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しおりを挟む「とりあえず、これで大丈夫……か?」
佐々木さんをガスメーターボックスに押し込んで鍵をかけた後、俺たちはしばらく息を潜めて様子をうかがった。
廊下に他の気配はない。
「……静かになったな」
安田がバットを肩にかけながら、ドアの隙間からそっと外を覗く。
「他に動いてるやつはいなさそうだ」
「今はな。でも、もうこのマンション内に感染者がいるのは確実だ」
斉藤が冷静に言う。
「今すぐ動くべきかは別として、俺たちがここにいつまでいられるかは分からなくなったな」
「でも、すぐに出るのはまだ早いだろ」
俺は玄関の鍵をしっかりとかけながら言った。
「食料もあるし、水もまだ十分ある。今、外に出るのはリスクが高すぎる」
「確かに……外の状況もまだ安定してないしな」
高橋が静かに頷く。
「とりあえず、マンション内の動きを監視しながら、情報を集めよう」
斉藤の言葉に、全員が頷いた。
俺はスマホを取り出し、マンションの住人向け掲示板を再びチェックした。
「管理人室の人、まだ応答できる?」
「上の階の人、大丈夫ですか? さっき悲鳴が聞こえたけど……」
「もう外に出るのは危険かもしれません」
「住人たちはまだ様子を見てるな……」
「そりゃ、こんな状況じゃ部屋から出ようとは思わんよな」
安田がスマホを覗き込みながら言う。
「でも、誰が感染してるか分からない以上、今後は内部で争いが起こる可能性もある」
「だな……」
その時、俺のスマホが震えた。藤木からのメッセージだ。
「ショッピングモール、ますます緊張感が増してきた」
「またか……」
俺はメッセージを開き、詳細を確認する。
「橘の支配が強まってる。物資管理がさらに厳しくなって、反対意見を出したやつが睨まれるようになってきた」
「……そろそろヤバいな」
俺は短く返信を送る。
「お前はどうする?」
しばらくして、藤木から返事がきた。
「まだ決めてない。でも、このままだとまずい気がする」
「こっちもマンション内で感染者が出た。まだすぐに出るわけじゃないが、いずれ考えないといけないかもしれない」
「……分かった。お互い気をつけよう」
俺はスマホを置き、息をついた。
「どうだった?」
斉藤が尋ねる。
「ショッピングモールも、そろそろ危なくなってきてる。橘の支配が強まりすぎてるみたいだ」
「独裁ってやつか」
安田が苦笑した。
「人間ってのは、物資が不足すると途端に殺伐とするからな」
「それなら、俺たちはどうする?」
高橋が低い声で尋ねる。
「……しばらくはここにいる。だけど、今後のために別の選択肢も考えておくべきだ」
俺の言葉に、全員が無言で頷いた。
「とりあえず、掲示板とかで他に避難場所がないか探ってみるわ」
安田がスマホを開く。
「頼む。あと、マンション内の動きも注意しておいたほうがいいな」
「だな……」
俺たちはそれぞれの持ち場につき、次の一手を考え始めた。
まだマンションは持つかもしれない。
でも、もう確実に安全とは言えなくなってきている。
外の世界がどうなっているのか、俺たちはまだ知らなかった。
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