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パールの章
ドサンコ村
しおりを挟むパールは震える手で急いでカーテンを閉め、ズルズルと床に座り込んだ。
胸の動悸が治まる気配がないので、彼女は数回大きく深呼吸した。
深呼吸でだいぶ動悸が落ち着いたので、ヨロヨロと立ち上がり水を飲む。
パールは気分も落ち着いたので、ドサンコ村での出来事を思い出した。
☆☆☆☆☆
3年程前からパールは偽名の『ハル』と名乗りながら、薬師としてホッカイ領の街や村を渡り歩いていた。
パールが旅で気付いた事は、少し警戒心のある村の方が逃亡に適しているという事実だ。
彼女自身も最初は警戒されるだろうが一旦村人と打ち解けられれば、万が一追っ手が来たとしても村人が警戒しているのですぐに分かるのだ。
ーそういう意味では、1年程前から最近まで世話になっていたドサンコ村は最適だった。
最初の内こそ村長のホッキに警戒されていた。
偶然だが彼女の娘婿を回復魔法で治療した後は、パールの事情まで汲み取って匿ってもらったのだ。
潜伏場所はパールと同じ祝福者で、英雄だった夫婦が生前住んでいた家。
何かあっても英雄の家を家探しされる事はないだろうという配慮だった。
家の中は定期的に村人が掃除をしているらしく、綺麗でこざっぱりとしている。
ふと寝室らしき部屋に入ると、鏡台が視界に入った。
正確に言うと鏡台の上に飾ってある写真だ。
写真にはターコイズの祝福を受けた若い男性と、金髪の若く美しい女性が仲良く寄り添っている2人が写っている。
「…いいなぁ。」
パールは思わず呟いていた。
自分の両親もこの2人みたいに、お互いを想い合っていれば逃亡生活なんてせずに済んだのに。
パールは何となく寝室は使いづらく、リビングのソファーで睡眠を取ることにした。
タダで使わせて貰うのも気が引けたので、パールは3日に1回英雄夫婦のお墓に彼らが好きだった黄色い花を供えていた。
ー北の果ての村まで追ってはなく、薬師として村人に調剤しながら平和に1年が過ぎたある日。
ドサンコ村に英雄と同じターコイズブルーの髪と瞳の少女が訪れた。
一目で『祝福者』と分かる。
パールは幼い頃、自分が祝福者と分からないのは不便だと思っていた。
だが追われている現在は、目を隠せば祝福者だとはバレなくて良かったと思っている。
それ程にターコイズの祝福者は、パールにとって眩しかった。
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