秘密の物語 番外編集

水田 みる

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ティータイム

3杯目

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 ツボーネ様が遊びに来た日から3日。

椿の様子が明らかにおかしい。

普段はしないような些細なミスを仕事でするし、今日に至っては


「…何か焦げ臭い?」

「…あっ、しまった!魚を焼いてたんだった!!」


…この部屋が火事になる事はないが、魚は炭化して食べられなくなっていた。


「…ゴメン、ルールー。」


こんなにしおらしい椿は200年間の暮らしでも、今の暮らしでも初めてだ。


「…何があったのさ、椿?」


流石に心配になる。

椿は僕に話すかしばらく悩んで、ようやく重い口を開けた。



ーー彼女が言うには、彼女のひ孫が事故に遭い意識不明の重体らしい。

あちらの世界の椿が条件付きで手助けして、何とかこの世に繋ぎ止めているそうな。


僕は神だから家族なんていないけれど、大切な人がそんな状態だったら居ても立っても居られない気持ちは分かる。


「…椿に上司として命令。

しばらくの間ツボーネ様の管轄する世界に出張に行ってきて。」

「ルールー、それは公私混同だろう!?」


彼女に僕の意図が伝わったようだ。


「今の椿じゃ使い物にならないから言ってんの。

ほら、早く行った行った!」


僕は手でシッシッとする。


「…ありがとう、ルールー!

必ず戻ってくるから、行ってきます!」


そうして椿はツボーネ様の世界に旅立った。


ー僕はまたしばらくの間、一人暮らしに戻った。

戻ったはずなのに…


「…ツボーネ様。」


ツボーネ様が毎日、僕の元に来ては1時間程過ごすようになった。


「ん、なぁにルールー?」

「何じゃありませんよ、毎日毎日。」


僕はあからさまにハァと溜め息を吐く。


「いや、椿ちゃんがいなくてルールーが寂しがってないかなって。」

「椿の方が大変なのに落ち込んでられませんよ。

ひ孫の容態はどうなんですか?」


ツボーネ様は真面目な顔になって


「椿ちゃんもできる限りはしてるんだけど、なかなか上手くいかないんだよ。」


椿があちらに行って今日で1週間だ。

椿のお葬式で一度会った、ひ孫を思い出す。

雰囲気は椿そっくりの彼女の無事を祈った。

その瞬間だった。



「ルールー、ただいまーっ!

あっ、ツボーネ様もこちらでしたか!

その節はありがとうございました、お陰様でひ孫は意識を取り戻しました。

本当にありがとうございます!!」


椿は僕達に深くお辞儀をして明るく礼を告げる。


「…そっか、良かっ…」

「良かったねー、椿ちゃん!!」


僕の言葉にツボーネ様は被せて、彼女に抱きついた。


「本当にお世話になりました!

…ルールーも快く送り出してくれて、ありがとな!」


久しぶりの椿の心からの笑顔だ。


「ちょうど良かった、お土産があるんです。

ツボーネ様もぜひご一緒に!」


そう言って彼女は僕達の大好きな抹茶スイーツを山程テーブルにセットした。


「みんなでティータイムにしましょう!」



ーこうして、10日振りに和やかで楽しいティータイムが始まった。








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