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パールの章
贈り物
しおりを挟む気絶している少女を寝室のベッドに寝かせて、パールと少年は一息つく。
自己紹介の時に少年ーディズは少女ーイズンを『相棒』と表現していたので、2人は冒険者であるらしいとパールは予想した。
しばらくしてイズンの元気な声が聞こえてきたので、パールとディズは様子を見に行った。
パールは同年代の男性と二人きりというのが初めてだったので、正直間が持たず困っていたので助かったと安堵する。
目が覚めたイズンに太陽のような笑顔で礼を丁寧にされた。
彼女の明るい笑顔にパールも口元が緩む。
イズンが完全復活した事を確認できたので、パールは村長のホッキに礼と別れを告げに行こうとこの場を立ち去ろうとした。
するとイズンがパールを引き止める。
「オレの命の恩人にお礼っす!
これは離れていても石に呼びかけたら、オレに繋がる『通信石』っすよ。
ハルさんが困った時これでオレを呼んでくれっす!」
イズンの表情と声音でこの言葉は社交辞令でなく、本音だとパールは察する。
イズンは、もしかしたら自分が祝福者である事を分かっていての言葉ではないかともパールは思った。
それにここ、ジュエリーラ帝国では魔道具は高級品である。
「…ありがとうございます、イズンさん。」
パールは礼を言って金色の通信石を大切にしまい、ホッキの家に向かった。
ーホッキに先程のドラゴン退治の件と、回復魔法を使った事。
そしてドサンコ村が騒がしくなる前に今から村を去る事を、世話になった礼と一緒に告げる。
最後にパールはホッキに、自分が今まで調合してきた薬のレシピをノートに写した物を渡した。
ー素性の知れない怪しい者を1年間、匿ってくれたパールに出来る礼品だ。
ホッキはホッキで1年間パールが薬師として働いた事に対する礼として、ブラックパールのピアスを差し出した。
高価すぎる礼に受け取れないと、パールは断るが
「ハルはパールの祝福者なんじゃろ?
この先のお主の人生に加護があるように、身に付けておけ。
儂が持ってても宝の持ち腐れじゃ!
…それにピアスなら着けてても髪で隠せば目立たんじゃろ。」
ホッキの精一杯の思いやりに嬉し涙を堪えて受け取り、ドサンコ村を去った。
そして現在潜伏しているアッカンコ街に移動したのだった。
☆☆☆☆☆
回想を終えたパールはどうすればいいか考える。
街中を徘徊している騎士は追っ手であるのか確認したい。
だがいい手段が思い付かない。
下手に調べて違った時、藪蛇になりかねないからだ。
手詰まりの状況にパールはベッドの枕に顔を埋めた。
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