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3,蜘蛛の罠②
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ふと、ソルセの視界にジュヌの影が深く重なる。
「ソルセさん……ほんとに、綺麗だ……」
じ、とジュヌの視線が相貌を離れない。
いまや彼にとってソルセは、蜘蛛の糸に仕掛けられた甘やかな花だ。それが罠とも知らずに甘美な蜜を吸おうと、ふらふらと飛ぶ蝶になったジュヌは、やわらかく頬を撫でる。
「……ふ、ふふ。ジュヌ、もしかして俺の顔が好き?」
「うん……好きみたい。ずっと見ていられそうです」
頬に触れる手のひらに指先を重ね、ソルセが擦り寄るとジュヌの唇が微かに開いた。
ジュヌの視線は、執拗にソルセのかんばせに落ちている。
「そんなに見つめられたら、穴があいちゃうよ」
遠くから熱い視線を浴びせられることは、アイドルとしては当然多多あった。しかし、さすがにここまでの至近距離から、こんなにも見つめられることには慣れなくて、ソルセはわずかに身じろいだ。
これからの行為にも恥じらいは生まれるだろうが、なんにもしない注視というのも、そわそわとして気恥ずかしいものだと知る。
「……逃げないで」
「いやいや、いくらなんでも見すぎだって……んっ」
首筋にジュヌの唇が、ふいに落とされる。啄むような触れ方に、じわじわと皮膚が甘く痺れていく。
「はあ……あ」
思いがけない声が自分の喉から零れる。こんな風に触れられると、こんな風に喘いでしまうものなのか。未知の感覚に高揚感が増した。
「気持ちいい……」
ジュヌの背中に手を回し、その背骨の筋に指先を立てる。一気に愛撫はせず、焦らすようにゆっくりと指の腹を滑らせていく。
重なる体の中心で、硬くなった互いの雄が布越しにぶつかる。それに気付いたジュヌはソルセの皮膚に吸い付きながら、腰を揺らした。
「んっ……ジュヌ、あぁ」
昂ぶりが触れ合い、下腹部に熱が集まる。着衣のままとはいえ、いや着衣だからこそか、やけに気持ちが熱くなった。
「待って服、脱い……ふあっ」
それまでただ愛撫するように大人しかったジュヌは、突如ソルセの膝裏に手を添えると、ぐいと腰を持ち上げた。
布を隔てた下半身を、ぐいぐいと擦り上げながら揺らす。
「あっ、ん、……ひあぁっ」
まだ挿入すらしていないが、抜き挿しされるような体の動きが快楽を深めていく。
なにも考えられない。頭の中が、まだ出会ったばかりの、目の前のジュヌのことで埋まっていく。このまま、淫らに流されてしまいたい。
「はっ、は、ソルセさ……っ」
「あぁっ、あ、あ――! 」
全身が発熱する。足の爪先が無意識のうちにぴんと伸びて震えた。
ジュヌの体が密合して、その重さに意外な心地よさを覚える。
「ああ、はあ……もう、ほら汚れちゃった」
ほぼ同時に果てたことを徐々に理解する。下着が濡れて気持ちが悪い。
「はぁっ、すみません……ソルセさんが色っぽくて、つい」
そんな風に言われて嬉しい男がいるかものか。しかしソルセの中に不思議な感情が芽生えていた。いやこれは、アイドルとして黄色い歓声を浴びていた、あの瞬間に感じたものに近い。
誰かに愛されること――その幸福感に似ている。
「……おだてたって何も出ないからね。あとで服もパンツも、君が洗ってよ」
ベルトを外し、ウエストのボタンとファスナーを解く。そこに注がれるジュヌの熱い視線に、背筋にぞくぞくと快感に似たものが走った。
「まあそれは……あとでいいから、ね」
そうしてまた、彼らはベッドのスプリングを軋ませる。
「ソルセさん……ほんとに、綺麗だ……」
じ、とジュヌの視線が相貌を離れない。
いまや彼にとってソルセは、蜘蛛の糸に仕掛けられた甘やかな花だ。それが罠とも知らずに甘美な蜜を吸おうと、ふらふらと飛ぶ蝶になったジュヌは、やわらかく頬を撫でる。
「……ふ、ふふ。ジュヌ、もしかして俺の顔が好き?」
「うん……好きみたい。ずっと見ていられそうです」
頬に触れる手のひらに指先を重ね、ソルセが擦り寄るとジュヌの唇が微かに開いた。
ジュヌの視線は、執拗にソルセのかんばせに落ちている。
「そんなに見つめられたら、穴があいちゃうよ」
遠くから熱い視線を浴びせられることは、アイドルとしては当然多多あった。しかし、さすがにここまでの至近距離から、こんなにも見つめられることには慣れなくて、ソルセはわずかに身じろいだ。
これからの行為にも恥じらいは生まれるだろうが、なんにもしない注視というのも、そわそわとして気恥ずかしいものだと知る。
「……逃げないで」
「いやいや、いくらなんでも見すぎだって……んっ」
首筋にジュヌの唇が、ふいに落とされる。啄むような触れ方に、じわじわと皮膚が甘く痺れていく。
「はあ……あ」
思いがけない声が自分の喉から零れる。こんな風に触れられると、こんな風に喘いでしまうものなのか。未知の感覚に高揚感が増した。
「気持ちいい……」
ジュヌの背中に手を回し、その背骨の筋に指先を立てる。一気に愛撫はせず、焦らすようにゆっくりと指の腹を滑らせていく。
重なる体の中心で、硬くなった互いの雄が布越しにぶつかる。それに気付いたジュヌはソルセの皮膚に吸い付きながら、腰を揺らした。
「んっ……ジュヌ、あぁ」
昂ぶりが触れ合い、下腹部に熱が集まる。着衣のままとはいえ、いや着衣だからこそか、やけに気持ちが熱くなった。
「待って服、脱い……ふあっ」
それまでただ愛撫するように大人しかったジュヌは、突如ソルセの膝裏に手を添えると、ぐいと腰を持ち上げた。
布を隔てた下半身を、ぐいぐいと擦り上げながら揺らす。
「あっ、ん、……ひあぁっ」
まだ挿入すらしていないが、抜き挿しされるような体の動きが快楽を深めていく。
なにも考えられない。頭の中が、まだ出会ったばかりの、目の前のジュヌのことで埋まっていく。このまま、淫らに流されてしまいたい。
「はっ、は、ソルセさ……っ」
「あぁっ、あ、あ――! 」
全身が発熱する。足の爪先が無意識のうちにぴんと伸びて震えた。
ジュヌの体が密合して、その重さに意外な心地よさを覚える。
「ああ、はあ……もう、ほら汚れちゃった」
ほぼ同時に果てたことを徐々に理解する。下着が濡れて気持ちが悪い。
「はぁっ、すみません……ソルセさんが色っぽくて、つい」
そんな風に言われて嬉しい男がいるかものか。しかしソルセの中に不思議な感情が芽生えていた。いやこれは、アイドルとして黄色い歓声を浴びていた、あの瞬間に感じたものに近い。
誰かに愛されること――その幸福感に似ている。
「……おだてたって何も出ないからね。あとで服もパンツも、君が洗ってよ」
ベルトを外し、ウエストのボタンとファスナーを解く。そこに注がれるジュヌの熱い視線に、背筋にぞくぞくと快感に似たものが走った。
「まあそれは……あとでいいから、ね」
そうしてまた、彼らはベッドのスプリングを軋ませる。
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