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幕間②

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 まだ両親のページはあったが、ふと顔を上げる。

ちょうど女が死に戻りから帰ってきた所だった。

女が助けを求める目で我を見ている。

我が特に何もしなければ10秒で現世に戻されるからだ。

先程声をかけてから既に数回死んでいる。


ー仕方ない、少し心を抉ってやるか。


「百人の中に両親がいると話したのは覚えとるか?」


甘い言葉なぞ掛ける訳がない。

女の肩がビクッと震えた。


「身に覚えはあるか?」

「…ある訳ないで…」

「最後に母親と話したのはいつだ?」

「いつって…っっっ!!!」


女は気付いたようだ。

母親と話らしい話を何年もしていない事を。


「産みの親は貴様が10ヶ月の頃に事故で死んどる。

赤子の貴様を引き取ったのは父親の弟夫婦じゃ。」

「…そ、それじゃあパパは叔父さん?」

「そうじゃ。」

「マ、ママは…」

「赤の他人じゃ。」

「だから…だからなの?

ママがずっとアタシに冷たかったのは?」


我はそれには答えずに


「保育園の時の『マキちゃん』は覚えとるか?」

「保育園の時の事なんて大して覚えてないわよ!」

「貴様が幼女じゃ。」


傷付けた本人とマキ以外は気付いていなかったが、本当は女は目潰しで目を狙っていた。

マキが反射的に避けたから頬で済んだのだ。


「…目を狙った訳じゃ…」

「我に嘘は通用せんぞ。

因みにマキとその家族も百人の中におるぞ。
 
薄っすらとだが頬に傷が大きく残ってしまったんじゃ、当然じゃな。

それに貴様がその事に対して一切反省しなかったからじゃよ。」

「何がよ?」

「母親が貴様と父親に対して愛情を捨てた事じゃ。

あのビンタは母親からの最後の愛情じゃな。」

「…あのビンタが!?

それに何でパパまで?」

「それを知りたければ、まだまだ死んでこい。

疾く行け。」


女は我を睨みつけながら


「チクショーーー!!!」


どこぞのお笑い芸人みたいに叫びながら戻っていった。








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