〜恋痛〜  短編恋愛小説集

ふぅ

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2作品目.蛙化現象

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  君を私は手に入れてから、嫌いになっ

てしまった。

  でも、ちゃんと好き

前までは。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

高校2年の夏。

本当に一目惚れだった。

彼はバレー部で、身長も高かった。


私の学校は、バレーやバスケに力をいれ

ていて、全国大会の決勝は希望者なら見

に行くことができる。


でも希望した理由は特になかった。

ただこっちの地方での開催だったし、

中学校時代はバレー部だったから、友達

に誘われて行った。それだけの筈だっ

た。


誰よりも輝いてみえた。

笑うと笑窪がでて、

可愛いのにカッコよかった。



今まで部活と勉強ばかりだったし、恋愛

にも興味が微塵もなかったのに、初めて

男の人に魅力を感じてしまった。


友達にも、

「いいじゃん!告ればいいのに!」

と、言われた。



抗いたい気持ちと裏腹に、同じ学年だか

ら、すれ違いざま意識してしまうし、合

同での体育の授業では、見惚れてしまっ

ている……


やっとの事でゲットした彼とのメッセー

ジチャットのアカウントは、意外にもよ

く鳴るようになっていった。



ある日のチャット中、驚くべき文字列。

「本当はさ、前大会来てくれる前から気になってた。」

そう言われた。


前の大会から知っていてくれたなんて嬉

しいことこの上なかった。


毎日のようにする寝落ち通話。

大会の度に応援に向かう道。

些細なことで微笑みかけてくれる事。

全てに愛しさを感じていた。





その時まではまだ、大好きだった。



テスト期間で少しの間連絡が減った。

久しぶりに聞いた彼の声は、

妙に甘ったるくて、

下心がありそうで、

前では一切感じなかった、嫌悪感が私を

襲う。

デートで手を繋ぐことも、抵抗を感じて

しまう。触れそうな手を思い切り自らに

近寄らせて、手を繋がない。ある1種の

拒絶反応みたいだ。


私の好きも、大したこと無かったのかな


そう思ってきていた。


それ以前に彼に申し訳ない。

いっその事、打ち明けて、別れたい。

でも何だか悲しい。


言葉にできないもどかしさを、

行き場のない彼の気持ちを、

どこかに投げ出したかった。



そしてある日、恋愛ネットの相談コーナ

ーにて、ある記事を目にした。


「蛙化現象」


その欄には多くの共感、共有する書き込

みがあった。



私は蛙化現象なのか。


これになってしまったカップルは、その

多くは別れに至るらしい。


次会う日に、カミングアウトしよう。


そう決めて会うその日には、

そうと決めたのに。いざ彼の笑顔を前に

すると、決心が揺らいでしまう。

私はこの彼の笑顔を壊そうとしているの

かと、自己嫌悪する。

そのままの方が彼に悪い。これは間違い

ない事実である。

 蛙化現象であることを口にする。

心が張り裂けそうだった。

彼は目をみて話を聞いてくれた。

口も挟まず、相槌を打って。

でも次第に目が赤くなっていく。

私のために泣くことを我慢しているのか













彼は一時して、私に問いた。

「もう俺の事好きじゃないってこと?」

と。












好きじゃないんだと思う。


今の気持ちは間違いなく、


























彼の存在に対する独占欲のような支配欲







その1つで埋められている。















蛙化現象なんて、










寿命まで来ないで欲しかった。







(了)
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