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タニアさんは人間ではない。鳥人族だとか獣の耳が付いているだとかそういう意味ではなく、ただしく人外である。
かといって魔族というわけではない。魔力の仕方が違うし、俺はなんとなく魔族ならそうだろうなと気が付く。だからじゃあ何の種族であるかといえば定かではないのだが。
訊きそびれたまま魔法師ギルドに戻ってきた俺は、本当に修繕したというタニアの証明で晴れてお咎めなしとなって解放された。2人で出掛けて3人で帰ってきたことについては、アレーナが仲間で保護者ですと当然のように名乗りでた後は追及されなかった。
「名前は分からないが、脅威ともとれる魔法師が知らぬところにいるとは驚いたわい……何かあればまた力になって欲しいものじゃな」
「そこは黄金ランク冒険者のこの僕、タニアにお任せあれ」
「報酬次第ですかね」
ノリが悪いよ、と小突かれながらも冗談を交わす。日没してから久しいので場所を外に変えてタニアと話した。
「本隊での活躍を期待してるよ。存分に技量を見届けたら、次は君の討伐で会うかな」
「なるほど。それが最後ですか?」
「随分な自信だよね……謎魔王の、名前も知らない君。アザゼルより大規模な討伐隊が組まれるだろうにね」
規模の問題か? と鼻を鳴らすと、タニアに笑われた。アレーナはタニアに微弱な殺意を送っていた。
タニアと別れた後は部屋に戻る。
鎧をガシャンと外してベッドの横に置き、水の魔法で身を清めると横になった。
部屋が広いので、クエレブレも襟巻き状の姿を解いて本来の姿でとぐろを巻いている。広めのベッドでも、中央に寝転んだのが悪かったらしく、アレーナは顔をしかめた。
「ちょっと、真ん中に寝転がられると邪魔なんだよね。ベッド1つしかないのに……」
「今からでも変えてもらうか?」
「嫌よ。だから窓際に寄って」
何でベッドが2つの部屋にしなかったんだ、と疑問が浮かぶ。のろのろと移動しようとする間に敷物が引っ張られ、ぐるんと俺は回転して壁にぶつかった。
「あ、ごめん」
「無傷だからいいよ。これで寝られるか」
アレーナが素早くベッドに滑り込む。じゃあもう寝ていいかと目を閉じかけると、肩を叩かれて起こされる。
「シェミハザ様ってさ」
アレーナがこっちを見て世間話を始める。もう眠い。
「近所の、ちょっと抜けてるお姉さんって感じね」
「俺が?」
突然何を言い出すんだか。しかもどういう例えだよ。
起こされてもなお眠く、半ば白目を剥きかけながらも話を聞く。
「うん。アタシみたいな超絶美少女が隣にいるのに眠気最優先でしょ?」
「まあ……眠いからな。朝起きたその瞬間からもう眠いんだ」
話している途中でまた背中をバシバシと叩かれた。まだ、話すのか……。
「魔法師ギルドマスターの人が寛大でよかった。返り血浴びながらあくせく働いて稼いだ金、弁償代に丸ごと持っていかれたら落ち込むよ」
「そもそも、全部なあなあな説明だし……。半分自由で半分不自由、することが見当たらない。ふぁー……今日はもう寝るけど、明日とかどうする? 明日のことは明日に決める?」
「そうする……眠い……明日、また……」
今度こそ眠りにつくことを許され、まもなく俺は意識は飛ばす。
早すぎる眠りは気絶ともいえるらしい。
かといって魔族というわけではない。魔力の仕方が違うし、俺はなんとなく魔族ならそうだろうなと気が付く。だからじゃあ何の種族であるかといえば定かではないのだが。
訊きそびれたまま魔法師ギルドに戻ってきた俺は、本当に修繕したというタニアの証明で晴れてお咎めなしとなって解放された。2人で出掛けて3人で帰ってきたことについては、アレーナが仲間で保護者ですと当然のように名乗りでた後は追及されなかった。
「名前は分からないが、脅威ともとれる魔法師が知らぬところにいるとは驚いたわい……何かあればまた力になって欲しいものじゃな」
「そこは黄金ランク冒険者のこの僕、タニアにお任せあれ」
「報酬次第ですかね」
ノリが悪いよ、と小突かれながらも冗談を交わす。日没してから久しいので場所を外に変えてタニアと話した。
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「なるほど。それが最後ですか?」
「随分な自信だよね……謎魔王の、名前も知らない君。アザゼルより大規模な討伐隊が組まれるだろうにね」
規模の問題か? と鼻を鳴らすと、タニアに笑われた。アレーナはタニアに微弱な殺意を送っていた。
タニアと別れた後は部屋に戻る。
鎧をガシャンと外してベッドの横に置き、水の魔法で身を清めると横になった。
部屋が広いので、クエレブレも襟巻き状の姿を解いて本来の姿でとぐろを巻いている。広めのベッドでも、中央に寝転んだのが悪かったらしく、アレーナは顔をしかめた。
「ちょっと、真ん中に寝転がられると邪魔なんだよね。ベッド1つしかないのに……」
「今からでも変えてもらうか?」
「嫌よ。だから窓際に寄って」
何でベッドが2つの部屋にしなかったんだ、と疑問が浮かぶ。のろのろと移動しようとする間に敷物が引っ張られ、ぐるんと俺は回転して壁にぶつかった。
「あ、ごめん」
「無傷だからいいよ。これで寝られるか」
アレーナが素早くベッドに滑り込む。じゃあもう寝ていいかと目を閉じかけると、肩を叩かれて起こされる。
「シェミハザ様ってさ」
アレーナがこっちを見て世間話を始める。もう眠い。
「近所の、ちょっと抜けてるお姉さんって感じね」
「俺が?」
突然何を言い出すんだか。しかもどういう例えだよ。
起こされてもなお眠く、半ば白目を剥きかけながらも話を聞く。
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「まあ……眠いからな。朝起きたその瞬間からもう眠いんだ」
話している途中でまた背中をバシバシと叩かれた。まだ、話すのか……。
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「そもそも、全部なあなあな説明だし……。半分自由で半分不自由、することが見当たらない。ふぁー……今日はもう寝るけど、明日とかどうする? 明日のことは明日に決める?」
「そうする……眠い……明日、また……」
今度こそ眠りにつくことを許され、まもなく俺は意識は飛ばす。
早すぎる眠りは気絶ともいえるらしい。
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