71 / 82
二度目の帰還
お砂糖増量中?
しおりを挟む「それで……このピアスは、志乃に持っていて欲しいんだけど……」
「あ、そのピアス!」
ルーファスさんが持っていたのは、あの赤いピアスだった。
「このピアスと志乃の願いのお陰で、俺は死なずにすんだし、こっちの世界に来る事ができた。ありがとう。」
ーそうか。このピアスが……。だから、失くなっていたのか…ー
私は、素直にそのピアスを受け取る。
色々あったピアス。二度目の召喚の元となったピアスだけど、ルーファスさんを救えたのなら……良しとするしかないかなぁ?
「ルーファスさんが……無事で良かったです。それと、遅くなりましたけど……あの時は、助けてくれて、ありがとうございました。」
ペコリと頭を下げてお礼を言うと、「こちらこそ─だな」と、ルーファスさんはニッコリ微笑んだ。
それから暫く、千代様の空間で話をした後、『志乃、ルーファス、また遊びにいらっしゃい』と、千代様が手を振りながら見送ってくれて、私は菊花さんとルーファスさんの3人で地上へと戻って来た。
因みに、菊花さんは、独り暮らしをしている私の部屋の隣の部屋に住んでいる。
「菊花さんだけ狡くないか?」
「狡くないわ。私は、志乃様を護っているだけだもの!」
何故か、菊花さんとルーファスさんがバチバチと睨み合っている。
ー仲良し─になった?のかな?ー
暫く睨み合った後、ルーファスさんが「はぁ─」と溜め息を吐いた後、私の方へと向き直り
「次の土曜日は…空いてる?店を休みにしてるんだ。良かったら…ゆっくり話がしたい。」
「あ──はい。大丈夫です。私も…ゆっくり話がしたいです。」
「良かった。それじゃあ、土曜日の10時に迎えに来るから、家で待っててくれ。」
「はい。」
そう約束して、ルーファスさんはお店の近くにあると言う家に帰って行った。
翌日──
ルーファスさんは約束の時間通りにやって来た。
そのルーファスさんは、意外?にも、パーカーにデニムと言うラフな格好をしている─のに、どこからどう見てもイケメンモデルな人にしか見えない。
「車の免許までは、取れなかったから歩きだけど─」と言われてやって来たのは──
ルーファスさんのお家だった。
そのルーファスさんのお家は、ルーファスさんのお店の裏側にあり、L字型になった平屋の戸建てだった。
平屋の理由は「向こうの世界ででも、階段の昇り降りは面倒だったから」だそうだ。
案内されたのはリビングで、そこにはソファとローテブルが置かれていてテレビもあり、こちらの世界では極々普通のリビングだ。
「座って待ってて」と言われて待っていると、甘い匂いがしてきて、暫くすると、ルーファスさんがパンケーキを持ってリビングに戻って来た。
「イチコやニコみたいにうまくは作れないんだけど…」
とテーブルの上に置かれたパンケーキは、普通にお店に出せるよね!?位のレベルのモノだった。「ありがとうございます」とお礼を言ってから、それを口にすると、それはやっぱりあのパンケーキだった。
「……美味しい…です。」
「なら良かった。」
フワリと優しく微笑むルーファスさんも、瞳の色が黒いだけで、以前と全く変わらない。
ー本当に、あのルーファスさんなんだー
「……志乃」
ルーファスさんは、少し困ったように笑いながら、テーブル越しに手を伸ばし、私の頬に触れた。
どうやら、私はまた泣いてしまっているらしい。本当に、最近は涙腺が緩みっぱなしで困る。
「あの、すみません。何と言うか…本当にルーファスさんなんだなぁ…と思ったら安心して……」
「志乃、そっちに行っても良い?」
「は……い」
横に座られるのは緊張するけど…近くに居られるのは、素直に嬉しいから───
なんて、思ってたんだけど
「えっと?」
ルーファスさんが座ったのは私の横ではなく、後ろだった。「ソファの下に座ってくれる?」と言われて素直にフカフカの絨毯の上に腰を下ろすと、私とソファの間にルーファスさんが入り込んで来た。
バックハグ状態──である。
お腹に手を回されて、私の右肩にルーファスさんの顔がある。
「近過ぎませんか?」
ー近過ぎるどころじゃないよね?ー
「───嫌だけど……嫌なら…離れる」
「──────」
「じゃあ、このままで……」
「ゔっ───」
と、更にキュッと抱き付かれた。
ー断れない自分が恨めしい!ー
恥ずかしいけど、本当にルーファスさんが居るんだと、実感できて安心しているのも確かだ。
ーよし、パンケーキを食べようー
「このパンケーキ、作るの大変だったんじゃないんですか?」
「うん。でも、このパンケーキだけは、ちゃんと作れるようになるまでイチコに特訓してもらったんだ。他のは…全然うまく作れなかったけど。」
「コレ、本当に美味しいです。あのパンケーキと同じで、見た目に裏切られまくりですよ。ふふっ」
ールーファスさんって、料理男子なんじゃない?ー
なんて、鼻歌が出る勢いでパンケーキを食べる。
「うん。前に、あのパンケーキを食べた時のウィステリアの顔が忘れられなくて。もう一度見たくて…俺だけに見せてもらいたくて、作れるように頑張ったんだ。」
「んぐ───っ!!」
ーこの距離でこのタイミングで砂糖口撃か!?ー
「──顔…見せて?見たいな………」
「…………」
ー彼氏居ない歴21年(+α2年)を苛めるのは止めて欲しいー
ググッと頑張って右肩の方に少しだけ顔を向けると、私をジッと見つめるルーファスさんと目があった。
「顔…真っ赤で可愛い」
「ゔ───っ」
ーやっぱり、眼科に連れて行こうか!ー
なんて思っていると、そのまま右側の頬に軽くキスをされた。
「ふわぁっ!?」
「あー…本当に……可愛い……どうしよう……」
ー“どうしよう”って何だ!?ソレは私のセリフだろう!!ー
魔力もない私が、元騎士のルーファスさんの腕から逃れる筈もなく、それから暫くの間はルーファスさんの腕の中に捕らわれたままとなったのは、言うまでもない。
66
お気に入りに追加
2,558
あなたにおすすめの小説
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
蜜柑
ファンタジー
レイラは生まれた時から強力な魔力を持っていたため、キアーラ王国の大神殿で大司教に聖女として育てられ、毎日祈りを捧げてきた。大司教は国政を乗っ取ろうと王太子とレイラの婚約を決めたが、王子は身元不明のレイラとは結婚できないと婚約破棄し、彼女を国外追放してしまう。
――え、もうお肉も食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?
追放される道中、偶然出会った冒険者――剣士ステファンと狼男のライガに同行することになったレイラは、冒険者ギルドに登録し、冒険者になる。もともと神殿での不自由な生活に飽き飽きしていたレイラは美味しいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。
その一方、魔物が出るようになったキアーラでは大司教がレイラの回収を画策し、レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。
※序盤1話が短めです(1000字弱)
※複数視点多めです。
※小説家になろうにも掲載しています。
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。
嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。
イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。
娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる