誕生石物語

水田 みる

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ターコイズの章

プロポーズ

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 イズンはスタスタと女神ジュエルの石像を祭る祭壇の前まで歩く。

ディズも並んで歩いた。

イズンは祭壇の前で立ち止まり、左腕に着けていたタークの形見のブレスレットを外す。

ディズは何となくそれを目で追っていた。

ブレスレットを右手に持ち、イズンは徐に口を開く。


「ーディズ、世界で一番ディズが大切で大好きだ。

オレと結婚してほしい。

プロポーズを受けてくれるなら、ブレスレットを受け取ってくれ。」


イズンからの思いがけないプロポーズに、ディズは思考停止した。

それから、恋人でもないのにいきなりプロポーズ!?

イズンは恋愛感情で僕を好きだったの!?

何でドゲンカ村ここで!?

と、一瞬で頭がフル回転しながら色んな疑問が出てきてー


あぁ、イズンはプロポーズを断ったら冒険者のペアを解消して一人で旅立つ。

その為に僕の故郷ドゲンカ村に転移したんだ。


すとんと納得した。

それにディズは初めてイズンに出逢ってから、心は決まっている。


「僕で良ければ喜んで。

あまりにも突然すぎてビックリしたし、プロポーズは僕からしたかったな。」


ディズはイズンの少し震えた手から、ブレスレットを優しく受け取った。

イズンは耳まで真っ赤な顔でディズを見つめる。


「…オレのこと好きなのか?」


今までのディズの好意はイズンに伝わっていなかったようだ。


「好きだよ。

ドラゴン退治の時にイズンが死んでたら、後を追ってたぐらいには。」

「…全然気付かなかった、てか死ぬなよな。」

「僕もイズンにこれをー」


ディズは肩から斜めに提げている自分の手荷物から、紺色の小さな箱を取り出した。

イズンがそっと受け取り中を見ると、銀色に光るシンプルな指輪が目に入る。

真ん中には橙色の小さな宝石があしらっていた。


ーディズの瞳の色と同じ夜明けの色だ。


ディズも嬉しそうに微笑み、イズンの左手をそっと取った。

そして恋人や妻が嵌める薬指に指輪を通す。

サイズはピッタリだ。


「ー!いつの間に指輪…って何でオレの指のサイズ知ってるんだよっ!?」


ディズも照れた顔で


「企業秘密!」


言ってのけて正面の女神の石像を見上げた。


「僕達が永遠の愛を誓い合うにはピッタリな場所だね。

ー僕、ディズは妻となるイズンを永遠に愛する事を誓います。」


イズンは突然の誓いの言葉に驚きながらも、先程渡したブレスレットをディズの左腕に嵌めて


「…オレ、イズンも夫となるディズを永遠に愛する事を誓うっす…」


ディズと女神に誓った。

ディズは見たことのない蕩ける様な笑顔で、イズンの顔を右手で支える。

イズンも何をされるか分かっていたので、ぎゅっと目を閉じた。

2人の唇が優しく触れ合い誓いのキスを終える。


「…これからは僕の奥さんとしても、よろしくね!」

「…あぁ、よろしくな、オレの旦那さま!」


イズンとディズは手を繋ぎ真っ赤な顔で、幸せそうに笑い合ったのだった。





《ターコイズの章・終》










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