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二度目の召喚

ティータイム、後、キッカ

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もう、目の前に居る生き物は、人間ひとではないのだろう。いつからこんな人間になってしまったのか……。私達が諦めなければ、こんな事にはならなかったんだろうか?

「第一王女アリシア、お前の王族としての権限を全て剥奪の上、北の棟に一生涯幽閉とする。連れて行け……。」

「何を───っ!?」

私の一言で、どこからともなく影が現れ、妹が叫ぶ前に口を塞がれ、抵抗する間もなく連れ去ろうとした時──



『甘いわね──まだ、大福の方がよっぽどマシじゃない?』

と、声が響いたのと同時に、私の周りにピンッ─と結界が張られたのが分かった。

「……キッカ殿?」

何故か、そこには少し弱った感じのキッカ殿が居た。弱ってはいるが、しっかりと私達には圧を掛けている。

『幽閉だなんて、甘いわね。幽閉後に病死なんて、更に甘くしてどうするの?その女の処遇は……一度私が預かるわ。』

パチンッ─と、キッカ殿が指を弾くと、捕まえていた影の手から妹の姿が消えてしまった。

『取り敢えずは、最低半年は預かるわ。それからあの女の様子を見ながら……返せるようなら返してあげるわ。それじゃあ、私、まだまだする事があるから、また後日改めて来るわね。』

と言って、結界を解除した後、やっぱりどこか弱った感じのキッカ殿は、私達の目の前から姿を消した。


「「…………」」


妹を連れ去ったのは、神の使い(妖)魔だ。「駄目だ」「返せ」とは言えないし、言うつもりもない。もう連れ去られた後だ。キッカ殿に任せる以外は無い。

「お前達、今、見た事聞いた事は他言無用だ。分かったな?」

控えていた侍女や近衛達にそう告げた後、私はルーファスと共に国王陛下の元へと急ぎ戻った。



ー“ダイフク”とは…何だろうか?ー












その翌日──

バーミリオンとエラ殿が揃って、王太子わたしの執務室へとやって来た。


「ようやく、名前を取り戻せたので、先に婚姻届けだけでも出す事にしました。」

「そうか、それは……良かった。色々とおめでとう。」

確か、6年も空いてしまったから、名を戻す迄には時間が掛かる─と言っていなかったか?それが…3日?で全て終わらせたのか?あぁ、だから、昨日見たキッカ殿は、弱ったように見えたのか?

「あの…それで…一つ、訊いても良いですか?」

「ん?何だ?」

「アズールやエメラルドも…名前を取り戻せているんですか?」

「それはまだ分からない。このバーミリオンからの報告が初めてだからね。アズールは…王都に居るかどうかも分からないから、名前を取り戻せていたとしても、報告はまだ先になるだろうね。」

取り敢えずは、アズールにはウィステリア殿の事は伏せておいて、“召喚者らしき者を保護した”と魔法で手紙を飛ばしたから、2、3日もすれば、一度王都には戻って来るだろう。

「エメラルド殿には、今日の午後に会う予定をしているから、その時に確認してみるが…何か気になる事でもあるのか?」

バーミリオンはギュッと口を閉じた後、エラ殿と視線を合わせて軽く頷いた後、また私の方に視線を向けた。

「エメラルドに…色々訊きたい事があって…。“いつか訊いてみよう”と思いながら4年も経ってしまって…。それで、名前を思い出したら、自分を取り戻せたようで…目の前が広がった?明るくなった?感じで…今なら訊けなかった事を訊ける気がして。だから、エメラルドと話す時間を作ってもらいたいんです。」

おそらく、バーミリオンの言う訊きたい事とは、ウィステリア殿の事だろう。名前を思い出した今、燻っていた色んな思いを消化させて前に進みたいのだろう。

「バーミリオンは、午後からは予定はあるのか?」

「いえ。今日は俺もエラも午後からは休みだったので、下城する前に─と思ってここに来ました。」

「なら、午後、私と一緒にエメラルド殿の所に行くのはどうだ?あぁ、私の事が気になるのなら、別の日で調整するが……」

「いえ、アレサンドル様が良ければ、今日でお願いします。」


取り敢えず、時間迄エラと外でランチでもして来ます─と言って、2人は一旦下城した。

ようやく名を取り戻せて、ようやくの結婚だ。あの2人は、本当に仲が良いとしか聞かない。今だって、本当に嬉しそうな顔をして──手を繋いで出て行った…よな?

ーいや、羨ましくなんてない……筈だー

チラリと、机の上に置いてあるカレンダーに視線を向ける。

「後……半年か……長いな……………」

そう呟いて、耳に着けているピアスをそっと触れてから、私は手元にある資料に目を落とし、執務を再開させた。




    
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