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二度目の召喚

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「名前を取り戻しても、瞳の色がそのままなのは、この世界に馴染んだから─と言う事です。」


お祝いの飲み会が終わり、キッカさんの転移魔法で邸へと帰って来てから瞳の色の事を訊くと、その理由を教えてくれた。

この世界に残ると決めた後、元の世界での存在を消して名を取り戻す─それで、ようやく体や魂?が、この世界に馴染むようになる。そうでなければ、いつまで経ってもその存在は不安定のままで、そこで存在する事もできなくなる可能性がある─との事だった。

バーミリオンさんの瞳の色は朱色、アズールさんも紺碧色のままだったから、この世界に馴染んだと言う事だ。

「エメラルドも…翠色のままって事か─」
「そうですね。取り敢えずは翠色ですね。」
「ん??」

「バーミリオン様とアズール様は、ちゃんとこの世界に馴染んではいますが、正直、エメラルド様は……微妙なところなんです。」


キッカさん曰く──

聖女の務めは果たして、この世界を救ってくれたのは事実であり、感謝されるべき聖女ではある。しかし、同じ召喚された者であり助け合うべき者同士だった筈が、エメラルドはウィステリアを助けなかった。見てみぬふりどころか、に同調したのだ。

「今はまだアイリーン様が眠りに就いているままなので分かりませんが、アイリーン様が目覚めた後、その事をどう判断するかで、エメラルド様の処遇は変わって来ます。」

“聖女”と言う存在は、この世界にとっては大きい存在となる為、他者への影響力が大きい。その聖女が仲間でもある女魔導士を蔑ろにする事を黙認した事。その事を、アイリーン様がどう判断するかによっては、この世界には“不適合”とされる可能性がある─と。

「その場合は、エメラルド様はアイリーン様の“許し”を失う事になり、この世界に馴染む事ができなくなる為……元の世界に戻される事になります。その時、エメラルド様の瞳の色も、黒色に戻ります。」

「それじゃあ…私は今、アイリーン様の“許し”を失っている状態なの?」

ー不安定な存在になってるって事!?ー

「いえ、ウィステリア様だけに関してはイレギュラーに次ぐイレギュラーなんですけど、まだ、アイリーン様の愛し子である事は確かなんです。」

キッカさんも、いまいち分からないそうだけど、私を千代様の愛し子にして“許し”を与えて日本に召還しよう─としたそうだけど、私がまだアイリーン様の“愛し子”のままだったようで、それができなかったそうだ。

私がアイリーン様の愛し子のままだから、アイリーン様が目覚める迄還れない─と言う事らしい。

「複雑過ぎない?」
「すみません!私が油断したばかりに!!」

土下座して謝る人─妖狐─を、生で初めて見ました。

兎に角、アイリーン様が目覚めなければ、私は日本には還れないと言う事には変わりはない。ならば─


「キッカさん、一つ……お願いしても良いですか?」
「はい!何でもお願いして下さい!いくつでも大丈夫です!」
ガバッと顔を上げて、正座をしたまま私を見上げるキッカさん。
「いやいや、一つだけで大丈夫だから!」

ヤル気満々?なキッカさんを落ち着かせてから、私は一つだけ、キッカさんにお願いをした。










それから5日後──



「今日は、誘ってくれてありがとう。」
「キッカ殿も……許可してくれて、ありがとう。」

「──────ウィステリア様のお願いでしたからね………」

キッカさんのそのが、“不本意”である事を物語っている。

今、私達の目の前には、アレサンドル様とルーファスさんが椅子に座っている。
そう、私がキッカさんにお願いした事は、アレサンドル様とルーファスさんが、この邸に辿り着ける許可を与えてもらう事だった。因みに、バーミリオンさんとアズールさんも辿り着けるけど、エメラルドは辿り着けないそうだ。使い(妖)魔なのに、同じ愛し子でも扱いが違うのは大丈夫?とも思わなくもないけど、キッカさんも色々と思うところがあるのかもしれない。

「王太子のアレサンドル様をお呼びしてしまって、すみません。」

ペコリ─と謝ると、「ウィステリア殿が謝る必要は全くないから!いつでも呼び出してもらって構わない!」と、アレサンドル様に全力で訴えられた。
それから、お互い落ち着いたところでイチコがお茶の準備をしてくれて、私はこれからの事について話をさせてもらう事にした。



気付く人も居るかもしれないけど、私が再びこの世界に来た事は公にしない事。

魔導士である事は素直に受け入れるが、王城付きの魔導士にはならず、平民の魔導士として市井で働く事。

「エメラルドにも…私が居る事を伝えてもらっても良いですけど…私からは、エメラルドに対して何かする事はありません。反対に、エメラルドが私に連絡を取りたい─と言うなら…アレサンドル様かキッカさんを通して欲しいんです。」

「分かった。全て……ウィステリア殿の願い通りにするよ。」

と、アレサンドル様はニッコリ微笑んだ。



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