脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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ふたりの力作

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タフィーちゃんは広場の中央にそびえるチョコレートのお城を満足げに見上げると、ふと視線を広場の周囲に向けた。そして再びぷるっと震え、チョコレートブロックを生み出し始める。今度は、広場を囲むようにいくつかの小さなお菓子の家を作るつもりらしい。

メリーちゃんもタフィーちゃんの意図を察し、ふわふわ毛から砂糖菓子やカラフルなキャンディーを次々と取り出した。そしてタフィーちゃんが積み上げるチョコレートブロックの壁に、カラフルな装飾を丁寧に加えていく。

まず作り上げたのは、赤い砂糖菓子で屋根を飾った可愛いお菓子の家。窓枠には白いアイシングを使い、ドアにはチョコレートプレートで作った看板が付けられている。二匹は「次はこっち!」とばかりに別の場所に取りかかり、今度はピンク色のキャンディー屋根を持つ家を完成させた。

こうして次々と生まれ変わる広場。お城を囲むようにして並ぶお菓子の家々は、どれも個性豊かで甘い香りに満ちている。最後にタフィーちゃんが広場の中心に砂糖菓子でできた道しるべを立て、満足そうにぷるぷると震えた。

翌日、秘密基地でポーション作りに励んでいたリディアのもとに、メリーちゃんとタフィーちゃんがやってきた。タフィーちゃんはぷるぷると跳ねてリディアの足元を叩き、メリーちゃんは「メェ!」と力強く鳴く。

「どうしたの? 二人ともそんなに元気いっぱいで!」
リディアは不思議そうに二匹を見つめたが、すぐに冒険のお誘いだと気づいた。

ふわふわ毛を膨らませたメリーちゃんが「ついてきて!」と言わんばかりにリディアを誘い、タフィーちゃんも道案内をするように跳ねながら秘密基地を出ていく。

廃墟の街にたどり着いたリディアは、その景色に思わず目を丸くした。

「ここ……すごい! いつの間にこんなふうに……!」

広場の中央にはチョコレートのお城が堂々と立ち、その周りには可愛いお菓子の家々が並んでいる。道しるべも砂糖菓子でできており、どこを見ても夢のような光景が広がっていた。

「二人でこんなに素敵な場所を作ったの?」
リディアは驚きと感動に満ちた表情で二匹に駆け寄り、メリーちゃんのふわふわ毛に顔を埋める。「メェ!」タフィーちゃんもぷるぷると跳ねながら嬉しそうに甘い香りを漂わせている。

「ありがとう! 本当に素敵だよ。次はここでお菓子の宴をしようね!」

二匹に囲まれながらリディアは心からの感謝を伝え、甘い香りに包まれた新しい冒険の予感に胸を躍らせた。


甘い香りに包まれながら、リディアはうーん、と考えていた。メリーちゃんとタフィーちゃんの力作である、お菓子の街。夢のように可愛いその場所は、期間限定のものなのだ。

「ふたりが一生懸命作ったこの街だけど、全部がお菓子でできてるから、いつかはなくなっちゃうよね……」
リディアは顎に手を当てて小さく呟いた。メリーちゃんが「メェ」と小さく鳴き、タフィーちゃんはぷるぷると体を揺らして反応する。

「でもだからこそ! みんなで思いきり楽しむべきだよね!」
リディアはぱっと顔を上げて笑顔を見せた。
「そうと決まれば準備開始だよ! お菓子の宴に必要なものを集めなきゃ!」

リディアはふわふわ毛を揺らすメリーちゃんと、跳ね回るタフィーちゃんを連れて街へと向かった。大きなひよこ柄の看板を持ち、街の広場で人々に声をかけ始める。

「お菓子の街へようこそ! とびきり甘くて楽しい場所があるんです! みんなでお菓子の宴を楽しみませんか?」
リディアの元気な声に、人々は次第に足を止めた。子どもたちは「お菓子の街だって!」と目を輝かせ、大人たちも興味津々で耳を傾ける。

やがて人々が集まり始めると、リディアは胸を張って「準備は完璧!」と笑いかけた。

「それにね、アラニスも来るんだよ!」
そう言うと、すでに露店を畳み始めていたアラニスがくすっと笑いながらやって来た。
「リディアに誘われたら断れないわね。さぁ、私も一緒に行くわ」

アラニスの言葉に集まった人々も一層期待を膨らませる。リディアは、笑顔で一行を先導しながら廃墟の街への道を歩き出した。彼女の後ろには子どもや大人がずらりと並び、楽しげなざわめきが広がっていく。

「ここだよ!」
リディアが声を張り上げると、目の前にはメリーちゃんとタフィーちゃんが作り上げたお菓子の街が広がった。広場にそびえるチョコレートのお城、カラフルな砂糖菓子の家々、甘い香りで満たされた道しるべ……全てが夢のような光景だ。

「わぁ……!」
集まった人々が一斉に歓声を上げ、子どもたちは駆け足でお菓子の家に向かい始めた。大人たちもその美しさに見とれ、感嘆の声を漏らしている。

「さぁ、みんなで楽しもう!」
リディアは笑顔で叫びながら、ふわふわ毛から次々とテーブルや椅子を取り出した。丸いテーブル、星型のテーブル、ハート型の椅子――どれもお菓子の街にぴったりな愛らしいデザインだ。

「ここでお菓子を広げて、一緒に食べましょう!」
リディアの声に、人々はテーブルを囲んで座り始め、宴の準備が進んでいった。甘い香りと笑い声が街に満ちていき、お菓子の街は本当に夢の楽園となっていった。
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