秘密の物語 番外編集

水田 みる

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椿の魔王時代

豚の生姜焼き

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椿つばきー、豚の生姜焼きできたぞー。」


魔王時代を思い出していた私は、夫である柊也しゅうやの声で現実に戻った。

食事は基本は交代で作っている。

今日の夕飯担当は柊也だった。


「ありがと、食べる準備するよ。」


ランチョンマットとお箸を二人分準備する。

付け合わせのキャベツも一緒に盛り付けて、柊也が生姜焼きを運んでくれた。

私が大好物な事を知っているので、よく作ってくれる出来た旦那様だ。

ご飯・お味噌汁・副菜のポテトサラダまである。

二人で席について、いただきますをする。

豚肉料理の日はポークと過ごした日々を思い出してしまうので、ついいつもより神妙に手を合わせてしまう。

柊也が作ってくれた出来立ての豚の生姜焼きを口に入れた。


「んーーっ、美味しいっ!!

ありがとう、柊也!」


お世辞抜きに私が作るより美味しい。

柊也も食べながらフフッと笑う。


「椿は本当に美味そうに食うよな、特に豚肉料理。」


実はポークと過ごした500年間、ポークがいる横で豚肉料理を食べるのは気が引けたので、豚肉断ちをしていたのだ。

だからルールーと暮らして初めてした事は、豚肉のフルコースパーティー(二人だけだけど)だった。

パーティーが終わる頃にルールーは


「向こう100年は豚肉は食べたくない!」


なんて贅沢なことを言っていたが。


「…500年、豚肉抜きの生活をしてたら私の気持ちが分かるぞ。」

「500年…椿が魔王だった時の話か?」


柊也には付き合いだして1年経った頃に、私の異世界召喚の話はしている。

絶対に信じないか爆笑されるかのどちらかと思っていたのに


「そうか…苦労したな…

俺の元に帰ってきてくれて、ありがとう。」


あっさりと信じてくれたのだ。


「そう、マイクロ豚をペットにしてたから食べたくても食べられなかったんだよ!」


柊也がブフッと吹き出して笑う。

私は軽く小突いて


「食べたい物を食べたい時に食べられるって、すっごく幸せな事なんだぞ!」


そう言って生姜焼きの最後の一切れを口に入れた。











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