左遷太守と不遜補佐 ―柳は青、花は赤―

佐竹梅子

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赤髪の花婿・15

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「なにするんですっ」
「なんだよ、まだ乾いてないんじゃん」
「血のにおいと得物だけでって、あなたどれだけ自分の勘で生きてるんですか。あの刃物だって、わたしが調達したものだとしたらどうす――」

月明かりを背にした赤伯の輪郭が覆い被さり、まくし立てていた唇がふさがれる。
柔らかな感触。二人にとってそれは初めてのものだった。

「……それだけじゃない、青明を信じてたから」

その唇は触れるだけで離れていくと、赤伯は青明の手を取る。

「もう寝よう、髪、結ばなくて……いいだろ」
「…………顔、真っ赤じゃないですか」
「なっ……う、うるさい!」

ばつの悪さを誤魔化すように、燭台の灯りを吹き消すと、勢いよく青明を横抱きにする。
そのまま寝台へ運ぶと赤伯は天蓋を落とした。包むように幕のかかった寝台は、まるで二人きりの世界だった。

「あっ、青明! 俺、どうしよう」
「今度はなんですか……」

抱きしめていた青明の両肩を掴むと、赤伯は慌てて起き上がった。
別段青明も気にはしていないのだが、どうにも緊張感に欠けるというか、雰囲気や情緒を作るのが下手というか。

けれど、そんなところも、また――。

「青明から、ちゃんと聞いてない……」
「は?」
「好きって、聞いてない……!」

薄明かりの中でも分かるほどに頬を染めた赤伯は、それでも青明を真っ直ぐに見つめている。
その言葉を期待して、待っているのだろう。そういうところで青明も素直になれればいいのだが、彼の場合、そうもいかないのだ。

「意外と、そういうこと気にされるんですね……」
「なんで」
「いえ、その……もっと、本能的に動かれる方だと」
「んん? それってなんか馬鹿にしてるよな!」
「そんなまさか……」

赤伯は子供っぽく頬を膨らませて迫る。

「……赤伯さま、もう一度ここに、いただけますか?」

青明はそう言いながら、自らの唇を指差した。
その様子が妙に艶っぽくて、思わず生唾を飲み込む。

「お、おう……」

瞼を閉じながらゆっくり唇を近づけると、柔らかな感触を押し付ける。
すると青明の唇が薄く開いて、温かな舌が赤伯の唇をたどった。

「んっ……!」

赤伯は一瞬目を見開いてから、腹の底からわきあがる衝動に任せてその唇に噛みついた。

「はっ……んん……」

たどたどしくも、熱情に溢れる口づけ。濡れた音と吐息だけが寝台に響く。

「ん……赤伯さま」
「どうした?」

まだ湿った黒髪を優しく撫でる。手入れの行き届いた絹糸のような触感が手の平に気持ち良い。

「……お慕い申し上げております」
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