誕生石物語

水田 みる

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ターコイズの章

相棒・ディズ

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 イズンはドアに視線を遣る。

藍色の短髪に夜明けの橙色の切れ長の瞳を持った、15才の少年ーディズが立っていた。

イズンとディズの目が合う。


「イズン!?」

「うっす、久しぶりだな、ディズ!」


少年は驚いた顔をして、少女はイタズラが成功した様な笑みだ。


「…もしかして、もうすぐ15になるんだっけ?」


ディズは驚いたままイズンに問いかけた。


「あぁ、来月な。

そんで、もう今日が村から逃げ出せるギリギリだったから来たんだ。」


イズンは真面目な顔に戻って疑問に答えた。


「ーちょっと、待ってて。」


ディズは彼女に一言断って、受付のオフィの元に向かう。

そして今日の依頼の達成の報告と報酬を貰った。


「それにしても依頼の完了がえらく早かったわねぇー。

イズンちゃんがいるかもって予感でもあったのぉ?」


ニマニマ顔のオフィにディズは渋い顔をする。


「…んな訳ないでしょ。偶々です。」

「…フーン?」

「それよりも、オフィさん。

聞きたい事があるんですがー」


ディズはニマニマオフィを無視して本題に入った。


「僕達、キュッシュ領から出て冒険者をしながら旅はできますか?」


ディズからの突然の申し出にオフィだけでなく、ギルド内にいたイズン以外の時が一瞬止まる。


「…えっ、えっ、ななな何でっ!?

ゴワス支部の対応に何か問題あったの!?」


オフィの顔がみるみる青ざめた。


「依頼内容?報酬金額??

それとも2人をからかいすぎちゃった???

悪い所は直すからお願い、考え直してー!!」


ゴワス支部には2人以外にもS級冒険者はいるが、イズンとディズは別格な上に有名だ。

それ故に2人が離れるとなると美味しい依頼が来にくくなり、支部にとっては痛手なのだ。


「ちょっ、オフィさん落ち着いてー」


イズンとディズがパニックのオフィを落ち着かせようと声を掛けた、その時


「落ち着け、オフィ!!」


厳つい男が棒状に丸めた書類で、パコーンとオフィの頭を叩いた。


「「「マスター!!!」」」


3人の声がハモる。

ーゴワス支部のギルドマスター、セゴドが仁王立ちでオフィを睨んでいた。
 

「…イズンにディズ、詳しく話を聞きたいからこっち来い。」


セゴドは右手の親指で、先程まで自分がいた部屋をくいと指す。


「「…はい。」」


2人は神妙な顔でセゴドに連行されていった。










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