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第十三章 誤算

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「あら、もう出て来たの?」

 教室に入ると、ミクが馬鹿にしたような口調でリクたちにそう言いました。
リクとウィリアムは、それには答えず、黙って席に着きました。



 「ねぇ、謹慎室ってどんなところなの?
みんな知りたがってるから、教えてよ!」



ミクは聞こえよがしにそんなことを言いました。
ウィリアムが反論しようとした時、ジクルが立ち上がりました。



 「どういうことだ?
リク、おまえ、謹慎室に行ったのか?」

 「ウィリアム、あなたも謹慎室に行ったの?
 一体、どうして?」

 「え?」



 驚いたのはリクとウィリアムだけではありませんでした。
ミクも目を大きく見開き、明らかに動揺していました。



 「あ、あなた達、何を言ってるの?
まさか、あの事件のことを忘れたっていうんじゃないでしょう?」

 「事件…?」

 「ミク、何のことを言ってるの?」



 皆の反応に、ミクは苛立ち、怒りに顔を赤くしました。



 (ウィリアム…喪失の旋律のせいだ。
 喪失の旋律で、みんなはあの事件のことを忘れたんだ。)

リクはウィリアムに小声で耳打ちしました。



 (なんだって!?でも、『喪失』は『追想』と対をなす旋律のはずだ。
あの事件のことを忘れるのはおかしいじゃないか。)

 (ミクの旋律は正確なものじゃなかった。
 多分、そのせいだ。
いいかげんな旋律だったから、こんなことが起きたんだ。)



リクの予想が正しかったのだとわかるのに、そう時間はかかりませんでした。

ウィリアムはレイダン先生にかまをかけてみましたが、先生は、やはり、あの事件に関して何も覚えていなかったのです。

 
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