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26 白と黒
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「綺麗な黒髪だね!これ、おまけだよ」
「ありがとうございます」
「グウェイン様、おかえりなさい」
「あぁ、ただいま。また宜しく頼むよ。さぁ、次に行こうか、アンバー」
「はい」
色々あった学生生活1年目。
2年目は平穏な学生生活。
3年目はバタバタの学生生活だった。
早いもので学生生活も後半年で終わりを迎える─と言うところで、ウィル様とグウェイン様から、卒業後は俺達と一緒に竜王国に来ないか?とお誘いを受けた。と言うのも、私が人間や獣人よりも寿命が長い上、黒色に対する偏見が一切無いから竜王国が住みやすいだろうと言う事だった。コユキと離れるのは寂しいところだけど、それよりも……
ーグウェイン様と離れるのはもっと寂しいかもー
と、その時ようやく自分の気持ちに気付いた。グウェイン様は表向き27歳で、私は18歳。実際には300と400で100程の年の差がある。見た目は私の方が若いけど、グウェイン様が、私をどう思っているのか─なんて悩んでいるうちに、卒業迄3ヶ月となった頃
「父上と母上がアンバーに会いたがっているんだ。卒業後の準備も兼ねて、1週間程竜王国に来てくれないか?」
「はい!?」
ウィル様の父上と母上と言うのは、竜王国の竜王と竜王妃と言う事だ。断れる訳がない。
そんな訳で、昨日、ウィル様とグウェイン様と一緒に竜王国へとやって来た。空を飛んで。そして、竜王国に着いたのが夜で、今日はランチがてらに竜王国の街に出てきて、グウェイン様の案内で買い物をしている。夜には、竜王両陛下に謁見して、そのまま夕食を共にする事になっている。
「次はこの店だ」
そう言ってやって来たのは宝石店だった。
「あ、グウェイン様、お待ちしてました。まぁ!そちらが……なんて素敵な黒髪なんでしょう!商品の方が見劣りしてしまいそうですね」
「だろう?本当に綺麗な黒髪なんだ」
「あ…ありがとうございます」
本当に竜王国では、黒色に対しての偏見が無くて驚いた。偏見どころか、どこに行っても褒められるのだ。しかも、何か買おうとすれば、オマケをくれたりもする。
「こちらです。手に取ってご覧下さい」
「うん………いつもながら良い仕上がりだな。アンバー」
「はい?」
店員が持って来たのは、白色を基調としたネックレスとピアスで、黒色の宝石も埋められている。シンプルなデザインだけど、ついつい目がいってしまう素敵なものだ。
「俺からのプレゼント」
「え!?」
「後ろ向いてくれる?」
「はい!え???」
後ろを向くと、グウェイン様がネックレスを着けてくた。
「まぁ!お似合いですよ!」
「うん。白が映えて良いね」
「白と………黒………まるで……」
ーグウェイン様と私の色みたいー
なんて思ったら駄目だよね!?自意識過剰過ぎるよね!?
「本当は青か紺碧色の石も入れたかったんだけど、ヤリ過ぎないように、今回は我慢したんだ」
「な!?それは────」
「そう言う事だ」
と、グウェイン様が微笑めば、店内から黄色い悲鳴が飛び交った。
*グウェイン視点*
「卒業迄に一度会わせろ」
と、兄上である竜王に言われたのは、ウィルとアンバーが3年生になってすぐの事だった。ウィルからアンバーの存在を聞いていたんだろう。独身街道まっしぐらな俺に、ようやく現れた女の子──女性だ。兄上が放置する筈がない。まぁ、俺としてもアンバーを竜王国に連れて来る事に異論は無いし、先に竜王国を固めておくのも良いかもしれない。それに──
ーまた、黒色に自信を持てるようになれば良いー
竜王国での黒色は、富と平和と力の象徴でもある。黒狐と同じ様に幸運をもたらす色でもある。そうでなくても、アンバーの黒髪は綺麗だし、琥珀色の瞳も綺麗だし、何よりアンバーは可愛い。まさかの100歳年上だったのには驚きだったけど、寧ろ好都合だった。表立っては未成年だけど、既に成人している。どこか落ち着いている─とは思っていたけど。
俺の手からお菓子を口にする姿も可愛い。アンバーは知らないようだけど、竜人の給餌行為は愛情表現の一つで、それを口にするのは、その愛情を受け取ったと言う意味になる。なんの抵抗もなく受け入れたアンバーに、『大丈夫か?』と少し不安に思うところもあるが、本人が嫌がっている感じはなく、嬉しそうに食べているから問題はないだろう。
「となれば、後は……アクセサリーか?」
この俺が“独占欲の塊”のアクセサリーを作る日が来るとは思わなかった。俺の色の白色は、アンバーが身に着ければ映えるだろう。竜王国で黒と言えば竜王。白と言えば王弟を表す。竜王国に来たら直ぐにプレゼントできるようにしよう。
ー黒色で可愛いアンバーに、虫がつかないようにー
卒業前での滞在は王城になるだろう。でも、卒業後の滞在先は…大公として兄上からもらった邸だが、そこには帰らず、王城で過ごしていたから、使用人に任せっぱなしだった。
「放ったらかしにしていた邸を調えるか…」
アンバーに、竜王国を好きになってもらう為に。
「ありがとうございます」
「グウェイン様、おかえりなさい」
「あぁ、ただいま。また宜しく頼むよ。さぁ、次に行こうか、アンバー」
「はい」
色々あった学生生活1年目。
2年目は平穏な学生生活。
3年目はバタバタの学生生活だった。
早いもので学生生活も後半年で終わりを迎える─と言うところで、ウィル様とグウェイン様から、卒業後は俺達と一緒に竜王国に来ないか?とお誘いを受けた。と言うのも、私が人間や獣人よりも寿命が長い上、黒色に対する偏見が一切無いから竜王国が住みやすいだろうと言う事だった。コユキと離れるのは寂しいところだけど、それよりも……
ーグウェイン様と離れるのはもっと寂しいかもー
と、その時ようやく自分の気持ちに気付いた。グウェイン様は表向き27歳で、私は18歳。実際には300と400で100程の年の差がある。見た目は私の方が若いけど、グウェイン様が、私をどう思っているのか─なんて悩んでいるうちに、卒業迄3ヶ月となった頃
「父上と母上がアンバーに会いたがっているんだ。卒業後の準備も兼ねて、1週間程竜王国に来てくれないか?」
「はい!?」
ウィル様の父上と母上と言うのは、竜王国の竜王と竜王妃と言う事だ。断れる訳がない。
そんな訳で、昨日、ウィル様とグウェイン様と一緒に竜王国へとやって来た。空を飛んで。そして、竜王国に着いたのが夜で、今日はランチがてらに竜王国の街に出てきて、グウェイン様の案内で買い物をしている。夜には、竜王両陛下に謁見して、そのまま夕食を共にする事になっている。
「次はこの店だ」
そう言ってやって来たのは宝石店だった。
「あ、グウェイン様、お待ちしてました。まぁ!そちらが……なんて素敵な黒髪なんでしょう!商品の方が見劣りしてしまいそうですね」
「だろう?本当に綺麗な黒髪なんだ」
「あ…ありがとうございます」
本当に竜王国では、黒色に対しての偏見が無くて驚いた。偏見どころか、どこに行っても褒められるのだ。しかも、何か買おうとすれば、オマケをくれたりもする。
「こちらです。手に取ってご覧下さい」
「うん………いつもながら良い仕上がりだな。アンバー」
「はい?」
店員が持って来たのは、白色を基調としたネックレスとピアスで、黒色の宝石も埋められている。シンプルなデザインだけど、ついつい目がいってしまう素敵なものだ。
「俺からのプレゼント」
「え!?」
「後ろ向いてくれる?」
「はい!え???」
後ろを向くと、グウェイン様がネックレスを着けてくた。
「まぁ!お似合いですよ!」
「うん。白が映えて良いね」
「白と………黒………まるで……」
ーグウェイン様と私の色みたいー
なんて思ったら駄目だよね!?自意識過剰過ぎるよね!?
「本当は青か紺碧色の石も入れたかったんだけど、ヤリ過ぎないように、今回は我慢したんだ」
「な!?それは────」
「そう言う事だ」
と、グウェイン様が微笑めば、店内から黄色い悲鳴が飛び交った。
*グウェイン視点*
「卒業迄に一度会わせろ」
と、兄上である竜王に言われたのは、ウィルとアンバーが3年生になってすぐの事だった。ウィルからアンバーの存在を聞いていたんだろう。独身街道まっしぐらな俺に、ようやく現れた女の子──女性だ。兄上が放置する筈がない。まぁ、俺としてもアンバーを竜王国に連れて来る事に異論は無いし、先に竜王国を固めておくのも良いかもしれない。それに──
ーまた、黒色に自信を持てるようになれば良いー
竜王国での黒色は、富と平和と力の象徴でもある。黒狐と同じ様に幸運をもたらす色でもある。そうでなくても、アンバーの黒髪は綺麗だし、琥珀色の瞳も綺麗だし、何よりアンバーは可愛い。まさかの100歳年上だったのには驚きだったけど、寧ろ好都合だった。表立っては未成年だけど、既に成人している。どこか落ち着いている─とは思っていたけど。
俺の手からお菓子を口にする姿も可愛い。アンバーは知らないようだけど、竜人の給餌行為は愛情表現の一つで、それを口にするのは、その愛情を受け取ったと言う意味になる。なんの抵抗もなく受け入れたアンバーに、『大丈夫か?』と少し不安に思うところもあるが、本人が嫌がっている感じはなく、嬉しそうに食べているから問題はないだろう。
「となれば、後は……アクセサリーか?」
この俺が“独占欲の塊”のアクセサリーを作る日が来るとは思わなかった。俺の色の白色は、アンバーが身に着ければ映えるだろう。竜王国で黒と言えば竜王。白と言えば王弟を表す。竜王国に来たら直ぐにプレゼントできるようにしよう。
ー黒色で可愛いアンバーに、虫がつかないようにー
卒業前での滞在は王城になるだろう。でも、卒業後の滞在先は…大公として兄上からもらった邸だが、そこには帰らず、王城で過ごしていたから、使用人に任せっぱなしだった。
「放ったらかしにしていた邸を調えるか…」
アンバーに、竜王国を好きになってもらう為に。
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