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19,第二ミッション発表①
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一日の休暇を挟み、練習生たちは再び招集された。第二ミッションの発表だ。
練習生たちがラウンジに集うと、そこにはTシャツにスキニーパンツというラフな出で立ちのジアンが待ち構えていた。
「みんな、第一ミッション素晴らしかったわ」
ラウンジに入室する練習生に向かって、ジアンは惜しげもなく拍手を送る。歌姫と呼ばれていた彼女の称賛は、練習生たちに自信と誇りを与えてくれた。
「ミッションを通して、あなたたちがどのような姿勢でステージに立って、どのように魅せてくれるのか……私たちプロデューサー陣にはもちろん、視聴者の皆様にも伝わったことでしょう」
並んで立つ練習生ひとりひとりの顔を見渡しながら、ジアンは言う。まるで、目の高さを合わせて語りかけるようだ。さほど年が離れているというわけでもないのに、母のような安心感があった。
「けれど、アイドルに必要なものはダンスと歌だけではないわ」
ジアンは微笑みながら、細い指先をすっと一本立てる。
「もう一つ、とても大切なものがあるの。それはなにかしら? ……そうね、ダファンはどう思う?」
ダファンは突然名指しされ、悩んだ顔をしながら口を開いた。
「ええと……表情管理、ですかね」
元俳優のチャン・ダファンらしい答えだ。と、練習生たちは頷く。
踊り、歌いながら、その曲やリズム、雰囲気に合わせた表情をするのはとても難しい。慣れるまではパフォーマンスにいっぱいいっぱいになってしまい、後回しにしがちなものだ。或いは疲労などで気が回らなくなってしまうことが多い。
「ええ、もちろんそれも大切よ。楽曲を演じるといえばいいかしら。ダファンの表情管理は、第一ミッションでもひときわ優れていたわね」
思いがけず褒められ、ダファンはありがとうございます……と照れくさそうに頭を掻いた。
「けれどそれより……そうね、パフォーマンス以前に、初歩的なことでなにかない? ベクギュ」
「うーん、愛嬌?」
差されたベクギュは悪戯っぽく首を傾げる。さすが、すでに視聴者から『ブラックマンネ』の称号を授けられた高校生練習生だ。マンネとは末っ子という意味で、転じてグループ内の最年少者のことを差す。そしてそこにブラックとつけば、おのずと言葉の雰囲気は分かるだろう。
あざとさが全開ながら、憎めない雰囲気をまとっている。カメラで抜かれたこの姿も、配信されればたちまち『可愛い』という賞賛の嵐だろう。
「いいわね、愛嬌。正解に近いわよ。そういうところを含めて……まとめて言うとどうかしら、ソルセ」
「はい。そうですね……それは」
少しだけ、ソルセの中にぴりりと走るものがあった。この問いを、ジアンがソルセに与えたのは偶然なのか必然なのか。額の際あたりが、じわりと熱くなるのを感じながら、意を決して口を開いた。
「愛される、親しまれるアイドルとしての……人間性、でしょうか」
ソルセの答えを聞き、ジアンは満足げに頷く。
そうして自ら、背後のホワイトボードに向けてマーカーを走らせた。
「第二ミッションは――パーソナル審査よ」
練習生たちがラウンジに集うと、そこにはTシャツにスキニーパンツというラフな出で立ちのジアンが待ち構えていた。
「みんな、第一ミッション素晴らしかったわ」
ラウンジに入室する練習生に向かって、ジアンは惜しげもなく拍手を送る。歌姫と呼ばれていた彼女の称賛は、練習生たちに自信と誇りを与えてくれた。
「ミッションを通して、あなたたちがどのような姿勢でステージに立って、どのように魅せてくれるのか……私たちプロデューサー陣にはもちろん、視聴者の皆様にも伝わったことでしょう」
並んで立つ練習生ひとりひとりの顔を見渡しながら、ジアンは言う。まるで、目の高さを合わせて語りかけるようだ。さほど年が離れているというわけでもないのに、母のような安心感があった。
「けれど、アイドルに必要なものはダンスと歌だけではないわ」
ジアンは微笑みながら、細い指先をすっと一本立てる。
「もう一つ、とても大切なものがあるの。それはなにかしら? ……そうね、ダファンはどう思う?」
ダファンは突然名指しされ、悩んだ顔をしながら口を開いた。
「ええと……表情管理、ですかね」
元俳優のチャン・ダファンらしい答えだ。と、練習生たちは頷く。
踊り、歌いながら、その曲やリズム、雰囲気に合わせた表情をするのはとても難しい。慣れるまではパフォーマンスにいっぱいいっぱいになってしまい、後回しにしがちなものだ。或いは疲労などで気が回らなくなってしまうことが多い。
「ええ、もちろんそれも大切よ。楽曲を演じるといえばいいかしら。ダファンの表情管理は、第一ミッションでもひときわ優れていたわね」
思いがけず褒められ、ダファンはありがとうございます……と照れくさそうに頭を掻いた。
「けれどそれより……そうね、パフォーマンス以前に、初歩的なことでなにかない? ベクギュ」
「うーん、愛嬌?」
差されたベクギュは悪戯っぽく首を傾げる。さすが、すでに視聴者から『ブラックマンネ』の称号を授けられた高校生練習生だ。マンネとは末っ子という意味で、転じてグループ内の最年少者のことを差す。そしてそこにブラックとつけば、おのずと言葉の雰囲気は分かるだろう。
あざとさが全開ながら、憎めない雰囲気をまとっている。カメラで抜かれたこの姿も、配信されればたちまち『可愛い』という賞賛の嵐だろう。
「いいわね、愛嬌。正解に近いわよ。そういうところを含めて……まとめて言うとどうかしら、ソルセ」
「はい。そうですね……それは」
少しだけ、ソルセの中にぴりりと走るものがあった。この問いを、ジアンがソルセに与えたのは偶然なのか必然なのか。額の際あたりが、じわりと熱くなるのを感じながら、意を決して口を開いた。
「愛される、親しまれるアイドルとしての……人間性、でしょうか」
ソルセの答えを聞き、ジアンは満足げに頷く。
そうして自ら、背後のホワイトボードに向けてマーカーを走らせた。
「第二ミッションは――パーソナル審査よ」
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