魔力無しの黒色持ちの私だけど、(色んな意味で)きっちりお返しさせていただきます。

みん

文字の大きさ
上 下
1 / 29

1 不吉な色

しおりを挟む
『**も**と同じよ』
『**が私達を忘れただけ…』



『行かないで下さい…***』
『………**、**ごめんなさい……』

白色と金色が揺らめいている。それは、**には無い色であり、憧れの色でもあった。



『お前達だけは────』



それが、最期だった──








!いつまで寝ているの!?」
「──っ!ごめんなさい!」
のくせにゆっくり寝るなんて。さっさと起きて働きなさい!」
「はい!」

そう言ってバンッと大きな音を立てて扉を閉めて出て行ったのは、この邸の侍女長のメレーヌさん。
私はベッドから出て、急いで服を着替えて部屋から飛び出した。

ー懐かしい夢を見た気がするけど……ー

フルフルと頭を振る。

「今日も朝食は無し…だよね……」

それも慣れた。朝食抜きはよくある事だから。それに、午前中の仕事を済ませれば昼食は必ず食べられるから。

「うん。今日も1日頑張ろう」

そう自分に言い聞かせて、キュッと手を握りしめてから、私は急いで裏庭へと向かった。
私の午前中の仕事は洗濯だ。

ここは、ウェザリア王国のウェント伯爵家。
私は一応………そのウェント伯爵家の次女となっているけど、実際のところは使用人と言ったところだ。朝は早く起きて洗濯をする。殆どが1人でしないといけないから、午前中は洗濯で終わる。午後からは、邸や庭園の掃除をさせられる事もあれば、一応伯爵令嬢だから勉強をさせられる事もある。ただ、勉強も間違ったりすればをするから、勉強よりも掃除の方がマシだと思ってしまう。

「あら、アンバーじゃない」 
「……おはよう…ございます」

裏庭に向かう途中で、私に声を掛けて来たのはフランシーヌ。ウェント伯爵家の長女であり私の姉だ。金色に煌めく綺麗な髪にピンク色の瞳で、とても綺麗な顔立ちをしている。

「相変わらず暗い顔だな」

そう言ってニヤニヤと笑っているのはエイダン。ウェント伯爵家の長男で私の兄。この兄もまた、金色に水色の瞳でとても綺麗な顔立ちをしている。
そんな2人とは対象的に私は──

「長い黒色の髪なんて…見てるだけで気分が下がるわ。早く私達の視界から消えてくれる?」
「……失礼しました………」

ーわざわざ呼び止めたのはフランシーヌなのにー

私は軽く頭を下げてからその場を後にした。



そう、私は──真っ黒な髪に琥珀色の瞳で、兄と姉どころか父と母とも似ていない。私だけが違う色持ちなのだ。

ー血が繋がっていないから当然よねー



私が5歳頃の時、記憶を失った状態で倒れているところを、ウェント伯爵に拾われたのだ。この国で、不吉とされている黒色の髪の私を。


この国の神話にもなっている


母となる神様が、自身の数人の子達それぞれに世界を創らせた。そして、その子達もまたそれぞれの子達に国を創らせた。そのうちの一つがこの世界でありこの国であるウェザリア王国だ。そして、ウェザリア王国の他にも数ヶ国の神様となったのがアンブロンズ神様。その神様の元、この国は創られ平和な時間を過ごしていたが、そこへ、ある時、黒色の魔女が現れた。その黒色の魔女は強い魔力を持っていて、人々の助けとなるよう動いていたのだが、ある日、彼女は豹変して人々を虐げ始め、最後にはアンブロンズ神に手を掛けた。そして、アンブロンズ神は姿を隠してしまい、この世界に暫くの間混沌とした時代があったとされている。
最終的には、現在の国王の始祖となる騎士が魔女を打ち倒して、聖女がアンブロンズ神を目覚めさせ、またこの世界に平和が訪れた。

そんな神話があり、黒色は不吉な色とされている。そもそも、この国で黒色持ちは滅多に生まれない事もあり、極希に生まれる黒色持ちは更に忌避される存在となり迫害を受ける対象となった。




『黒色持ちだからと言って、その者全てが悪ではない』


と、黒色持ちに対する偏見を無くそうとする者が国王となったのは、200年程前の話だ。それは今現在の国王にも引き継がれているけど、そう簡単に人々の意識は変えられない。その為、黒色持ちが生まれると、良くてその子は隠され、最悪の場合捨てられたり、生まれなかった事にされたりもしていた。
それでは駄目だ─と、今から100年程前に出された政策が、“黒色持ち保護育成の為の補助金制度”だった。

黒色持ちが生まれ、国に申請すれば、黒色持ちを育てる為に国がお金を補助してくれるもので、それは実子は勿論の事、黒色持ちだと捨てられた子を保護して養子にした場合にも適応される事になった。

そう。それが、私なのだ。

ウェント伯爵が、不吉とされる黒色持ちの私を保護したのは、その補助金目当てだったのだ。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思うので、第二の人生を始めたい! P.S.逆ハーがついてきました。

三月べに
恋愛
 聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思う。だって、高校時代まで若返っているのだもの。  帰れないだって? じゃあ、このまま第二の人生スタートしよう!  衣食住を確保してもらっている城で、魔法の勉強をしていたら、あらら?  何故、逆ハーが出来上がったの?

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

これが普通なら、獣人と結婚したくないわ~王女様は復讐を始める~

黒鴉宙ニ
ファンタジー
「私には心から愛するテレサがいる。君のような偽りの愛とは違う、魂で繋がった番なのだ。君との婚約は破棄させていただこう!」 自身の成人を祝う誕生パーティーで婚約破棄を申し出た王子と婚約者と番と、それを見ていた第三者である他国の姫のお話。 全然関係ない第三者がおこなっていく復讐? そこまでざまぁ要素は強くないです。 最後まで書いているので更新をお待ちください。6話で完結の短編です。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

わたしはくじ引きで選ばれたにすぎない婚約者だったらしい

よーこ
恋愛
特に美しくもなく、賢くもなく、家柄はそこそこでしかない伯爵令嬢リリアーナは、婚約後六年経ったある日、婚約者である大好きな第二王子に自分が未来の王子妃として選ばれた理由を尋ねてみた。 王子の答えはこうだった。 「くじで引いた紙にリリアーナの名前が書かれていたから」 え、わたし、そんな取るに足らない存在でしかなかったの?! 思い出してみれば、今まで王子に「好きだ」みたいなことを言われたことがない。 ショックを受けたリリアーナは……。

処理中です...