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しおりを挟む学園の庭でジュリアがセリーヌを見つけたとき、その親友の顔には明らかな疲れが浮かんでいた。普段は気丈に振る舞うセリーヌが、今日に限って肩を落とし、目元にはどこか翳りがある。
「セリーヌ、どうしたの?何かあった?」
ジュリアが心配そうに声をかけると、セリーヌは少し迷った後、ため息とともに口を開いた。
「……もう疲れてしまったの。アラン様とのこと……話し合おうとしても、何も変わらない。」
普段の彼女なら弱音を吐くことなどほとんどない。だからこそ、ジュリアは親友の本当の苦しみを感じ取り、その手をぎゅっと握った。
「ねえ、今日は私の家に来ない?ここじゃ落ち着いて話せないし、美味しいお菓子でも食べながらゆっくりしようよ。」
「でも、そんな迷惑をかけるなんて……」
「迷惑だなんて言わないでよ!私は親友でしょ?困ったときくらい、頼ってくれなくちゃ。」
ジュリアの明るい笑顔に、セリーヌは少しだけ気が楽になった。結局、彼女の提案に甘えることにした。
ジュリアの家に到着すると、セリーヌはその温かい雰囲気にほっと息をついた。リヴィエール家の格式ある静けさとは違い、ルフェーヴル家のリビングは明るく活気に満ちている。ジュリアは手際よく紅茶を淹れると、小さな焼き菓子をセリーヌの前に並べた。
「さあ、何でも話して。今のセリーヌには、話を聞いてくれる人が必要だと思うの。」
セリーヌは少しの間、カップを見つめていたが、やがて小さな声で語り始めた。アランとの馬車の中でのやり取りや、彼の冷たい態度。それに対する自分の孤独感や不安を、ぽつぽつと打ち明けていった。
ジュリアは真剣に耳を傾けながらも、時折優しい言葉を挟み、セリーヌの気持ちをほぐそうとした。
「それってさ、彼が不器用なのか、それとも意図的に距離を置いてるのか……正直、どっちだろうね?」
「……どちらなのか、もう分からないの。どれだけ話しても、彼の心に届いている気がしない。」
セリーヌは肩を落としたが、ジュリアはニッと笑った。
「まあ、そういう時は気にしすぎないのが一番よ。彼の態度に悩むのも疲れるでしょ?今日はとにかく楽しい話だけしましょ!」
ジュリアの明るさに、セリーヌは自然と微笑みを浮かべた。親友の存在が、彼女の心に少しずつ光を灯していく。
そんな時、リビングの扉が開き、ジュリアの兄エドモン・ルフェーヴルが顔を出した。
「おや、セリーヌ嬢が来ていたとは。君たち二人だけで楽しんでいたのかい?」
エドモンの穏やかな声に、ジュリアが笑いながら手を振った。
「お兄様、遅いわよ!セリーヌと二人で素敵な女子会してたのに、あなたが入ってきて台無しじゃない。」
「それはすまないね。でも、二人の楽しい時間に混ざらせてもらえれば、僕も幸せだ。」
エドモンは柔らかい笑顔でセリーヌを見やった。
「セリーヌ嬢、今日は妹が君を引っ張り出してきたようだね。どうか気を楽にして楽しんでくれ。」
その言葉に、セリーヌは少し照れながらも「ありがとうございます」と礼を述べた。
エドモンは軽口を叩くジュリアに調子を合わせながらも、適度にセリーヌに話を振り、三人の間に和やかな空気が流れた。
いつの間にか笑い声が絶えない時間になり、セリーヌの表情も次第に柔らかくなっていた。エドモンとジュリアの絶妙な掛け合いが、彼女の心を軽くしてくれる。
「セリーヌ、今度はもっとゆっくり遊びに来てね。」
帰り際、ジュリアがそう言って手を振ると、セリーヌは微笑みながら頷いた。その帰り道、彼女の胸にはほんの少しだけ前向きな気持ちが生まれていた。
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