二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん

文字の大きさ
上 下
47 / 82
二度目の召喚

少しずつ、動き出す

しおりを挟む

甘味に罪はない。

私は、どうせ還れないなら、この1年はこの世界を楽しむ!と決めたから、エメラルドのお陰で嫌な事があったから─と言っても、パンケーキを諦める!と言う選択肢はなかった。

そのパンケーキ屋さんは、小さいお店で行列ができていて、私達も1時間程並んでようやく入店できた。




「ふわぁー」

目の前に出て来たパンケーキは、平たいモノではなく、厚みのあるフワフワのパンケーキで、少し蕩けた感じの生クリームが掛かっている。食べてみると、見た目に反して甘さ控えめ─どころか、ベリー系の味がするサッパリした感じの生クリームで、パンケーキ自体はフワフワではなく、もっっちりとしていた。

「色んな意味で裏切られた!」

勿論、良い意味で。見た目とのギャップ?で、脳がビックリしている。

「──くくっ…気に入ってもらえた?」
「はっ!─はい、すごく美味しいです!」

ルーファスさんが居る事を忘れていた─なんて事はありませんよ?

一緒に注文した紅茶も美味しい。と言うか、この世界の紅茶は、どの種類のモノも飲みやすくて美味しいモノばかりだ。この1年、キッカさんと食べ歩きならぬ、食べ転移するのもアリかもしれない。

「ルーファスさんは、甘い物は大丈夫なんですか?」

「あぁ。俺の両親が甘い物が好きで、よくウチの料理にも食後のデザートとして色々出て来るんだ。ここのパンケーキ屋も、母のお気に入りのお店なんだ。」

なるほど。てっきり、過去にデートで来たお店なのかと思ってたけど…。
確か…ルーファスさんは伯爵家の嫡男だったっけ?“ウチの 料理”なんてサラッと言うけど、フルコースで出て来たりするんだろうな…。

「デートにはお勧めだ─と、母には微笑まれたけどね」
「ぐっ───」

親に知られるデートって、恥ずかしくな─────

「─────デート?」
「ん?」

頭からスッポリと抜けていた。もともとキッカさんと3人で来る予定だったから、“お出掛け”と思ってたけど…た…確かに。異性2人で出掛けたら…デートになる……のか!?

チラッとルーファスさんを見ると、「どうかした?」と言いながら笑っている。笑わなくなったと言うルーファスさんは、どのルーファスさんなんだろうか?と思ってしまうくらい、やっぱりルーファスさんはいつも笑顔だ──ではなくて…

「デートになるんだな…と思いまして……」
「今頃?」
「あー……エメラルドの事でスッポリ抜けてました。」
「なるほど……」

「んー」と、ルーファスさんは少し思案した後「もっと意識してもらえるように…頑張らないと駄目なんだな…」と呟いた。

ー違うから!意識はしてるから!ー

なんて恥ずかしくて言えないよね!?

それからは、またまた砂糖口撃を喰らう事になり、パンケーキの味も、最後の方はよく分からなくなってしまったのは……仕方無い。











*ルーファス視点*

『今日は………本っ当に色々ありましたけど、ありがとうございました。』

ペコリと頭を下げてお礼をするウィステリア殿の顔は、なんとも微妙な顔なのは…仕方無い。それでも、また次の約束はできたから良しとする。





─アレサンドル執務室─


「あ、ルーファス、おかえり。楽しかったか?」

「楽しかったが8割、どうしてくれようが2割だな。」

「は?“どうしてくれよう”??」

俺は、今日あった出来事をアレサンドルに話した。




「それは大変だったな……と言うか、そんな報告は、エメラルド殿側からは上がっていないぞ?」

「上がる訳ないだろう。聖女にとって都合の悪い事だからな。」

聖女付きの侍女や護衛騎士は、聖女に傾倒している者が多い。それが、今のエメラルド殿を作った原因の一つにもなっている。人員を変えても、結局は同じパターンになってしまうのだ。
あんな聖女であっても、聖女は聖女。キッカ殿でさえ、エメラルド殿の扱いには困っているのに手が出せない状態だと言っていたから、俺達にもどうする事もできない。
早く、女神アイリーン様が目覚めれば良いと思う反面、ずっと眠っていれば良いのにとも思ってしまう。
何となく、ウィステリア殿は、元の世界に還るんだろうな─と思っているからだろう。

「取り敢えず、同じ愛し子のウィステリア殿から言われたなら…少しは反省してくれれば良いが……」

ー無理だよなー

とは、俺もアレサンドルも口には出さなかった。

「もう二度と関わりたくないと言っていたから、大丈夫だとは思うが……後は、聖女の周りの者達がこの事を知った時に、どう動くか─だな。」

“聖女の為に”と、勝手に動く者は居ないとは言い切れない。

「キッカ殿にも、報告しておいた方が良いな。」

それしかないと思っていると


「話はウィステリア様から聞いたわ。」

と、ニッコリ微笑むキッカ殿が現れた。
いや、微笑んではいるが、殺気を含んだ圧が半端無い。

「ウィステリア様は私が護るけど、お前達はもう少し、あの聖女を見張っておいてちょうだい。もう、あそこ迄来たら……はアイリーン様も赦してくれると思うから。」

それだけ言うと、キッカ殿はまた姿を消した。











*??*


『あまり、悠長な事は言ってられないわね…鹿を……なんとかしましょうか………』






しおりを挟む
感想 223

あなたにおすすめの小説

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。 そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。 この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。 聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。 ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

王太子殿下から逃げようとしたら、もふもふ誘拐罪で逮捕されて軟禁されました!!

屋月 トム伽
恋愛
ルティナス王国の王太子殿下ヴォルフラム・ルティナス王子。銀髪に、王族には珍しい緋色の瞳を持つ彼は、容姿端麗、魔法も使える誰もが結婚したいと思える殿下。 そのヴォルフラム殿下の婚約者は、聖女と決まっていた。そして、聖女であったセリア・ブランディア伯爵令嬢が、婚約者と決められた。 それなのに、数ヶ月前から、セリアの聖女の力が不安定になっていった。そして、妹のルチアに聖女の力が顕現し始めた。 その頃から、ヴォルフラム殿下がルチアに近づき始めた。そんなある日、セリアはルチアにバルコニーから突き落とされた。 突き落とされて目覚めた時には、セリアの身体に小さな狼がいた。毛並みの良さから、逃走資金に銀色の毛を売ろうと考えていると、ヴォルフラム殿下に見つかってしまい、もふもふ誘拐罪で捕まってしまった。 その時から、ヴォルフラム殿下の離宮に軟禁されて、もふもふ誘拐罪の償いとして、聖獣様のお世話をすることになるが……。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

巻き込まれではなかった、その先で…

みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。 懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………?? ❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。 ❋主人公以外の他視点のお話もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。 ❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

処理中です...