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二度目の帰還

近況報告

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『これは、向こうの世界に普通にある“写真”と言うモノだけど…コレが、ウィステリア様と言う事は分かるわね?』

先ずは、説明する為に志乃様だけが写っている写真を見せる。

「あぁ、確かに。コレはウィステリア殿だな。ソックリに描けていると言うか、生き写しのようだな。」

こちら側の世界は魔法で発展しているが、交通手段が馬だったり、平民では井戸水を使ったりと、日本で言う昔ながらの生活スタイルで、写真などはなく、人物像は姿絵しかない。

「コレは、写したモノをそのまま記録に残すモノなの。それで──」

と、2枚目を差し出す。

「ルーファス!?」

その1枚を目にした瞬間、アレサンドルが声をあげ、その声につられたメイナードとデレクが写真を覗き込む。

「ルーファスと……リア?が…何故、このシャシンに一緒に?」

『これは、お前達3人とバーミリオンとアズールだけに知らせておくわ。意味は分かるわね?』

コクリ─と3人が頷いたのを確認した後、私はルーファスが千代様に掬われて向こう側で生きていると言う事を話した。

「───なら…ルーファスは…生きていると?それで……ウィステリア殿と……婚約していると?」

『ええ、そうよ。ルーファスは元気にしているわ。』

ー志乃様への溺愛ぶりと攻め具合が半端無い位にー

「そうか…良かった……」

アレサンドルは泣きそうな顔で笑っている。アレサンドルは人一倍、志乃様の事を気にしていたから、ホッとした─と言った感じなんだろう。

「なら……また、ルーファスに会えるのか?その…こっちに戻っては…」

確か、ルーファスとメイナードは幼馴染みだったか。

『それは不可能よ。ルーファスは、こちら側では命が途絶え掛けていたから、こちら側との繋がりを完璧に断ったの。今では、千代様の愛し子でもあるから、千代様の“許し”が無い限り、こちらに戻って来る事はないわ。千代様も、今回の事ではかなりキレているから、“許し”を与える事は無いと思うわ。』

「そう…か……会えないのは残念だけど……ルーファスが元気でリアと一緒なら…良かった。リアも、元気にしてる?もう、泣いてない?」

『ええ、ウィステリア様も元気だし、泣いてないわ。』

はいるけれどー

「なら……いっか。」

このメイナードも、志乃様には優しかった。

「キッカ殿、向こう側に戻る迄、少し時間をもらえますか?可能であれば……ルーファスとウィステリア殿にお祝いでも用意して渡して欲しいのですが……」

『良いわよデレク。私は……もう一人のエメラルド馬鹿女にも会いに行くから。そうね……1時間後にまたここに戻って来るわ。それで大丈夫かしら?』

「ありがとうございます。大丈夫です。」

スッと頭を下げた後、デレクはそのまま執務室から出て行き、メイナードもデレクの後を追うように出て行った。

「キッカ殿、エメラルド殿の所へは…1人の方が良いのか?」

『そうね、その方がありがたいけれど…』

「分かった、見張りは階下に下がらせておく。それと、あの塔ではは使えないから。」

『分かっているわ。じゃあ、行って来るわ。』







****


「──誰?」

鉄の柵の向こう側に、かつては美少女だと持て囃されていた聖女エメラルド─久保清香が居る。
もう聖女でもアイリーン様の愛し子でもない彼女の瞳は黒色。この馬鹿女も、ショートヘアになっている。

『少しは……自分の犯した罪を認めて反省したのかしら?』

「───罪?反省?何で?」

その目には影を宿しているようで、私を見ているようで見ていない─そんな目をしている。
もう、精神的に病んでいるのかもしれない。

『まぁ、それはどうでも良いわね。もともと期待などしていなかったから。ただね、一つだけ、お前にも知らせておこうかと思ってね……コレ……分かるかしら?』

と、柵越しに写真を見せる。

「───なっ!?」

ガシャンッ

一瞬にして目を大きく見開き、両手で鉄の柵を握り締めた。

「何で!何で!ルー様がウィステリアなんかと一緒に居るの!?ルー様は死んでなかったの!?死んでないなら、何で私に会いに来てくれないの!?」

ーあぁ、この馬鹿は、もう心が壊れているのかー

ルーファスからは拒絶され、アイリーン様からも見放されたと言うのに……いや、壊れてしまったのか。

『ルーファスがお前に会いに来る事など、万が一にも無いわ。ルーファスは、ウィステリア様と婚約し、結婚するのだから。』

「え?」

『あぁ、ひょっとしたら──先に子供ができても…おかしくは無いかもね?』

ー冗談でも、煽る為じゃなく、本気で…ー

「なっ!そんな事……絶対に許さない!」

バチンッ──

「きゃあっ!」馬鹿女は、慌てて鉄の柵から手を離す。口の悪い馬鹿女には、電流を流すのが良い。

え?この塔では魔法は使えないって?残念。私が使っているのは魔法ではなく、。だから、あの時、アレサンドルも“魔法使えない”と念押しして来たのだ。

『本当にお前は馬鹿のままね。お前の許しなんて必要無いわ。お前の許しがなくとも、あの2人は……とても幸せにしているから、お前も気にしなくて良いわよ。どうせ、お前はここで……朽ちていくだけだから。』

手を押さえて蹲っている馬鹿女。

少し位反省の色があれば、千代様も少し位は救いを与えたかもしれないが……その最後のチャンスも逃してしまった馬鹿女─久保清香は、もう二度とここから出る事はないだろう。

『それじゃあ、元気でね?』

私を睨み付けるように見て来る馬鹿女を一瞥した後、私はその塔を後にした。



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