誕生石物語

水田 みる

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ターコイズの章

ハッピーバースデー

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 イズンは急いで部屋のドアを開けた。

その瞬間ー


「15才の誕生日おめでとう、イズン!!」


彼女の顔の目の前にディズは花束を差し出した。

花はイズンの髪と瞳と同じターコイズブルーの色で、15本で花束になっている。


「…あ、そうか今日オレの誕生日…」


誕生日を忘れていたイズンは、予想外のディズの行動にフリーズしてしまった。


「…もしかして嫌だった…?」


ディズの不安そうな声で我に返る。


「そんな訳ないだろ!

嬉しいよ!メチャメチャ嬉しい!!」


ディズから花束を受け取り、優しく抱きしめて香りを嗅いだ。


「ー爽やかな甘さのいい香りだ。

オレ自身も忘れてたのにありがとう、ディズ!」


イズンの心からの笑みにディズも安堵して微笑む。


「実はまだあるんだよ、ジャーン!」


彼は自分で効果音を付けて、そっと白い小箱を取り出した。

箱の蓋を開けると、中には三角形のショートケーキが2個鎮座している。

苺も真ん中にちょこんと乗っている。


「おぉぉ、ディズ、これはもしかしてショートケーキか…?」

「もしかしなくてもショートケーキだよ!」


イズンは感激の余り震えて、ディズはドヤ顔でうんうん頷いた。


ー2人のこの反応には理由がある。

この世界には電化製品という物がない。

その代わりに魔法使いが魔法を込めて、生活を便利に送れる『魔道具』を作る。

イズンの通信石もその例である。

しかし、魔法使いは数が多くない上に魔法の種類もバラバラだ。

それ故に需要と供給のバランスが取れないのだ。

つまり魔道具は高級品で都会でないと、そうそうお目にかかれない。

そして、魔道具を使用した商品も高級品。

ショートケーキも『保冷庫』という魔道具で保管して売っているいるので、なのである。


「ー話だけは聞いたことがあったけど、実物を見るのは初めてだ!」

「僕もだよ。

イズン、感激してる所悪いんだけど早く食べないとクリームが溶けちゃうんだって!」


ディズは買う時に言われた店員の言葉を思い出して慌てた。

その言葉にイズンも慌てる。


「なっ、そうなのか!?

そ、それなら早く食べようぜ!」


フォークとお皿を2人分用意して、イズンとディズは同時に両手をパンと合わせた。


「「いただきます!!!」」


2人とも同時に一口食べる。


「ーー甘い、フワフワ、おいっしーー!!!」

「苺がちょっと酸っぱくて、その甘酸っぱさがイイね!!!」


2人とも興奮しながら人生初のショートケーキを平らげた。

食べ終わった後、イズンは余韻に浸りながら


「…ディズ、本当にありがとう!

ディズのおかげで、大人の門出の誕生日は最高だった!」


満面の笑みでお礼を告げる。

ディズもほんのり頬を赤く染めて


「…どう致しまして。

改めてこれからもよろしくね、イズン!」


嬉しそうに笑った。










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