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パールの章
薬師・パール
しおりを挟むジュエリーラ帝国の北にある領地、ホッカイ領。
そのホッカイ領の北東に位置する『アッカンコ街』に、女神ジュエルの祝福を受けた女性がいた。
ーこれは、その女性の物語。
『パール』ー6月の誕生石。
石言葉は『健康・長寿・富・純潔』。
昔、薬として使われた事から健康や長寿といった言葉が使われている。
また、パールには精神を安定させる力を持つと言われている。
パールの祝福を受け、名前もそのままパールという女性はアッカンコ街で薬師として3ヶ月前から滞在している。
ー『ハル』という偽名を使って。
パールは客の老婆に腰痛に効く薬を渡して、今日は店仕舞いにした。
街に来てから滞在している比較的安い宿に戻りながら、お金を春までに稼いでホッカイ領から出る算段を付ける。
現在は11月で北の春は、まだまだ先だ。
部屋に戻りパールは疲れた体をベッドにダイブさせた。
パールはうつらうつらしながら、自分はいつまでコソコソと隠れ暮らさなければならないのかと溜め息を吐く。
明るい未来が見えないまま、彼女は眠りに落ちた。
☆☆☆☆☆
ーこれは夢だ。
パールは夢を見ながら、夢である事を自覚していた。
だが夢は自覚しながらも、彼女に続きを見せ続ける。
裕福ではなかったがパールが幸せだった頃の記憶をー
パールの生まれは元々北方でなく、西方のキンキッキ領である。
キンキッキ領の真ん中『ラナラナ街』で、薬師として働く母親と生まれてからずっと2人で暮らしていた。
パールは母親から父親はいないと、聞かされていたのだ。
薬師の母親を手伝いながら母娘2人は街の住人達に薬を売って、懸命に生活していた。
パールは物心つく前から『女神ジュエルの祝福者』と周りから大切にされていたので、裕福ではないが暮らしには困らずに済んだ。
『黒髪黒眼』はパールの祝福者である。
黒髪は帝国内に祝福者でなくともいるが、黒眼は祝福者のみ持ち合わせている。
それにしてもと、幼いパールは思う。
パールの宝石と言えば、普通なら白色や薄い桃色を想像する人は多い。
それなのにパールの祝福者はブラックパールの黒色なのだ。
他の祝福者と比べて分かりにくいのは不便だなぁと、彼女は思っていた。
ーパールが16才になる年に母親を殺される日が来るまでは。
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