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パールの章
助けて
しおりを挟む眠れぬ夜を一晩過ごし、パールはノロノロとベッドから体を起こした。
何もいい案が出ず、昨夜から何も食べていないのに食欲は湧かない。
ーイズンさん。
昨夜、何度も何度も彼女に助けを求めようかと考えた。
だがその度に、相手は皇弟で迂闊に巻き込めないと結論を出したのだ。
でも、それでもといつの間にか握りしめていた通信石を額につける。
「…助けて、お願い…」
パールの祈りが口をついて出た。
その瞬間、通信石が金色に淡く光り出す。
『ーもしもし、ハルさんっすか?
何か困り事でオレ達が力になれるっすか?』
パールの声に通信石が反応してイズンに繋がった。
声だけでも分かる、パールが助けを求めている彼女だ。
「…イズンさん、ハルです!
お願いです、どうか私を助けてくれませんか?」
一度イズンに繋がってしまったら、パールはもう願いを止められなかった。
『了解っす!ハルさんは今どこに?』
詳しく話してもないのに、あっさりと了承するイズンにパールは安堵の涙が溢れる。
「…ズズッ、アッカンコ街の宿屋です…」
『…アッカンコ街…おーい、ディズー!
アッカンコ街って行った事あったかー?
ーふんふん、ホッカイ領の…あぁ、あの街か!
ーハルさん、祝福者が街の中に入ったらヤバそうっすか?』
イズンは近くにいるだろう相棒のディズに確認しながら、ハルと通話する。
パールは涙を拭った。
「…帝都の騎士がいるんです。
イズンさんが見つかったら職質されると思います。」
『…成る程、それなら最初にディズだけ寄越すっす。
『コン、ココン』と3回ノックするんで、それが合図っす。
部屋の中に入ったら、すぐにディズだけ出て街の外にいるオレと合流するんで。
それから部屋の中まで転移魔法で行くんで、少し待っててくれっす!』
パールの返事も待たずにブツっと通信が切れた。
イズンが言っていた事の半分も理解できなかったが、きっと大丈夫と不思議と自信が湧く。
パールがフフッと小さく笑った瞬間。
ーコン、ココン。コン、ココン。コン、ココン。
小さく扉をノックする音が聞こえた。
先程の通信から10分程度しか経っていない。
いくら何でも早すぎるとパールは警戒した。
「…どなた?」
扉の向こうに返事する。
「ーディズです、お久しぶりですね。」
声の主は聞き覚えのある少年の声だった。
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