上 下
25 / 28
来訪者編

77 ホムラの一日。後編

しおりを挟む
 午後のホムラは、私と共にいることが多い。

 何をするかは日によって様々だが、ここ最近は冒険者活動をすることが多い、
 とはいっても、私がするのは薬草採取くらいだ。家の裏の森に入り、常設依頼の薬草を採取する。
 最近は少し行動範囲を広げて、新たな薬草の群生地を探すことも多い。あまり同じ場所で採取しすぎると増えなくなってしまうかもしれないからだ。生態系を崩さないよう、気を付けて採取を行っている。
 もちろん、同じものばかりではなく、それ以外の薬草や山菜を採取することもある。山菜はアルトさんに渡せば美味しい夕食にしてくれるのだ。アルトさんは本当に料理が上手い。

 ホムラはそんな時、私の上空をピュンピュン飛び回ったり、どこに何があったか教えてくれることもある。
 意外なことにホムラは、一度教えたことはすぐに覚えてしまうのだ。
 ホムラが初めて薬草採取についてきた時、気まぐれにいろいろ教えながら採取していたのだが、ホムラはその一度でほとんどの薬草を覚えてしまったのだ。
 興味ないだろうし、すぐに忘れるだろうなと思っていたのに、ホムラはそれから薬草を見つければ教えてくれるようになった。
 ますます仕事がはかどるばかり。どんどんランクアップへの道が近づいている。
 ホムラが手伝ってくれるのは嬉しいが、ランクアップはもっとのんびりでいいのに……。

 冒険者活動をしない日は、のんびりぐーたら過ごしたり、薬草を納品しにギルドへ行ったりしたりすることもある。

 裏庭にごろんと寝転がって空を見上げると、気持ちよさそうに空を飛ぶホムラが目に入るのだ。
 ホムラは本当に空を飛ぶのが好きらしい。暇さえあれば飛んでいるように思う。
 この前は、今の小さな身体でどこまで早く飛べるか研究をしているようだった。

 そんなふうにフリーダムな時間を過ごした後、私はアルトさんの夕食作りを手伝いに行く。
 その間もホムラは、どこか色々な場所を飛び回っている。
 そしてまた、夕食の時間になればぴったりに帰ってくるのだ。外に出ていったカイルさんを連れて帰って来ることもある。
 ホムラの体内時計、侮れない。

 夕食後、ホムラはお風呂には入らない。その代わり、時々水浴びをしている。
 これまたライくんが、ホムラの水浴び用の器を作ってくれたのだ。
 ミニチュアのお風呂みたいですごく可愛い。そんな、専用のお風呂で水浴び中のホムラは、少々メルヘンな光景となっている。

 寝るまでの時間はカイルさんの頭の上で過ごしている。
 大人たちは晩酌をすることもあるようだが、ホムラもそれに付き合っているらしいのだ。
 なんとホムラ、お酒が飲めるらしい。酔うことは無いが、味が気に入っているため、度々カイルさんに強請っているそうだ。

 私はみんなよりも早く寝てしまう。まだ子供なので。
 ホムラは適当な時間に私の部屋に入り込み、枕元に置いてある小さなカゴの中で寝ているらしい。
 私よりも遅く寝て、私よりも早く起きているため、私にはホムラと一緒に寝ている実感は無いのだが、ミカンがそう言っていたのでそうなのだろう。
 ちなみにミカンは、いつも私が抱きしめて一緒に寝ている。もふもふで暖かくて、ものすごく寝心地が良い。

 そんな感じで、ホムラの一日は終わりだ。

 思い返してみれば、ホムラは本当に1日中飛び回っているのだなと感心する。
 普通の鳥も、このくらい飛んでいるものなのだろうか?
 少し目を離せば、すぐにどこかへ行ってしまうようなホムラだが、毎食時間になればしっかり帰って来るあたり、ここでの生活を本当に気に入ってもらえているのだろう。ホムラにとっても居心地のいい場所となっているようで嬉しく思う。
 
 ホムラは、以前までの人生では、常に世界中を飛び回っていたそうだが、今回の人生では私達と共に過ごすことに決めてくれたようだ。たまにはこんなふうにのんびり生きるのも悪くない、とのことだ。

 これから、長い時をホムラと共に過ごすことになるのだろう。
 まだ出会って日が浅いホムラだが、彼が何者にも縛られることのない、自由な存在なのだということは分かっているつもりだ。
 ホムラがこの生活に飽きて出ていってしまわないように、これからたくさんの楽しい経験をホムラと共にしていきたいと思う。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。