3 / 15
3.巫女くんの生活
しおりを挟む
三人の友人をそれぞれの家まで送り届け、巫女もすっかり暗くなった夜道を走らせて神社へ帰る。今日はカフェで新作のキャラメルラテを飲んだ後、カラオケに行ってだらだらしていたのだった。
新作のキャラメルラテは美味しかったけど、なんとなく甘さが強い。次行く時は別のものを頼もうと巫女は思った。
地下駐車場の車と車の間に器用に駐車し、神社の本殿裏にある玄関口の鍵穴にディンプルキーを使って解錠し、帰宅する。
「叔父さんただいま」
神社だが、なぜか住居部分はヨーロッパ風のハーフティンバー様式だった。
脱衣所で巫女服を脱ぎ、上は洗濯籠に、袴はハンガーにかけて後で干しておく。袴は乾かすのも面倒なため、毎日は洗わなかった。Tシャツとハーフパンツ姿になった巫女はリビングへ向かった。
革張りの大きなソファを占拠しているのはボルゾイ犬のシャシャとミュミュだ。飼い主にはあまり興味がないらしく、巫女の方をちらりと見てすぐに目を閉じた。
「おー、おかえり。晩御飯できてるよ」
車のエンジン素材そのままのコーヒーテーブルにノートパソコンを置いて副業に精を出す叔父は、昼間と同じ作務衣姿で無垢材のフローリングに座っている。ソファは犬に占拠されているからだろう。
まだ夕食は食べていなかったようで、二人分の食事がラップがけされてアイランドキッチンに置いてあった。白米にメインディッシュはつぼ鯛の干物、サイドに何かの野菜だ。冷めていたので電子レンジで温めてから食卓に出した。
車は乗り回す上、住居も洋風、飼っている犬も洋犬だが腐っても神社なので、本居宣長式に食前の挨拶はする。
「たなつもの ももの木草も あまてらす 日の大神の 恵み得てこそ。いただきます」
手を合わせ、食材に感謝しながら食べる……まあ普通のことだ。巫女は食事中に会話を楽しみたいタイプだったので、食事中は黙っていなければならない神社の暮らしはそこだけが不満だった。食後の挨拶も同様に行い、食器を洗って乾燥棚に入れる。
後は風呂に入って、歯磨きをしたら寝るだけだ。
風呂から上がり、二階にある自室で海水魚水槽の照明を落としてベッドに入ろうとすると、シャシャがベッドの中央に陣取っていたので端にお邪魔して、SNSを軽くチェックしてから少々窮屈ながら眠りについた。
新作のキャラメルラテは美味しかったけど、なんとなく甘さが強い。次行く時は別のものを頼もうと巫女は思った。
地下駐車場の車と車の間に器用に駐車し、神社の本殿裏にある玄関口の鍵穴にディンプルキーを使って解錠し、帰宅する。
「叔父さんただいま」
神社だが、なぜか住居部分はヨーロッパ風のハーフティンバー様式だった。
脱衣所で巫女服を脱ぎ、上は洗濯籠に、袴はハンガーにかけて後で干しておく。袴は乾かすのも面倒なため、毎日は洗わなかった。Tシャツとハーフパンツ姿になった巫女はリビングへ向かった。
革張りの大きなソファを占拠しているのはボルゾイ犬のシャシャとミュミュだ。飼い主にはあまり興味がないらしく、巫女の方をちらりと見てすぐに目を閉じた。
「おー、おかえり。晩御飯できてるよ」
車のエンジン素材そのままのコーヒーテーブルにノートパソコンを置いて副業に精を出す叔父は、昼間と同じ作務衣姿で無垢材のフローリングに座っている。ソファは犬に占拠されているからだろう。
まだ夕食は食べていなかったようで、二人分の食事がラップがけされてアイランドキッチンに置いてあった。白米にメインディッシュはつぼ鯛の干物、サイドに何かの野菜だ。冷めていたので電子レンジで温めてから食卓に出した。
車は乗り回す上、住居も洋風、飼っている犬も洋犬だが腐っても神社なので、本居宣長式に食前の挨拶はする。
「たなつもの ももの木草も あまてらす 日の大神の 恵み得てこそ。いただきます」
手を合わせ、食材に感謝しながら食べる……まあ普通のことだ。巫女は食事中に会話を楽しみたいタイプだったので、食事中は黙っていなければならない神社の暮らしはそこだけが不満だった。食後の挨拶も同様に行い、食器を洗って乾燥棚に入れる。
後は風呂に入って、歯磨きをしたら寝るだけだ。
風呂から上がり、二階にある自室で海水魚水槽の照明を落としてベッドに入ろうとすると、シャシャがベッドの中央に陣取っていたので端にお邪魔して、SNSを軽くチェックしてから少々窮屈ながら眠りについた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
舞いあがる五月 Soaring May
梅室しば
キャラ文芸
佐倉川利玖は、風光明媚な城下町にある国立潟杜大学に通う理学部生物科学科の2年生。飲み会帰りの夜道で「光る毛玉」のような物体を見つけた彼女は、それに触れようと指を伸ばした次の瞬間、毛玉に襲い掛かられて声が出なくなってしまう。そこに現れたのは工学部三年生の青年・熊野史岐。筆談で状況の説明を求める利玖に、彼は告げる。「それ、喉に憑くやつなんだよね。だから、いわゆる『口移し』でしか──」
※本作は「pixiv」「カクヨム」「小説家になろう」「エブリスタ」にも掲載しています。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
京都式神様のおでん屋さん 弐
西門 檀
キャラ文芸
路地の奥にある『おでん料理 結(むすび)』ではイケメン二体(式神)と看板猫がお出迎えします。
今夜の『予約席』にはどんなお客様が来られるのか。乞うご期待。
平安時代の陰陽師・安倍晴明が生前、未来を案じ2体の思業式神(木陰と日向)をこの世に残した。転生した白猫姿の安倍晴明が式神たちと令和にお送りする、心温まるストーリー。
※一巻は第六回キャラクター文芸賞、
奨励賞を受賞し、2024年2月15日に刊行されました。皆様のおかげです、ありがとうございます✨😊
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる