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椿の魔王時代
ポークの行く末、後日談
しおりを挟む私はメイリン・カーネアル。
大富豪トーテム・カーネアルと結婚して間もなく1年になる。
夫のトーテムはお金持ちにありがちな傲慢さや嫌味さは全くなく、誰にでも穏やかでとても優しい。
私の大切な旦那様だ。
ー私は今の今まで自宅の屋敷の書庫で調べ物をしていた。
「ブキッ!」
突然、書庫で聴こえるはずのない豚の鳴き声が聴こえた。
自分の足元を恐る恐る見ると
「ブキッ、ブキッ!!」
…まごう事なきマイクロ豚が、そこにいる。
書庫は大切な本が傷まないように窓がない部屋だ。
扉も私が入ってきた端に1つだけで閉め切ってある。
…一体どこから入ってきたのだろう?
「フフッ、でもよく見たらこの豚さん可愛いわね!」
豚はこちらの言葉を理解したかのように、嬉しそうにブキブキ鳴いている。
見た目はまだまだ赤ちゃんの豚を抱っこした。
…不思議なことに、この豚を初めて見た気がしないのだ。
私は抱っこしたまま夫のトーテムがいる書斎に向かった。
コンコンコンとノックすると、どうぞとトーテムの返事がきた。
「失礼します。お仕事中にすみません。」
「ブキブキッ。」
明らかにトーテムは私の腕の中の存在に戸惑っている。
「メイリン、私の目がおかしくなってなければマイクロ豚を抱っこしてるように見えるんだけど?」
「トーテム、見たままで合ってます。
何故か書庫にいたんですよ。
…あの、この子をペットとして飼ってもいいですか?」
我ながら驚いたが、するりとこの言葉が出た。
「えっ、ペットとして飼うのかい!?」
「ならば非常食として飼いますか?」
私の言葉を聞いてトーテムはブフッと噴き出す。
「ハッハッハッ、それならこの子が寿命を全うできるように仕事を頑張らなきゃいけないな!
…メイリン、マイクロ豚の飼い方は分かるのかい?」
「いえ、ですからもう一度書庫に戻って調べてみますね。
トーテム、ありがとうございます!」
「ブキブキッ」
豚も一緒にお礼を言っているようだ。
「それなら、この子の名前を決めようか?
豚だからブーちゃんとか…」
「…ポーちゃん。」
「ポーちゃん?」
「非常食だから『ポーク』のポーちゃん。」
私の提案にトーテムは腹を抱えて爆笑している。
ヒーヒー笑って目元の涙を拭いながら
「いいね、ポーちゃんで決定しよう!」
こうして我が家にペットのポーちゃんが加わった。
ー不思議な事は続くもので、ポーちゃんと暮らすようになってから元々順調だった夫の仕事が更に上向きになった。
「ポーちゃんは我が家の守り神だな!」
トーテムはそう言って私と同じくらい、いや私以上にポーちゃんを寿命がくるまで可愛がった。
☆☆☆☆☆
「良かった、ポークが寿命を全うできて。
メイちゃんに感謝だな。」
私ー真田 椿は安堵の溜め息を漏らした。
「ポークって椿の非常食だった、あのペットの事?」
私の言葉を隣で聞いていたポンコツ神ルールーが尋ねる。
「…やっぱり、ルールーは知ってたのか。」
「曲がりなりにも創造神だからね。」
「…私が死んだ後、ポークが困らないように手心を加えただろ?」
ギクっとしたようにルールーは私を見た。
「…何のこと?」
「いや、上手くいきすぎだなって。
メイちゃんが大富豪の妻に転生したこと。
その大富豪の性格がいいこと。
更にポークがペットになった後、仕事が上向きになったこと。」
ルールーは降参の溜め息を吐きながら
「…干渉にならない程度に少しだけ手を加えただけだよ。
椿たちの魔王城での500年の生活は知ってたから、ポークにも幸せになって欲しかったんだ。」
「ありがとう、ルールー。」
私のお礼にルールーは
「別に椿の為じゃなくポークの為だからね!」
顔を赤くしながら、その場を立ち去った。
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