14 / 45
ターコイズの章
ハッピーバースデー
しおりを挟むイズンは急いで部屋のドアを開けた。
その瞬間ー
「15才の誕生日おめでとう、イズン!!」
彼女の顔の目の前にディズは花束を差し出した。
花はイズンの髪と瞳と同じターコイズブルーの色で、15本で花束になっている。
「…あ、そうか今日オレの誕生日…」
誕生日を忘れていたイズンは、予想外のディズの行動にフリーズしてしまった。
「…もしかして嫌だった…?」
ディズの不安そうな声で我に返る。
「そんな訳ないだろ!
嬉しいよ!メチャメチャ嬉しい!!」
ディズから花束を受け取り、優しく抱きしめて香りを嗅いだ。
「ー爽やかな甘さのいい香りだ。
オレ自身も忘れてたのにありがとう、ディズ!」
イズンの心からの笑みにディズも安堵して微笑む。
「実はまだあるんだよ、ジャーン!」
彼は自分で効果音を付けて、そっと白い小箱を取り出した。
箱の蓋を開けると、中には三角形のショートケーキが2個鎮座している。
苺も真ん中にちょこんと乗っている。
「おぉぉ、ディズ、これはもしかしてショートケーキか…?」
「もしかしなくてもショートケーキだよ!」
イズンは感激の余り震えて、ディズはドヤ顔でうんうん頷いた。
ー2人のこの反応には理由がある。
この世界には電化製品という物がない。
その代わりに魔法使いが魔法を込めて、生活を便利に送れる『魔道具』を作る。
イズンの通信石もその例である。
しかし、魔法使いは数が多くない上に魔法の種類もバラバラだ。
それ故に需要と供給のバランスが取れないのだ。
つまり魔道具は高級品で都会でないと、そうそうお目にかかれない。
そして、魔道具を使用した商品も高級品。
ショートケーキも『保冷庫』という魔道具で保管して売っているいるので、高級品なのである。
「ー話だけは聞いたことがあったけど、実物を見るのは初めてだ!」
「僕もだよ。
イズン、感激してる所悪いんだけど早く食べないとクリームが溶けちゃうんだって!」
ディズは買う時に言われた店員の言葉を思い出して慌てた。
その言葉にイズンも慌てる。
「なっ、そうなのか!?
そ、それなら早く食べようぜ!」
フォークとお皿を2人分用意して、イズンとディズは同時に両手をパンと合わせた。
「「いただきます!!!」」
2人とも同時に一口食べる。
「ーー甘い、フワフワ、おいっしーー!!!」
「苺がちょっと酸っぱくて、その甘酸っぱさがイイね!!!」
2人とも興奮しながら人生初のショートケーキを平らげた。
食べ終わった後、イズンは余韻に浸りながら
「…ディズ、本当にありがとう!
ディズのおかげで、大人の門出の誕生日は最高だった!」
満面の笑みでお礼を告げる。
ディズもほんのり頬を赤く染めて
「…どう致しまして。
改めてこれからもよろしくね、イズン!」
嬉しそうに笑った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる