誕生石物語

水田 みる

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ターコイズの章

新たなる旅立ち

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 ハルは首を大きく横に振って


「そんなっ、受け取れません!」


受け取りを拒否する。

しかしホッキも譲らなかった。


「ハルはパールの祝福者なんじゃろ?

この先のお主の人生に加護があるように、身に付けておけ。

儂が持ってても宝の持ち腐れじゃ!

…それにピアスなら着けてても髪で隠せば目立たんじゃろ。」

「…そこまで考えて…」


ハルは泣くのをグッと堪えて両手で箱を受け取った。


「ーありがとうございます!

イズンさんとディズさんにも、宜しくお伝えください。」


深く深くお辞儀をして、ハルはドサンコ村から旅立った。





☆☆☆☆☆

 「ーという訳でハルはもうここには居らんぞ。」


ホッキは自分が知る限りのハルの事情を、イズンとディズに語った。


「…そうだったのか、ハルさんは思慮深い人なんだな。」

「そうじゃよ、お主と違ってな!」


ホッキはイズンに憎まれ口を叩く。

いつものイズンなら応戦したが、ふと気付いた。


「…ドラゴン退治で騒ぎになるなら、オレ達もここから離れねーと面倒くさい事になるよな?」


疑問系ではあるが確信してディズに尋ねる。


「そうだね、ドラゴンの死体を放ったらかしにしてるし明日か明後日には、ドサンコ村以外でも騒ぎになるだろうね。」


ディズも冷静に肯定した。


ドラゴンからは貴重な素材が採れるので、ドラゴン退治をした後はちょっとしたお祭り状態になるのだ。

2人は追われる立場ではないが目立ちたくはなかった。


「…バーさん!オレ達も今から出発する!

ドラゴンの事も含めて後始末を頼めるか?」

「フン、儂は村長じゃぞ?

後の事は任せて、さっさと行った行った!」


ホッキらしい言い様にイズンもディズも笑って


「ありがとな、バーさん!」
「ありがとうございます、ホッキさん!」


お礼の言葉を残して、イズンは転移魔法を使った。



ーディズが目を開けると懐かしい風景が目に映る。

そこはディズの生まれ故郷『ドゲンカ村』の教会の入り口だった。


「えっ、えっ、何でここ!?」


突然の帰郷にディズは慌てる。

イズンは呑気に


「やっぱり、キュッシュ領は南方だから夏はあっちーなー!」


文句を言いながら教会の中に入っていった。


「ちょっ、ちょっと待ってよ、イズン!」


ディズもイズンを追って中に入る。

教会の中には誰もいない。


「ドゲンカ村には神父さんがいなかったっけ?」

「今日は週末だから布教活動で出張してるよ。」

「そっか、それならちょうど良かった。」


ディズは訳が分からなかった。


「何がちょうど良いの?」

「…女神様の前でディズに伝えたい事があるんだ。」










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