秘密の物語 番外編集

水田 みる

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ティータイム

2杯目

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 今日は『視察』という名目で僕の先輩兼上司のツボーネ様が、ここに遊びにくる予定だ。

僕がツボーネ様の世界に行くと言ったのに


「貴方たち二人の暮らしぶりが見たいから、私が行くよ。

それに、私も椿ちゃんとガールズトークがしたいの。」


…ガールズって年齢としかよ。


「…何か言った、ルールー?」

「…いえ、何も。」


心を読まれた…こっわぁ。


ーという流れで、ここに来る事になったのだ。


椿は魔法で部屋を綺麗にして、ティータイムの準備をしている。


「ルールー、掃除はこんなもんでいいかな?」


いつも以上にピカピカになった部屋を眺めて彼女は確認してきた。


「いいんじゃない。

あの人相手だから適当で…」


いいよと言ったのと

「ハァイ!」

と、ツボーネ様が現れたのは同時だった。

…聞こえてないよな?


「適当にお招きありがとう!」


…聞こえていたようだ。


「ツボーネ様、お久しぶりです!

ご無沙汰してます!」


椿がすかさず話を逸らす。

椿を僕の元に送って以来なので1年ぶりの再会だ。


「椿ちゃん!久しぶりね!

元気そうで安心したよ!」


僕たち神と天使に病気もへったくれもないだろうに。

思った瞬間、ツボーネ様がグリンと首だけ僕に向けて目が笑ってない笑顔で


「ルールー、冷たい抹茶オーレが飲みたいなぁ!

とびっきり甘くしてね!」


椿でなく僕に命じた。




☆☆☆☆☆


「ルールーに内緒で私にお話ですか?」


私の目の前に座るツボーネ様に問う。


「…椿ちゃんは察しが良くて助かるなぁ。

本当だったら私の部下に欲しかったぐらいだよ!

ルールーの部下にしとくのは勿体ないよ。」


似た者上司の二人に、思わず笑ってしまった。


「ツボーネ様は本当にルールーが可愛くて仕方ないんですね!

私をこちらに送っちゃうぐらいには。」

「…馬鹿な子ほど可愛いって言うじゃない。

口では素直な事は言えないクセに、落ち込みようは人一倍だったからね。

椿ちゃんがここを去ってからのルールーはね、仕事こそ何とかこなしてたけどほとんど笑ってなかったんだよ。」


…知らなかった、そこまでルールーが寂しい思いをしていたとは。


「ツボーネ様の親心でしたか…。

私も子供3人を育てたんで何となく分かります。

子供や孫たちには、いくつになっても笑顔でいてほしいから…。」


ツボーネ様は優しく微笑む。


「そうそう、時々『業務報告』の名目でルールーがこっちに来てた時、私の目を盗んで下界の椿ちゃん達の生活を眺めてたんだよ。

…そのルールーを見た時『ほっといたらヤバイ奴』だと思ったよ。」


…ルールーがどこぞの変態王子化しなくて本当に良かった。


「もしかして私が死んだ時にルールーに報せたのは…」

「うん、ヤバイ奴化してるルールーに一区切りはさせたかったんだよ。」


ずっと一人でいたルールーに期間限定とはいえ、私が同居人になった事で誰かと暮らす楽しみを知ったんだろう。

そしてまた永遠に一人で生きていくには、ずっと一人でいた時よりキツいものだと私にも想像できる。


「椿ちゃん、出来損ないの部下だけど、これからもあの子をよろしくね。」


そう頭を下げたツボーネ様は母親そのものだった。


「はい、私なりに精一杯ルールーを支えます。」


私も頭を下げた所でタイミング悪く


「…何やってんの、二人とも?」


話の主役が抹茶オーレを3人分、持って立っていた。 


「「何でもないっ!!」」


私とツボーネ様でハモって、怪しむルールーを誤魔化しながら3人のティータイムは始まった。













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