んで、私はすっかりスライムを愛でることに夢中になってしまっていた。
「チナちゃーん、ごはんだよー!」
どのくらいの時間そうしていたのか、気づけばもう昼食の時間になっていたようだ。
時間を忘れてしまうほど、私にとってスライムは魅力的なのである。恐ろしい存在だ。
名残惜しく思いながらも、私はスライムをそっと地面に下ろしお別れをする。
スライムとはいえ、魔物を連れ帰ったらさすがに怒られそうだからな。みんなも私のスライム愛は知っているけど、完全に引かれてるし……。
「じゃあ、いくね。よかったらまた、あいにきてね」
最後によしよしとスライムを撫でて、私は昼食を摂りに戻った。
鍛錬と薬草採取を繰り返す、代わり映えのない日々。
目に映るのは、緑の芝生、緑の森、緑の薬草。
いい加減、飽きてきた。
旅をしている間は楽しかった。
毎日が新鮮で、似ていてもどこか違う、毎日変わっていく景色にワクワクして。
大変なことも、疲れることもたくさんあったが、それでもやっぱり、楽しかったという気持ちが一番に来る。
刺激的な時間が過ぎ去ると、残ったのは楽しかった思い出と代わり映えのない日々。
何か、新たな刺激がほしい。
ワクワクして、ドキドキして、キラキラ輝くような時間が……。
裏庭の芝生に寝っ転がって、悠々と飛び回るホムラを見上げながら、そんなことを考えていた。
ぼーっとホムラの姿を目で追っているうちに、私はどうやら眠ってしまっていたらしい。
目を開けば、さっきよりほんの少しだけ上に昇った太陽が、サンサンと私を照らしていた。
太陽の眩しさにクラリとめまいがして、目を眇める。
腹筋の力で上半身を起こせば、丁度、清々しい爽やかな風が吹いた。
起き上がったことで、私のそばで寝ているホムラの姿が目に入る。
寝ている私につられたのか、単に飛びつかれて休憩していたのか。
ぐっすりと眠り込んで、起きる気配の無いホムラに、時間がまったり流れるような心地がした。
と、そこで、見慣れないものがホムラの下にあるのに気がつく。
「……ウォータークッション?」
丸くて、つるつるで、柔らかそうな水色のなにか。
まるでホムラのために作られたベッドのようなフィット感だ。
また何か、ライくんかアルトさんかに作ってもらったのだろうか?
ツンツンと指でつついてみると、それはぷにぷにで、少しひんやりとしていた。
なんだか癖になる感触に、ぷにぷにとつついたり、なでてみたりしていると、突然そのウォータークッションらしきものが、プルンと自ら震えたように感じた。
びっくりして手を離し、じっと観察してみたが、それはピクリともしない。
気の所為だったか?と思い直し再び触れると、再びプルプルと動きはじめるのを感じた。
――ぽふょん
水色の物体は突然、そんな効果音がつきそうな動きを始めた。ふにゃんと潰れてから、一気にもちっと伸び上がり、再び潰れる。
その反動で投げ出されたホムラは、芝生で何度かバウンドして、コロコロと転がっていった。しかしホムラは目を覚ますこと無く、そのままぐっすり寝ている……。
しかし一体、この謎の物体はなんだ?ともう一度よく観察してみる。
もちもちと伸び縮みを繰り返す水色の半透明の物体。
生き物には見えないが、しかしそれは生きているようだ。
そして、さっきはホムラに隠れていたため見えなかったが、その物体の中には、少し色が濃くなった丸い塊がひとつ。
まさかとは思ったが、やっぱりこれは……
「スライムだ!」
旅の中で幾度と出会った、可愛い魔物。
しかし、こんなところにスライムがいるとは思わず、全然気が付かなかった。
この、ルテール町には、スライムはいないはずだった。
なぜなら、この町に隣接する森――私が生まれ落ちた森は、凶暴な魔物の生息地なのだ。
こんな危険な場所では、スライムは生きていけない。戦うすべを持たない、か弱い魔物なのだから。
スライムは、少なくともリッテン町付近までいかないと出会えないはずなのに……。
いつものように持ち上げようと両手を差し出せば、スライムはコロコロとこちらに転がってくる。
今まで出会ったスライムたちは、逃げることさえなかったが、こんなふうに自ら近づいてくることもなかった。
スライムに意思は無いものだと思っていたが、そういうわけでも無いのか……?
珍しいスライムの反応に目を丸くしているうちに、すぐそばまでやってきたスライムが私の手にすり寄ってくる。
すべすべつるつるの肌触りが、私の手に押し付けるようにすり寄ってくる姿に私はもうメロメロだ。
直前まで考えていたことは頭の中から吹き飛んで、私はすっかりスライムを愛でることに夢中になってしまっていた。
「チナちゃーん、ごはんだよー!」
どのくらいの時間そうしていたのか、気づけばもう昼食の時間になっていたようだ。
時間を忘れてしまうほど、私にとってスライムは魅力的なのである。恐ろしい存在だ。
名残惜しく思いながらも、私はスライムをそっと地面に下ろしお別れをする。
スライムとはいえ、魔物を連れ帰ったらさすがに怒られそうだからな。みんなも私のスライム愛は知っているけど、完全に引かれてるし……。
「じゃあ、いくね。よかったらまた、あいにきてね」
最後によしよしとスライムを撫でて、私は昼食を摂りに戻った。
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