45 / 82
二度目の召喚
エメラルドとルーファス
しおりを挟む
『───何で……ルー様は……ウィステリアなんかに…微笑むの?』
私達の目の前で、儚げに涙を流し出したエメラルド。
「「…………」」
私とルーファスさんの目の前で泣かれても、どうにもならないよ?なんて思う私は、嫌な奴なのかもしれない。泣いて許されると言うのなら、誰だって泣くだろう。
その前に、儚げに涙を流して庇護欲を掻き立てるような姿ではあるけど……私を蔑むような言葉を発した後だって事……気付いてないよね?きっと、エメラルドは私を蔑んでいると言う自覚がないんだろう。無自覚に、私を下に見ているんだ。
はぁ───と、ルーファスさんが溜め息を吐くと、それに反応するようにエメラルドの肩がビクッと揺れた。
「──“ウィステリアなんかに”か……今のでよく分かった。」
顔を上げたエメラルドは、未だにポロポロ泣きながらルーファスさんを見つめている。“ルーファスさんが助けてくれる”と思っているような目で─。
「もう一度言うが、“ルー”とは呼ばないでもらいたい。本来、名前呼びも許した覚えはない。」
ーまさかの、名前呼びを飛び越えての愛称呼びだったの!?ー
「でも、シアもそう呼んでいたでしょう?だから─」
「アリシア様は王女だったから、そう呼ばれても否とは言えない。でも、仲の良い王女がそう呼んでいるからと言って、エメラルド殿も“ルー”と呼んでも良いと言う理由にはならない──と、何度か伝えた筈だけどね。」
ー伝えられていたのにも関わらずの愛称呼び。凄いな…余程自分に自信?があるのか、ただの───馬鹿なのかー
「バーミリオン殿とアズール殿が、エメラルド殿や騎士達に何も言わなくなったのは、ウィステリア殿を守る為だったが…エメラルド殿が何もしなかったのは、ウィステリア殿を下に見ていたから。“女魔導士”と、蔑ろにされていたウィステリア殿を見ていて……愉しかったのか?それとも……優越感を覚えていたのか?」
エメラルドがパチパチと大きく瞬きをした後、ピタッと涙が止まった。
ー何処かに、涙のスイッチがあるんだろうか?ー
「エメラルド殿の周りは…エメラルド殿にとって都合の良い者達しか居なかったから、誰も注意してくれる者は居なかっただろう?アズール殿は、何度か注意を促してはいたが、聖女2人が態度を改めず、それが更に悪化させた。それを、エメラルド殿は理解していないのだな。」
「私は…ウィステリアを…女魔導士だからと蔑んだりなんて………」
「─してないとは言わせない。まぁ…エメラルド殿が理解していようがしてまいが、この際もう関係ないな。俺がどうしてウィステリア殿に笑うのか──」
「え?」
ルーファスさんは一度口を噤むと、私の手にソッと手を添えて、今迄の冷たい目はどこへやら。フワリと優しく私に向かって微笑んだかと思うと
「俺は、ウィステリア殿を目にするだけで、自然と笑顔になる─と言うだけだ」
ーぐは────っー
勘弁して下さい!不意打ちも止めて下さい!至近距離での砂糖口撃と顔面攻撃も止めて下さい!
言葉にできない分、ギッ─と睨んでみると「可愛らしい反応だな」と、更に笑われただけだった。
ー何が可愛かったんだ!?眼科に行こうか!?ー
言葉が乱れてしまったのは仕方無い!
「何で───っ!」
ーはっ!エメラルドが居た事、忘れかけてたよ!ー
軽く手を動かしてルーファスさんの手を離して──くれないだと!?
1人焦る私と、そんな私を楽しそうに見ているルーファスさんに、エメラルドは声を張り上げた。
「何で、ウィステリアなの!?私の方が先に好きになったのに!私は聖女として頑張ったのに、どうして私が怒られなきゃいけないの!?だって、シアと騎士達が言っていたんだもの。女魔導士なんて要らないって!」
「なるほど、それが、エメラルド殿の本音か…」
ここでようやく私から手を離して、また改めてエメラルドへと冷たい視線を向けるルーファスさん。私に向けられているわけではないのに、自然と背筋が伸びてしまう。
「好きになるのに順番は関係無い。あったとしても、俺は他人を見下して笑っているような人を好きになったりはしない。嫌悪感しかない。聖女として頑張った事は知っているし、それは有り難いとも思うが、それは、バーミリオン殿やアズール殿は勿論の事、ウィステリア殿だって同じだ。女神アイリーン様によって選ばれてしまっただけで、そこに優劣は無い。聖女だから特別でも無い。勝手に優劣を付けていたのは……アリシア様とエメラルド殿と、その周りの人間達だけだ。」
「でも、穢れを浄化できるのは聖女だけでしょう!?」
「そう、聖女だけだ。でも、アズール殿は今でも国中を駆け回って魔獣を狩っているし、バーミリオン殿は城付きの魔導士でありながら、相手の身分関係無く助けを求められればそれらに応じて動いている。それで…エメラルド殿は?旅が終わってからのこの4年の間、何をしていた?」
「私は……神殿で………」
「そう。エメラルド殿は、1日数名限定で貴族相手に祈りを捧げていた。平民には……見向きもせずにね。」
私達の目の前で、儚げに涙を流し出したエメラルド。
「「…………」」
私とルーファスさんの目の前で泣かれても、どうにもならないよ?なんて思う私は、嫌な奴なのかもしれない。泣いて許されると言うのなら、誰だって泣くだろう。
その前に、儚げに涙を流して庇護欲を掻き立てるような姿ではあるけど……私を蔑むような言葉を発した後だって事……気付いてないよね?きっと、エメラルドは私を蔑んでいると言う自覚がないんだろう。無自覚に、私を下に見ているんだ。
はぁ───と、ルーファスさんが溜め息を吐くと、それに反応するようにエメラルドの肩がビクッと揺れた。
「──“ウィステリアなんかに”か……今のでよく分かった。」
顔を上げたエメラルドは、未だにポロポロ泣きながらルーファスさんを見つめている。“ルーファスさんが助けてくれる”と思っているような目で─。
「もう一度言うが、“ルー”とは呼ばないでもらいたい。本来、名前呼びも許した覚えはない。」
ーまさかの、名前呼びを飛び越えての愛称呼びだったの!?ー
「でも、シアもそう呼んでいたでしょう?だから─」
「アリシア様は王女だったから、そう呼ばれても否とは言えない。でも、仲の良い王女がそう呼んでいるからと言って、エメラルド殿も“ルー”と呼んでも良いと言う理由にはならない──と、何度か伝えた筈だけどね。」
ー伝えられていたのにも関わらずの愛称呼び。凄いな…余程自分に自信?があるのか、ただの───馬鹿なのかー
「バーミリオン殿とアズール殿が、エメラルド殿や騎士達に何も言わなくなったのは、ウィステリア殿を守る為だったが…エメラルド殿が何もしなかったのは、ウィステリア殿を下に見ていたから。“女魔導士”と、蔑ろにされていたウィステリア殿を見ていて……愉しかったのか?それとも……優越感を覚えていたのか?」
エメラルドがパチパチと大きく瞬きをした後、ピタッと涙が止まった。
ー何処かに、涙のスイッチがあるんだろうか?ー
「エメラルド殿の周りは…エメラルド殿にとって都合の良い者達しか居なかったから、誰も注意してくれる者は居なかっただろう?アズール殿は、何度か注意を促してはいたが、聖女2人が態度を改めず、それが更に悪化させた。それを、エメラルド殿は理解していないのだな。」
「私は…ウィステリアを…女魔導士だからと蔑んだりなんて………」
「─してないとは言わせない。まぁ…エメラルド殿が理解していようがしてまいが、この際もう関係ないな。俺がどうしてウィステリア殿に笑うのか──」
「え?」
ルーファスさんは一度口を噤むと、私の手にソッと手を添えて、今迄の冷たい目はどこへやら。フワリと優しく私に向かって微笑んだかと思うと
「俺は、ウィステリア殿を目にするだけで、自然と笑顔になる─と言うだけだ」
ーぐは────っー
勘弁して下さい!不意打ちも止めて下さい!至近距離での砂糖口撃と顔面攻撃も止めて下さい!
言葉にできない分、ギッ─と睨んでみると「可愛らしい反応だな」と、更に笑われただけだった。
ー何が可愛かったんだ!?眼科に行こうか!?ー
言葉が乱れてしまったのは仕方無い!
「何で───っ!」
ーはっ!エメラルドが居た事、忘れかけてたよ!ー
軽く手を動かしてルーファスさんの手を離して──くれないだと!?
1人焦る私と、そんな私を楽しそうに見ているルーファスさんに、エメラルドは声を張り上げた。
「何で、ウィステリアなの!?私の方が先に好きになったのに!私は聖女として頑張ったのに、どうして私が怒られなきゃいけないの!?だって、シアと騎士達が言っていたんだもの。女魔導士なんて要らないって!」
「なるほど、それが、エメラルド殿の本音か…」
ここでようやく私から手を離して、また改めてエメラルドへと冷たい視線を向けるルーファスさん。私に向けられているわけではないのに、自然と背筋が伸びてしまう。
「好きになるのに順番は関係無い。あったとしても、俺は他人を見下して笑っているような人を好きになったりはしない。嫌悪感しかない。聖女として頑張った事は知っているし、それは有り難いとも思うが、それは、バーミリオン殿やアズール殿は勿論の事、ウィステリア殿だって同じだ。女神アイリーン様によって選ばれてしまっただけで、そこに優劣は無い。聖女だから特別でも無い。勝手に優劣を付けていたのは……アリシア様とエメラルド殿と、その周りの人間達だけだ。」
「でも、穢れを浄化できるのは聖女だけでしょう!?」
「そう、聖女だけだ。でも、アズール殿は今でも国中を駆け回って魔獣を狩っているし、バーミリオン殿は城付きの魔導士でありながら、相手の身分関係無く助けを求められればそれらに応じて動いている。それで…エメラルド殿は?旅が終わってからのこの4年の間、何をしていた?」
「私は……神殿で………」
「そう。エメラルド殿は、1日数名限定で貴族相手に祈りを捧げていた。平民には……見向きもせずにね。」
65
お気に入りに追加
2,546
あなたにおすすめの小説
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
【完結】前世聖女の令嬢は【王太子殺害未遂】の罪で投獄されました~前世勇者な執事は今世こそ彼女を救いたい~
蜜柑
恋愛
エリス=ハウゼンはエルシニア王国の名門ハウゼン侯爵家の長女として何不自由なく育ち、将来を約束された幸福な日々を過ごしていた。婚約者は3歳年上の優しい第2王子オーウェン。エリスは彼との穏やかな未来を信じていた。しかし、第1王子・王太子マーティンの誕生日パーティーで、事件が勃発する。エリスの家から贈られたワインを飲んだマーティンが毒に倒れ、エリスは殺害未遂の罪で捕らえられてしまう。
【王太子殺害未遂】――身に覚えのない罪で投獄されるエリスだったが、実は彼女の前世は魔王を封じた大聖女・マリーネだった。
王宮の地下牢に閉じ込められたエリスは、無実を証明する手段もなく、絶望の淵に立たされる。しかし、エリスの忠実な執事見習いのジェイクが、彼女を救い出し、無実を晴らすために立ち上がる。ジェイクの前世は、マリーネと共に魔王を倒した竜騎士ルーカスであり、エリスと違い、前世の記憶を引き継いでいた。ジェイクはエリスを救うため、今まで隠していた力を開放する決意をする。
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
魔法使いの恋
みん
恋愛
チートな魔法使いの母─ハル─と、氷の近衛騎士の父─エディオル─と優しい兄─セオドア─に可愛がられ、見守られながらすくすくと育って来たヴィオラ。そんなヴィオラが憧れるのは、父や祖父のような武人。幼馴染みであるリオン王子から好意を寄せられ、それを躱す日々を繰り返している。リオンが嫌いではないけど、恋愛対象としては見れない。
そんなある日、母の故郷である辺境地で20年ぶりに隣国の辺境地と合同討伐訓練が行われる事になり、チートな魔法使いの母と共に訓練に参加する事になり……。そこで出会ったのは、隣国辺境地の次男─シリウスだった。
❋モブシリーズの子供世代の話になります❋
❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽く読んでいただけると幸いです❋
王太子妃候補、のち……
ざっく
恋愛
王太子妃候補として三年間学んできたが、決定されるその日に、王太子本人からそのつもりはないと拒否されてしまう。王太子妃になれなければ、嫁き遅れとなってしまうシーラは言ったーーー。
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる