聖女の秘密

水田 みる

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創造神ルールー

消滅

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「…よく気付いたね、『カメリア』の正体。」


僕は感心しながら皐月を見る。

そんな僕の様子に多少の毒気は抜けたのか、先程より落ち着いた様子で答えた。


「俺の母親がとあるブランドが好きで、しょっちゅう見せびらかしてたんだよ。

『カメリア』ってデザインのな。

俺の世界で『カメリア』は日本語に訳すと『椿』だ。

だから聖女が名乗った時にピンときた。」


右手のピコピコハンマーを左手に軽く当てながら、皐月は理由を語る。

ハンマーは『ピコッピコッ』と可愛らしい音ではなく、壊れた為か『ビコッビコッ』と不吉な音を奏でていた。


「そうだね、君になら詳しく説明してもいいんだけど先にしなきゃいけない案件があるんだ。

今から一切、口を挟まず手を出さずにいられるならここにいていいけど、どうする?」

「分かった、終わるまでは静かにしてる。」


素直に皐月が返事したので、僕は頷き元王子の魂に触れて起こした。


「…久しぶりだね、元王子。

創造神ルールーだよ。」

「…!?創造神!?

何故ここにっ?いや、何でボクは死んだんですかっ?

ボクは不死身のはずだ!!」


目覚めた彼はパニックになっている。


「それを君に話す義理はない。

君の魂はこの世界でも異世界でも転生する事は許さない。

今、この場をもって僕の能力ちからで消滅させる。

…これで永遠のサヨナラだ、バカバッカ元王子。」


先程、椿が元王子に放ったセリフを僕も放つ。

彼の魂に神の魔法『浄化の炎』で火をつけた。

この魔法で消滅した魂は全世界からの消滅を意味する。

どの異世界でも転生することは不可能だ。

元王子は


「いやだいやだいやだいやだいやだいやだ…」


叫びながら消滅した。

最大の厄介事が無事に片付いたので、僕は下の世界の椿に呼びかける。


「椿ー、全部終わったから戻ってきて大丈夫だよー。」


少しの間の後


「ルールー、後っもう少しでっ、こっちも終わるからっ、もっちょっと待っててっ!」


やけに息が上がっている声で返事がきた。

下界のカメリア椿の様子を見ると、魔王城の外で穴を掘って元王子を埋葬中だった。

恨み骨髄だろうに、お人よしだと思っていると考えが聞こえたかのように


「コイツのっ、近くでっ、死にたくっ、ないからっなっ!!」


そう答えながら、バサバサとシャベルで元王子に土を被せている。

椿は戻ってくる為に再び死ななければならないので、彼女の髪飾りに毒を隠し持っていた。

飲んだ時に痛みも苦しみもなく、一瞬で死ねる自殺にはもってこいの毒だ。


「椿が戻ってくるまでもう少しかかりそうだから、今の内に聞きたいことがあれば答えるよ。」


静かに僕らのやり取りを見守っていた皐月に振り返った。











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