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26,パーソナル②
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そうして第二ミッションはビボクによって華やかに開幕し、進められた。
つぎつぎと……練習生たちは自らの得意なことや、アピールしたいパフォーマンスを繰り広げていく。ダンスや歌からは見ることのできない、彼らのパーソナルな部分を知られるこのミッションは、練習生たちにとっても互いを知るよい機会となった。
シュマはけん玉を操りながらフラッシュ暗算をし、ベクギュは動画チャンネル風のラップパフォーマンス、ドンウクはタンブリング――という具合だ。
ジアンも練習生もスタッフも……練習生たちの個性あふれるステージから目が離せなかった。
「さて、なにを準備してくれたの? ジュヌ」
やがて披露順は、ジュヌの番へと差し掛かった。ジアンの問いかけに、ジュヌは静かにマイクを握る。
「フォトムービーを作ってみました」
「あら、いいわね。写真を撮るのが趣味?」
「いいえ。写真も、動画作りも初めてで……」
「へえ。じゃあ初めてだらけたっだのね。分かりました、観てみましょうか」
彼女の言葉にジュヌは頷き、ステージ上に設置していたノートパソコンを操作する。そうして背面に設置されていたスクリーンに、画面を表示させる。
穏やかなBGMと共に、公園で撮影した写真が映し出されていく。ジュヌの見た世界が切り取られ、繋げられたムービー。それは瑞々しい感性に溢れ、目だけでなく心も引き寄せるようだった。
(ジュヌって、センスがあるんだよね……俺ばかり見てないで、もっといろんなことを知っていくべきなのに)
写真の色彩や画角だけでなく、その繋ぎ方も洗練されており、観ている者を飽きさせることがない。誰しもがスクリーンに注目している。
「――えっ!?」
フォトムービーに魅せられていたソルセが、思わず大きく声をあげた。遅れて練習生たちも、わずかに色めきだつ。
「ねえ、あれってさ」
楽しげなベクギュの声。
公園の風景写真のなか……そのなかに、ソルセの写真が紛れこんでいたのだ。
バケットハットを被ったソルセの横顔。そして風に帽子が浮く瞬間。まるで映画のワンシーンのように、それらは流れていく。
「まあ……よく撮れてるわねえ」
そして白いバケットハットは白い花にオーバーラップし、フォトムービーは再生を終えた。
「これがジュヌの見ている風景なのね。ほんの日常が、とても美しかったわ」
「……そう思えるようになったのは、最近です」
ジュヌの言葉に、みなステージ上へ視線を集中する。
「俺はいままで、趣味という趣味を持てませんでした。なにかをするにも、出来るには出来たんですけど……でも、だからといって続けたいとも思えなくて」
――だけど。
「いまは、世界が明るい気がします」
(あ……)
ソルセは目を瞠った。ステージに立つジュヌの頬が、穏やかに緩んだからだ。そこにあったのは、ソルセを追いかける不純な色を含む双眸ではなく、透き通った無垢な青年のものだった。
「もし私がその一助になれていたのなら、こんなに嬉しいことはないわ。ところでジュヌ――」
ジアンが、そっとマイクを握り直す。わずかに空気が張り詰める気配がした。
「ソルセがとっても驚いていたようだけれど、もちろん、掲載の許可はとったのよね?」
「……それは」
ステージ上のジュヌがソルセに視線を向ける。他の練習生たちも同様だった。向けられた視線に、ソルセは息を呑む。
「……とっていない、のかしら」
「すみません」
ジアンの言葉に、ジュヌは素直に謝罪を述べる。
「兄さんも、ごめんなさい」
「あ……うん……。言ってくれても、俺は断らなかったよ」
彼らのやりとりに、ジアンは頷いた。
「とても素敵な作品だったわ。だからこそ、そういうところはしっかりしないと。みんなも、番組のSNSに写真を投稿すると思うけれど、誰かが写っている場合はお互いに許可をとってね」
はい! と一同は声を上げた。
果たしてジュヌのパフォーマンスは、視聴者たちの目にどう映るのだろうか。
つぎつぎと……練習生たちは自らの得意なことや、アピールしたいパフォーマンスを繰り広げていく。ダンスや歌からは見ることのできない、彼らのパーソナルな部分を知られるこのミッションは、練習生たちにとっても互いを知るよい機会となった。
シュマはけん玉を操りながらフラッシュ暗算をし、ベクギュは動画チャンネル風のラップパフォーマンス、ドンウクはタンブリング――という具合だ。
ジアンも練習生もスタッフも……練習生たちの個性あふれるステージから目が離せなかった。
「さて、なにを準備してくれたの? ジュヌ」
やがて披露順は、ジュヌの番へと差し掛かった。ジアンの問いかけに、ジュヌは静かにマイクを握る。
「フォトムービーを作ってみました」
「あら、いいわね。写真を撮るのが趣味?」
「いいえ。写真も、動画作りも初めてで……」
「へえ。じゃあ初めてだらけたっだのね。分かりました、観てみましょうか」
彼女の言葉にジュヌは頷き、ステージ上に設置していたノートパソコンを操作する。そうして背面に設置されていたスクリーンに、画面を表示させる。
穏やかなBGMと共に、公園で撮影した写真が映し出されていく。ジュヌの見た世界が切り取られ、繋げられたムービー。それは瑞々しい感性に溢れ、目だけでなく心も引き寄せるようだった。
(ジュヌって、センスがあるんだよね……俺ばかり見てないで、もっといろんなことを知っていくべきなのに)
写真の色彩や画角だけでなく、その繋ぎ方も洗練されており、観ている者を飽きさせることがない。誰しもがスクリーンに注目している。
「――えっ!?」
フォトムービーに魅せられていたソルセが、思わず大きく声をあげた。遅れて練習生たちも、わずかに色めきだつ。
「ねえ、あれってさ」
楽しげなベクギュの声。
公園の風景写真のなか……そのなかに、ソルセの写真が紛れこんでいたのだ。
バケットハットを被ったソルセの横顔。そして風に帽子が浮く瞬間。まるで映画のワンシーンのように、それらは流れていく。
「まあ……よく撮れてるわねえ」
そして白いバケットハットは白い花にオーバーラップし、フォトムービーは再生を終えた。
「これがジュヌの見ている風景なのね。ほんの日常が、とても美しかったわ」
「……そう思えるようになったのは、最近です」
ジュヌの言葉に、みなステージ上へ視線を集中する。
「俺はいままで、趣味という趣味を持てませんでした。なにかをするにも、出来るには出来たんですけど……でも、だからといって続けたいとも思えなくて」
――だけど。
「いまは、世界が明るい気がします」
(あ……)
ソルセは目を瞠った。ステージに立つジュヌの頬が、穏やかに緩んだからだ。そこにあったのは、ソルセを追いかける不純な色を含む双眸ではなく、透き通った無垢な青年のものだった。
「もし私がその一助になれていたのなら、こんなに嬉しいことはないわ。ところでジュヌ――」
ジアンが、そっとマイクを握り直す。わずかに空気が張り詰める気配がした。
「ソルセがとっても驚いていたようだけれど、もちろん、掲載の許可はとったのよね?」
「……それは」
ステージ上のジュヌがソルセに視線を向ける。他の練習生たちも同様だった。向けられた視線に、ソルセは息を呑む。
「……とっていない、のかしら」
「すみません」
ジアンの言葉に、ジュヌは素直に謝罪を述べる。
「兄さんも、ごめんなさい」
「あ……うん……。言ってくれても、俺は断らなかったよ」
彼らのやりとりに、ジアンは頷いた。
「とても素敵な作品だったわ。だからこそ、そういうところはしっかりしないと。みんなも、番組のSNSに写真を投稿すると思うけれど、誰かが写っている場合はお互いに許可をとってね」
はい! と一同は声を上げた。
果たしてジュヌのパフォーマンスは、視聴者たちの目にどう映るのだろうか。
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