誕生石物語

水田 みる

文字の大きさ
上 下
4 / 50
ターコイズの章

冒険者ギルド

しおりを挟む

 転移魔法で一瞬で移動したそこは冒険者ギルドの建物の前だった。

冒険者ギルドは帝国も含めた世界中の各地にあり、ここはメンソーレ村から徒歩で3日かかる隣街『ゴワス街』のギルドだ。

イズンは入口のドアを躊躇いなく開いた。


「お疲れーっす!」


ギルド内にいた受付の女性や冒険者達が一斉にイズンを見る。


「あら、イズンちゃん!久しぶりね!」

「おぉ、イズンじゃねーか!」


皆、イズンと顔見知りだ。


「お久しぶりっす、ディズはいるっすか?」


受付の女性ーオフィはニマニマと笑いながら


「ディズは依頼で出てるけど夕方には戻る予定よぉ。」


近くの空いてる席に座るイズンに、彼女の好物のソーダ水を出した。


「そのニヤケ面はなんすか、オフィさん…」


オフィは更に笑みを深めて


「んーん、イズンちゃんとディズが出会ってもう5年になるんだなって思っただけよ!

5年間イズンちゃんが依頼の相棒に選ぶのはディズだけだもんねぇ!」


オフィはウフフフと笑いながら定位置に戻る。


イズンはゴワス街のギルドに登録している冒険者だ。

しかしメンソーレ村の者には、自分の魔法の力と同様に秘密にしていた。



ー5年前、イズンの両親を奪った流行病はキュッシュ領全土を席巻した。

その為、イズンの様に病で両親を失った孤児が爆発的に増えたのだ。

孤児院もあるが、余りの多さに全てを受け入れるのは不可能だった。

行き場のない平民の孤児は、餓死するか犯罪に手を染めるかの2択だ。

そこでキュッシュ支部のギルドが特例を出す。


『両親のいない孤児に限り10才から登録可能とする。』


通常なら15才にならないと登録できないが、孤児達に対しての救済措置だった。

イズンはギリギリ10才になったばかりだったので、村民には内緒で冒険者登録をしたのだ。

その時に出会ったのが、両親を亡くした同い年のディズという少年だった。


ギルドも10才の子供に難しい依頼は渡さずに、安全性の高い簡単な依頼を渡した。


ーだが、イズンとディズは最初こそ簡単な依頼だけを受けていたが直ぐに頭角を現す。

イズンの魔法は『強力な補助魔法』。

ディズは魔法こそ使えないが剣の達人だった。


イズンがお金を稼ぐ時は転移魔法でこちらに来て、ディズと組んで依頼をこなしていた。

それから5年、2人はメキメキと実力を上げて史上最年少のS級冒険者だ。


回想を終えたイズンは空腹だったので、ディズを待つ間に近くの食堂に向かう事にした。


立ち上がろうとした瞬間、ギルドの扉が開いた。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...