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ひ孫達のおしゃべり
曽祖母との接点
しおりを挟む※『ウサギとカメ』の番外編です。
私ー片倉 小春は驚いている。
何故なら私と同年代の目の前に座る青年が、私のひいお祖母ちゃんの名前を呟いたからだ。
懐かしそうに、慈しむように。
…愛情は読み取れなかったが。
話は遡って2時間程前、私は楓と野球選手の加藤 皐月とのカフェデートに付き合わされていた。
楓は鈍感だから気付いていないようだが、私から見たら皐月さんから楓の恋心は一目瞭然だ。
楓の方はまだ恋愛感情は無さそうだが、悪くは思っていないといった所か。
私は2人がパフェを食べながら微笑ましく会話しているのを、楓から借りていたノートを読みながら壁に徹していた。
すると楓の携帯に叔母さんから連絡があったようで、楓が店の外に出る。
その合間に私が先程読んでいたノートに興味を示した皐月さんが読んでー今だ。
皐月さんは、ひいお祖母ちゃんを知っているのか?
私はふとノートの中身ーひいお祖母ちゃんの異世界召喚冒険譚を思い出す。
加藤 皐月という名前を思い出す!
「…ひいお祖母ちゃんの後の勇者で魔王か?」
「…小春、どうしたの?」
中座をしていた楓は事情が分かっていないが、皐月さんには通じたようだ。
顔面蒼白になっている。
皐月さんのただならない雰囲気に楓が手元のノートに気が付いた。
「…このノート…」
「…そうです、信じてもらえないでしょうけど俺も椿さんと同じ異世界に召喚されたんです。」
衝撃の真実だった。
『加藤 皐月』という名前は少し珍しいなと思ったぐらいで、目の前の青年と同一人物とはまさか思わない。
「えぇぇぇっっっ!!本当ですかっ!?」
空気と場所を読まずに楓が叫ぶ。
いくら個室とはいえカフェで、そんな大声を出せば周りに迷惑だ。
その事に叫んだ後に気付いた楓は両手で自分の口を抑えた。
その様子を皐月さんは優しく苦笑いしながら見守っている。
「驚かせちゃって、すいません。
でも本当です、この物語は少しも脚色せずにありのまま書かれてますね。
懐かしいな、椿さんらしい…」
「そんなにひいお祖母ちゃんと交流があったんですかっ?」
楓が目をキラキラさせながら皐月さんに尋ねた。
無理もない。
楓は私と違ってひいお祖母ちゃんの物語を、本当にあった事だと信じていたから。
「交流は俺が勇者として対峙した時と、魔王になった後だけです。
でも魔王になってから椿さんの記憶を読み取りましたし、全てが終わった後に直接話もしたんですよ。
本当にここに書かれてる通りの人だったんでビックリしました。」
「あのっ、もっと色々とお話を聞かせてください!!」
楓は軽くトランス状態だ。
距離感がバグって皐月さんに、かなり前のめりになっている。
彼も彼で好きな人に近付かれて、顔が真っ赤になって軽くパニック状態だ。
「こーーら、楓。近すぎるぞ!
皐月さんが困ってる。」
「あっ、すいません!
あの、良かったらひいお祖母ちゃんの話を聞かせてくれませんか?」
楓が正気に戻ったおかげで皐月さんも落ち着きを取り戻した。
「俺で良ければぜひ!」
そう言って彼は少年のように微笑んだ。
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