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ターコイズの章
真相
しおりを挟むイズンは自分の推理をまだ語り続ける。
「事情までは分からんが、ハルさんは祝福者だからという理由で誰かから追われてるんだろ。」
「誰かって目星は付いてるの?」
ディズが疑問を投げかけた。
「これも推論だが、かなりの権力者の可能性は高いだろうな。
村長やギルドマスターなんか目じゃない位の。
でなきゃ、祝福者なのにこんな辺鄙な村でコソコソ隠れ暮らさないだろうよ。」
「…もしかして、イズンが別れ際に通信石を渡したのは…」
「そうだよ、命の恩人が困った時に恩返しが出来たらいいなと思ったからだ。」
ーイズンは既にこの時には、ハルが何かに追われている事に気付いていた。
だからこそ、彼女が姿を消す前にお礼を渡したかったのだ。
「ハルさんの事情は村長のバーさんが知ってるんじゃないか。」
「ホッキさん?」
「この家はドサンコ村の中で隠れ家には持って来いな場所だからな。
今は空き家とはいえ、元は英雄が住んでた所だ。
ハルさんを追う誰かが来たとしても、英雄の家を家探ししにくいだろうし。
そして、この家を貸し出せるのは村長であるバーさんしかいねーだろ。」
ディズはポンと手を打った。
「なるほど!やっと分かったよ!
それならタークさんとララさんのお墓に、先に来てたのもハルさんだね!」
「あぁ、恐らくな。
あの様子だと家賃代わりに、頻繁に墓参りをしてくれてたみたいだ。
…ハルさんにとって、今朝はイレギュラー続きでビックリしただろうな。」
「そうだね、ニアミスで僕達がお墓参りに来た上にドラゴンまで来ちゃったからね。
ーだから教会の中に隠れてたのか。」
ディズも真相を掴んで苦笑する。
推理を語り終えたイズンは鏡台の引き出しを開けて、すぐにタークからの『報酬』を見つけた。
封筒の中身は手紙が1枚とターコイズの宝石の指輪が入っていた。
指輪はイズンの右手の小指にピッタリなサイズだ。
「手紙はえーと…
『俺達の子孫へ。
この手紙を読んでいるという事は、無事にドラゴンを倒してくれたんだろう。
俺の最期の心残りを始末してくれて、ありがとうな。
この指輪は俺達が結婚した時に、俺がララに贈った物だ。
それはお前の物だから好きにしていい。
ーいいんだが、大切に使ってくれたら俺もララも嬉しい。
それじゃあ、さらばだ。
ターク、ララ』
ーだ、そうだ。」
「それなら大切に扱わないとだね、イズン。」
「間違っても売るなよって、ひいじーさんからの圧があったな。」
イズンは茶化すように言って、指輪を嵌めた右手をヒラヒラ振った。
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