誕生石物語

水田 みる

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ターコイズの章

少女・イズン

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 ジュエリーラ帝国の南にある領地、キュッシュ領。

そのキュッシュ領の最南端に位置する『メンソーレ村』に、女神ジュエルの祝福を受けた少女がいた。


ーこれは、その少女の物語。





『ターコイズ』ー12月の誕生石。

石言葉は『成功・繁栄・強運・解放・旅の安全』。

古くから旅のお守りとして用いられている。

また身に付ける事で夢や目標を達成させる力を持つと信じられている。



メンソーレ村にはターコイズの祝福を受けた少女、イズンが暮らしていた。

彼女は来月で15才になる。


「おーい、イズン!どこにいるー!?」


呼ばれた本人は近くの民家の裏に身を隠しながら、そっと溜め息を吐いた。

12月生まれでターコイズブルーの髪色と瞳を持つ少女。

両親は女神の祝福を大層喜び、ターコイズに因み『イズン』と名付けた。

その両親は5年前の流行病で相次いで亡くしている。


「…はぁ、村長のバカ息子カランかぁ。」


メンソーレ村の村長にはイズンより2才年上の息子が1人いる。

村長夫妻はこの一人息子のカランを溺愛して、甘やかして育てた。

そのせいで非常に傲慢で冷酷に育ち、イズンはカランの事が大嫌いで軽蔑していた。

イズンは出来るだけカランと関わらずに暮らしたいのに、厄介な事に向こうから関わってくるのだ。


「…はぁ、やっぱこの髪と瞳のせいだよなぁ。」


イズンはもう一つ溜め息を吐いて、肩より短いショートボブの髪を右手でちょいと摘んだ。

イズンは中性的な顔立ちをしているので、見た目で自分を追いかけ回しているのではないだろうと思っている。

カランの目的はイズンが祝福で得た能力を欲しているのだろうと自身で予測していた。


だがカランはーいや、メンソーレ村の誰もイズンの能力を

何故なら、イズンが物心ついた頃から警戒して両親以外には隠していたからだ。



ーこの世界には色々な種類の魔法が存在している。

だが、全ての者が魔法を使える訳ではない。

魔法を使える者は、遺伝も身分も関係なくランダムに現れた。

ジュエリーラ帝国では国民の2割程である。

しかし女神ジュエルの祝福を受けた者は皆、魔法が使えるのだ。


勿論イズンも魔法が使えるが、メンソーレ村では本当の能力を隠していた。

カランだけでなく他の村民にも悪用されたくなかったからだ。


「イズン、やっと見つけたぞ!

手間かけさせやがって!」


イズンが物思いに耽っていたせいでカランに見つかってしまった。










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