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二度目の召喚
平穏な日常
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ブランが居なくなってから3ヶ月。
寂しいな…と思う事もあるが、そんな時はキッカさんとイチコとニコが狐になって一緒に寝てくれた。必ず、右側にイチコ、左側にニコ、足元にキッカさんが寝転び、三つの尻尾を必ず私の足にフサフサしながら眠る。それがまた───とても気持ち良い。
そして、ルーファスさんとは週に1、2回会っている。1度目にトラブルはあったものの、あれ以降は平穏な日々が続いている。
元凶だったエメラルドはと言うと、あの日以降は静かにしているとの事だった。
『嵐の前の静けさ─じゃなければ良いけどね』と言ったのはアレサンドル様。
ーフラグを立てるのは止めて下さいー
今日は、ルーファスさんと一緒に、王都の中心から少し外れた所にある観光スポットにやって来た。
「湖の色が……虹色に輝いてる───」
今迄も、この世界に来てから湖や川や海も見て来たけど、こんなファンタジー要素たっぷりの湖を目にしたのは初めてだ。
「ここは、“女神の湖”と呼ばれていて、この湖に女神アイリーン様が住んでいると言われているんだ。」
ーここには居ませんよ?ー
とは言わないでおこう。言っちゃいけないやつだよね?はい。この世界の人達の夢は壊しません。
とは言え、本当に不思議な湖な事には変わりない。どう言う原理で七色に輝いているのか──湖に近付いてソロソロと湖面を覗き込んで見ると、七色に輝いているのに、湖水は透明度が高く透き通っていて中で泳いでいる魚もよく見える。
ーわぁ…色んな色の魚が居る!ー
と、更に身を乗り出した時
「ぅえっ──」
お腹にルーファスさんの腕が回されて、そのままグイッと持ち上げられた。
「えっ!?持ち上げられたって…え!?」
「この湖に落ちたら最後、二度と上がっては来れない─と言われているんだ。」
焦る私を余所に、ルーファスさんはそのままの状態で、至って真面目に冷静に私に言い聞かせるように話し出した。
その昔、なんでも、この湖があまりにも綺麗で、この湖の中に入った人が居たそうだが、その人達は溺れたのかどうかも分からないが、そのまま湖底へと沈んでいき、それから二度と上がって来なかったそうだ。
ーえ、何ソレ!?ホラーじゃないの!?それなのに、“女神の湖”って矛盾してませんか!?ー
「な……なるほど?世界が違っても綺麗なモノには…やっぱり問題があるんですね?」
「少し意味は分からないが……そうだな。“見た目に惑わされるな”と言ったところだろうか?」
そう言って笑った後、ルーファスさんはソッと私を下ろして、お腹に回されていた腕も離してくれた。
「許可も無く抱き寄せてしまって…すまない。」
「──いえ、湖に落ちていたら大変でしたから……気にしないで下さい。」
そこに、下心が無い事は明白だ。
と言うか──
最近のルーファスさんは、私から一線引いている感じがするのは……気のせいではないだろう。
相変わらず、砂糖口撃と顔面攻撃は続いてはいるけど、必要以上に、私の領域?には入って来ない。
やっぱり、ルーファスさんは、私は元の世界に還ると思っているんだろう。事実、私は還ろうと思っているから。
ルーファスさんの事は…好き…なんだと思うけど、やっぱりどうしたって、私は家族を捨て切れないのだ。
ー何故、再召喚されてしまったんだろうー
されてなかったら、こんな思いをする事もなかったのになぁ。4年経っても忘れられてはなかったけど、少しずつ風化はしていた筈だ。
本当に、日本でもこの世界でも、ちっとも私には優しくない。やっぱり“顔面偏差値=運”なのかもしれない。
ー私、そろそろ女神様達に文句を言っても良いんじゃないかなぁ?ー
そう思うと自然とムッとした顔になっていたようで、「────ふっ」と、ルーファスさんが、思わず─と言った感じで吹き出した。
「何か面白い事でもありましたか?」
「いや……ウィステリア殿の……百面相が面白かっただけだ。」
「百面相………」
どうやら、色々考えていた事が顔に出ていたらしい。
「ゔー……すみません。少し……不思議な湖について色々考えてしまってました。」
「──そうか。」
私の誤魔化した答えに、ただただ笑うルーファスさんがいた。
そんな、ちょっぴりセンチメンタル?な私になってしまったけど、その湖の近くにあるカフェでケーキを食べれば………気分も上昇。何とも欲に素直な私である。
ーうんうん。ちゃんと楽しまないとねー
そのカフェを出てからは、その湖の近くにある庭園を見て回ってから王都へと戻って来た。
「ルーファスさん、今日もありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとう。」
いつも夕方にはお別れをする。最近では少し………少しだけ、この時が寂しいな─と思う自分が居るけど─
「次は、来週になると思うけど、また付き合ってもらえるかな?」
「はい、来週、また宜しくお願いします。連絡……待ってます。」
こうやって、次の約束ができると、また気分は上昇してしまうのだ。
本当に、単純な私だな─と思う今日この頃です。
寂しいな…と思う事もあるが、そんな時はキッカさんとイチコとニコが狐になって一緒に寝てくれた。必ず、右側にイチコ、左側にニコ、足元にキッカさんが寝転び、三つの尻尾を必ず私の足にフサフサしながら眠る。それがまた───とても気持ち良い。
そして、ルーファスさんとは週に1、2回会っている。1度目にトラブルはあったものの、あれ以降は平穏な日々が続いている。
元凶だったエメラルドはと言うと、あの日以降は静かにしているとの事だった。
『嵐の前の静けさ─じゃなければ良いけどね』と言ったのはアレサンドル様。
ーフラグを立てるのは止めて下さいー
今日は、ルーファスさんと一緒に、王都の中心から少し外れた所にある観光スポットにやって来た。
「湖の色が……虹色に輝いてる───」
今迄も、この世界に来てから湖や川や海も見て来たけど、こんなファンタジー要素たっぷりの湖を目にしたのは初めてだ。
「ここは、“女神の湖”と呼ばれていて、この湖に女神アイリーン様が住んでいると言われているんだ。」
ーここには居ませんよ?ー
とは言わないでおこう。言っちゃいけないやつだよね?はい。この世界の人達の夢は壊しません。
とは言え、本当に不思議な湖な事には変わりない。どう言う原理で七色に輝いているのか──湖に近付いてソロソロと湖面を覗き込んで見ると、七色に輝いているのに、湖水は透明度が高く透き通っていて中で泳いでいる魚もよく見える。
ーわぁ…色んな色の魚が居る!ー
と、更に身を乗り出した時
「ぅえっ──」
お腹にルーファスさんの腕が回されて、そのままグイッと持ち上げられた。
「えっ!?持ち上げられたって…え!?」
「この湖に落ちたら最後、二度と上がっては来れない─と言われているんだ。」
焦る私を余所に、ルーファスさんはそのままの状態で、至って真面目に冷静に私に言い聞かせるように話し出した。
その昔、なんでも、この湖があまりにも綺麗で、この湖の中に入った人が居たそうだが、その人達は溺れたのかどうかも分からないが、そのまま湖底へと沈んでいき、それから二度と上がって来なかったそうだ。
ーえ、何ソレ!?ホラーじゃないの!?それなのに、“女神の湖”って矛盾してませんか!?ー
「な……なるほど?世界が違っても綺麗なモノには…やっぱり問題があるんですね?」
「少し意味は分からないが……そうだな。“見た目に惑わされるな”と言ったところだろうか?」
そう言って笑った後、ルーファスさんはソッと私を下ろして、お腹に回されていた腕も離してくれた。
「許可も無く抱き寄せてしまって…すまない。」
「──いえ、湖に落ちていたら大変でしたから……気にしないで下さい。」
そこに、下心が無い事は明白だ。
と言うか──
最近のルーファスさんは、私から一線引いている感じがするのは……気のせいではないだろう。
相変わらず、砂糖口撃と顔面攻撃は続いてはいるけど、必要以上に、私の領域?には入って来ない。
やっぱり、ルーファスさんは、私は元の世界に還ると思っているんだろう。事実、私は還ろうと思っているから。
ルーファスさんの事は…好き…なんだと思うけど、やっぱりどうしたって、私は家族を捨て切れないのだ。
ー何故、再召喚されてしまったんだろうー
されてなかったら、こんな思いをする事もなかったのになぁ。4年経っても忘れられてはなかったけど、少しずつ風化はしていた筈だ。
本当に、日本でもこの世界でも、ちっとも私には優しくない。やっぱり“顔面偏差値=運”なのかもしれない。
ー私、そろそろ女神様達に文句を言っても良いんじゃないかなぁ?ー
そう思うと自然とムッとした顔になっていたようで、「────ふっ」と、ルーファスさんが、思わず─と言った感じで吹き出した。
「何か面白い事でもありましたか?」
「いや……ウィステリア殿の……百面相が面白かっただけだ。」
「百面相………」
どうやら、色々考えていた事が顔に出ていたらしい。
「ゔー……すみません。少し……不思議な湖について色々考えてしまってました。」
「──そうか。」
私の誤魔化した答えに、ただただ笑うルーファスさんがいた。
そんな、ちょっぴりセンチメンタル?な私になってしまったけど、その湖の近くにあるカフェでケーキを食べれば………気分も上昇。何とも欲に素直な私である。
ーうんうん。ちゃんと楽しまないとねー
そのカフェを出てからは、その湖の近くにある庭園を見て回ってから王都へと戻って来た。
「ルーファスさん、今日もありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとう。」
いつも夕方にはお別れをする。最近では少し………少しだけ、この時が寂しいな─と思う自分が居るけど─
「次は、来週になると思うけど、また付き合ってもらえるかな?」
「はい、来週、また宜しくお願いします。連絡……待ってます。」
こうやって、次の約束ができると、また気分は上昇してしまうのだ。
本当に、単純な私だな─と思う今日この頃です。
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