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元王子アール
700年前⑪
しおりを挟む「宿泊分の差額をお返ししたいんですけど、こちらに何泊されますかー?」
どうやらそれなりの品だったらしく、差額を返す程の値の物だったようだ。
情報とツバキの行方を探したいから、あまり長居はできない。
疲れを癒したらまた移動しなければ。
「…1週間、世話になるよ。
あぁ、あと新聞も毎日頼むね。」
「ありがとうございまーす!
新聞はサービスですので、お代は結構ですー!」
主人は元気よく答えて差額をお金で返してくれた。
無駄遣いしなければ、およそ3ヶ月分の路銀だ。
ツバキとの旅で、平民の物価と暮らしを学んでおいて助かった。
主人から今日の新聞と部屋の鍵を受け取る。
部屋に入って新聞に目を通してから眠ろうと思ったが、想像以上に疲れていたようだ。
ベッドに上がるなり、その日の夕方まで泥のように眠ってしまった。
ーーヒョウジュ村で1週間情報を集めた結果分かった事は
バカバッカ城は1週間燃え続けた為焼け落ちたこと。
その火事が原因で父上も含めて城内の人間がほとんど亡くなったこと。
原因の火事を起こしたのは謀反を企んだボクであること。
あの火事で数少ない生き残りのメイドがそれを証言していること。
当初ボクも火事に巻き込まれて結局死んだと思われていたが、生き残っていて今は逃げて行方不明であること。
勇者様も謀反に巻き込まれて行方不明であること。
その為にまだ魔王は討伐されていないこと。
…ウソだっ、ぜーんぶ大嘘だっ!!
ボクは謀反なんて企んでなかったし、魔王だって討伐した!
メイドがボクに何の恨みがあるか知らないけれど、まずはそのメイドを捕まえて皆の前で真実を告白させねば!!
…最低でもソイツの口を封じなければならない。
ツバキを探しながらメイドを探し出すことが、ボクの旅の目的になった。
当初の予定通り1週間でヒョウジュ村から旅立つ。
情報集めの1週間の間に茶髪のウィッグを買って、寝ている時も常に装着していた。
そのおかげで、その後の旅は恐怖に晒される事はなかった。
…『オースコ街』に着くまでは。
まずはツバキを探したかったから、彼女との旅で立ち寄った街や村で情報収集をしながら北の大地を目指していた。
その途中の少し大きめな街の『オースコ街』に着く。
そろそろ護身用の武器が必要かなと思い、ボクが扱える剣を購入した。
買い物が終わり店を出ると、武器屋の前で若い女性が街の住民と話している声がした。
「…えぇ、そうです!
私はバカバッカ城で勤めていたメイドだったから、全てを見ていました!
元王子が謀反を起こしたから、あの悲劇が起こったんです!」
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