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二度目の召喚
語るに落ちる
しおりを挟む「あの湖に落ちたのは………ルーファスさんだから」
「ルー…ファスさまが……落ちた?」
エメラルド笑顔が一瞬にして消え去り、顔色も一気に悪くなるが、そんなエメラルドは無視して、私は話を続ける。
「私、忠告したよね?聖女と言うなら、それに見合った努力をするべきだって。その努力が、私を消す事だったの?」
「ねぇ……何で“女神の湖”に、ルーファス様が居たの!?まさか、またあんたと一緒に居たの!?だから……ルーファス様が魔犬に襲われたあんたを庇って湖に落ちたの!?落ちたルーファス様は、戻って来たの!?戻って来たのよね?ちゃんと、連れて帰って来たのよね!?」
ーやっぱりだ……エメラルドは知っていたんだー
「エメラルドは、“女神の湖”の事知ってたんだね。」
「そりゃあ知ってるわよ!あんたが還った後、4年もここで過ごしているんだもの。この世界の事は、あんたより知ってるわよ!」
それがどうしたの!?─みたいな顔をして、また私を見下しているけど……
「ねぇ、エメラルド……本当に…気付いてないんだね。ふふっ──」
「なっにを笑って────」
「ねぇ、エメラルド。私………ルーファスさんが落ちた湖が、“女神の湖”だ─なんて、一言も言ってないから。」
「───え?だって……あんたが襲われたのが………」
「魔犬に襲われた場所が、“女神の湖”の近く─だとも言ってないから。」
「──でも…」
「魔犬に襲われた─としか言ってないのに、どうして、私が襲われた場所が“女神の湖”の近くだったって分かったの?」
「でも……」
「この世界に詳しいエメラルドでも知らなかった?この王都だけでも、湖は大小合わせて10以上あるって。それに、“女神の湖”でなくても、湖に落ちれば死ぬ事だってある。それなのに、エメラルドは湖と聞いて“女神の湖”だと疑う事もなく私に問い詰めた。それって……やっぱり、知ってた──って事だよね?」
「───っ!!」
「ここに、私しか居ない───それが、エメラルド、貴方に訊かれた事の…答えよ。」
もし、ルーファスさんが戻って来れていたなら、きっと、今、この場所にルーファスさんも居ただろう。絶対、私をエメラルドと2人で会わせる事はしなかったと思うから。
「私が生きていて、ルーファスさんが居なくなって……どんな気持ち?あぁ、それとも、ルーファスさんが居なくなったのは、私のせいだってキレる?それとも、私が湖に落ちて死ねば良かったのに!って罵る?」
ギリッ──と、歯を食いしばるように口を歪ませて、私を睨み付けるエメラルドは、本当に醜い。
「そうよ………あんたが……またこっちに来たのが悪かったのよ!やっぱり、あんたなんかが居なかったら、ルーファス様だって────」
「────くぼきよか」
ヒュッ───と、エメラルドが息を呑んだ後、体を震わせてから、口を閉ざした。
「ねぇ、くぼきよかさん。おかしいと思わなかった?聖女なのに、聖女としての務めを果たさない、努力もしないのに、何故聖女のまま居られるのか。」
「………」
うまくは言えないけど、4年ぶりに会ったバーミリオンさんとアズールさんは、以前よりも確実に何かが成長しているな─と感じたのに対して、エメラルドからは4年前に感じられたモノが、感じられなくなっていた。そして、私は魔力の殆どを失っていた─と言う事は、自分の務めを怠ると、その能力が失われていく─と言う事じゃないんだろうか?
完全に無くならないのは、ソレを判断する女神のアイリーン様が眠りに就いているから。ひょっとしたら、この5年と言う期間は、アイリーン様の怠慢(…コホンッ…)だけじゃなく、召喚者達の“お試し期間”みたいなモノなのかもしれない。
ーそれならそれで、何となく……腹立たしかったりもするけどー
「ルーファスさんが言ってたよね?“1日数人しか祈りを捧げない”って。実際は……“数人にしか捧げられない”んじゃないの?」
ビクッ─と肩を揺らすエメラルド。言い返して来ないのは、言い返せられないから。
「くぼきよかさん、聖女としての能力は……まだ残っているの?」
「───少し……だけ………」
と言った後、ソロソロと手を動かして、自分の口を押さえつけて、カタカタと震えている。
「押さえつけても無駄だからね?貴方の真名を──掌握してるから。」
ずっと不思議だった。
私の事が嫌いなら……死んでも良いと思う程私の事を憎んでいるなら、自分の名前を取り戻した時、私の名前も思い出していただろうから、私を真名で掌握すれば良かったのだ。
勿論、真名を知っているからと言って、相手を簡単に掌握できる事は滅多にないけど、4年前のエメラルドの聖女の能力であれば、可能だっただろう。
それをしなかったと言う事は、聖女としての能力が落ちているか………自分の名は取り戻せたけど、他の3人の名は思い出せなかったか…だ。
私は、まだ一度もエメラルドから日本の名前で呼ばれた事はなかった。
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