誕生石物語

水田 みる

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ターコイズの章

ドラゴン退治

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 タークとララが息を引き取った後、女神ジュエルは2人の魂に告げる。  


『そなた達の気高さに妾も報いよう。

子孫が村に来るまでドラゴンが来ぬよう、妾が結界を張っておく。

但し子孫が訪ねてきて、タークが事情の説明を終えた時点で結界は解くぞ。』





☆☆☆☆☆

『ーと、いう訳だ。

子孫イズンに俺の後始末をさせて悪いが、ドラゴン退治を頼んだぞ!』


タークは買い物でも頼む様な気安さで、イズンとディズに依頼した。


「…これ、オレ達が嫌だと言ってもドラゴンは来るんだよな!?

依頼じゃねーだろ!!」

『依頼だから報酬もあるぞー!

ドラゴンを倒した後に俺達の家に行ってくれ。

ララの鏡台の引き出しに報酬が入ってるぞ!』

「今は他所様の家だっ!!!」


イズンは全力で叫んで頭を抱える。


『まーまー、落ち着けイズン!

酸欠を起こすぞ。

それに体力を温存しとけ。

俺の話はこれで終わりだ。

ーつまり、いつ結界を解かれてもおかしくない状況だ。』


タークの言葉に2人はハッとする。


「ディズ!!」
「イズン!!」


同時にお互いに声を掛けて


「補助魔法、全開!!」


イズンが自分とディズに、ありとあらゆる補助魔法をかける。

攻撃力・防御力・あらゆる属性の耐性・素早さが限界まで上がる究極の補助魔法である。

ディズは腰に帯剣していた長剣の鞘を払った。


そして、イズンは大声で叫ぶ。


「女神様ーっ、オレの声が聞こえてたら村の全ての建物に結界を張ってくれっすー!!

貴女も教会を壊されたくはないっすよねー!?」


叫び終わった瞬間


「グオォォォオオーーー!!!」


ドラゴンのいななきが辺り一面に響き渡った。

ディズは体長5メートル程のドラゴンが視界に入るなり、疾風の如く弱点を長剣で狙う。


ドラゴンの急所は顎の下に1枚だけ逆さに生えている鱗の箇所ーいわゆる『逆鱗』である。

S級冒険者である2人はドラゴン退治は経験済みなので、その事を知っていた。

ディズも隙を狙って逆鱗を狙うが、1度や2度の攻撃では刃が通らない。

少しずつ削るしかないのだ。


「ーくっ、やっぱり硬いな!」


ディズが攻撃中、イズンは自分の双剣を抜いた。

剣の長さは長剣と短剣の間なので、力さえ有れば背の低い女性でも扱いやすい。

イズンは逆鱗を狙うディズの様子を伺いながら、気配を消してドラゴンの背中から頭に向かって一息に登った。


「生き物なら全部、目だって弱点だろっ!!」


イズンはそう言うなり、双剣でドラゴンの目を思い切り貫く。


「グワァァァアアアーーー!!!」


彼女の目潰し攻撃が効いたのか、ドラゴンは苦しげに頭上のイズンを振り落とそうと、頭をブンブンと激しく振った。
 
イズンはその前にヒラリと降りて、ディズの横にいる。


「ディズ今だ、行くぞ!!」
「了解!!」


補助魔法がかかった全力の攻撃力で、2人はドラゴンの首ごと切り落としにかかった。










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