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大団円
エピローグ②
しおりを挟む椿と最期のお別れができて良かった。
椿の世界を司る神は運良く僕の先輩兼上司に当たる神だから、事情を話したら特別に許可してくれた。
椿の最期の顔…
「余は満足じゃ!!」
とか叫びだしそうな顔してたな。
僕も満足したので、寂しさは残るがこれでやっと一区切りだ。
上司の女神にお礼を言って元の世界に戻ろう。
「…もういいのか、ルールー?」
「はい、最期に顔を見られたんで大丈夫です。
ありがとうございました。」
「ルールー、私達神は永遠を生きる存在だけどね、私達にだってハッピーエンドはあるんだよ?」
上司は意味深に微笑んでいる。
こういう時は僕が何を聞いても教えてくれない。
訳が分からないながらもペコリとお辞儀して、その場を去った。
「ただいまー…」
誰もいない部屋だけど、およそ280年前椿と一緒に暮らすようになってからの癖だ。
返事がないのは分かっているけど、つい言ってしまう。
「おっかえりー!
ルールー、何か飲むかー?」
そこには僕と別れた時の17才の椿がいた。
僕は幻でも見ているんだろうか?
「アハハ、驚いてる驚いてるー!
サプライズ大成功だな!」
彼女はイタズラが成功した子供のように笑っている。
…懐かしい、この笑い方は椿本人だ。
「…何故ここに?」
聞きたい事はたくさんあるのに、胸がいっぱいで言葉が出てこない。
「ルールーの上司の神様、えーと…」
「…ツボーネ様。」
「そうそう、ツボーネ様。
そのツボーネ様から、私が死んだ時に頼まれたんだ。
私の魂を半分にしてもいいか?って。」
「ハァ!?半分って何さ!?」
「こっちの世界で勇者になったり魔王になったり聖女になったりしたせいで、私の魂は一般人よりもかなり強くなったらしい。
別に強くても悪くはないけど、半分に分けたらちょうど一般人並みになるんだって。
分けられる強さがあるなら分けて、私がいなくなった後落ち込んでる部下の部下になってくれってさ。」
「落ち込んでないしっ!
それよりも僕の部下!?それって…」
僕は下っ端の神だから、部下はいなかったけど上位の神ーツボーネ様や他の神には『天使』という部下がいる。
そしてこの天使も力は神よりは無いけれど、不老不死の存在である。
「大変不本意ではあるけど、私は天使として形上はルールーの部下だな。」
「…残りの半分は?」
「あちらの世界でダーリンと天国でラブラブ生活だ。
半分に分けてもどちらも私だから、こっちの世界の生活もあっちの世界の生活も、お互いに把握できるんだ。
スゴイだろう?」
「何で17才の姿なのさ?」
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知らなかった、ルールーはババコンだった…」
「ち・が・う!!厚かましいと思っただけだよ!」
「まぁ、そういう事にしておくか。」
「それよりもっ!僕、冷たい抹茶オーレ飲みたい!
とびっきり甘いやつね!」
これからの彼女との騒々しくなるだろう日々を想像して、うっかり笑ってしまいそうな自分を誤魔化す。
しかし椿はそんな事はお見通しのように
「ハイハイ、抹茶オーレね。
…ルールー、これからもよろしくな!」
とびっきりの笑顔を僕に向けた。
《完》
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