二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん

文字の大きさ
上 下
33 / 82
二度目の召喚

兄妹のティータイム③

しおりを挟む
女魔導士ウィステリアを蔑ろにする─と言う事は、彼女を選んだ女神アイリーン様を否定すると言う事だ。

喩え愛し子でなかったとしても、この国を救ってくれる者に対する態度ではない。
ただ、今回の事例は少し難しいところもあった。同じ召喚された者であり愛し子のエメラルド殿が、ウィステリア殿を庇わなかった事。エメラルド殿が一言言えば、脳筋騎士達も態度を改めたかもしれない。

とは言え、ルーファスは少し置いといて、ウィステリア殿にもきちんとした態度、対応をした騎士も居たから、それは言い訳にはならない。それに、エメラルド殿に関しては、アズールもバーミリオンも思うところがあるようで、エメラルド殿にはあまり良い顔はしていなかった。


兎に角、国王陛下はメイナードからの報告にキレて、私とメイナードに騎士団全体に調査を入れさせ、今迄の行いを全て報告する事となった。
騎士たる者、相手を見て態度を変えるなど、あってはならない。それさえ忘れてしまった脳筋騎士は、所属部署に関わらず、それなりの人数にまでのぼってしまった為、単純に“不名誉除隊処分”とはいかなかった。


特に酷い者数名は不名誉除隊処分としたが、残りの者達は一旦城付きの騎士から外し、各辺境地へと配属し最低3年の辺境地生活をさせる事になった。

ー命があったら、また王都ここに戻って来れるだろうー

そんな訳で第二騎士団に所属する近衛騎士も数名居なくなった為に、ルーファスはそのまま妹に付く事になってしまったのだ。同時に、妹を監視する役割もあったが……。
そんな理由を、王族の一員でもある筈の妹は全く知らない。知ろうともしないのだ。
そんな妹だ。父も母も最初は色々と頑張ってはいたが、あまりにも変わらない妹、寧ろ傲慢さが酷くなり──色々と諦めてしまった。

そんな王女だ。コレを、侯爵以上にの家に降嫁させる予定は全く無かったし、そんな条件があるとも言った事は一度も無い。
良くて、“元気で子が生まれれば誰でも良い”と言っているような者で、基本は幽閉だった。何故侯爵以上じゃないと結婚できない─と思ったのか…


「色々説明は省くが、ルーファスが今迄お前に付いていたのは、ただ単に人員不足だったからだ。特に、お前付き近衛が数人配置移動になったからな。3年程前、お前付きの近衛の顔ぶれがガラッと変わった事には……気付いていなかったんだろうな…。そんな訳で、ルーファスはお前の側に居たいから居たのではなく、私が、仕方無くお前に付けていただけだ。」

「…………」

体を震わせているのは、怒りからなのか…ショックからなのか…。

ふぅ─と、軽く息を吐いてから本題に入る。


「それで?ウィステリア殿を再び召還した──いや、のは……お前か?アリシア。」


ピクリッ─と、固く握り締められていた手が反応した。そのまま小首を傾げて不思議そうな顔をして

「どうして……その事をお兄様が知っているの?」

妹は否定する事も無く、本当に不思議でたまらい─と言う顔をしている。妹は腐っても王族だから、召還については必ず幼い頃に教えられている。召還を行う魔導士もまた、その者達だけには知らされる──が、魔導士に知らされるのは、魔法陣の図と、召還魔法は1人や2人、少人数での魔力量では成功しないどころか、ルールを守らなければ、人数があっても全員が魔力の枯渇に陥り死んでしまう─と言う事だけを伝える。その為、6年前の召還に関わった10人の魔導士達は今回の召還には関わってはいないだろう。


“喩え魔力が足りても、そこにが無ければ成功する事はない”

と言う事は、女神アイリーン様が許した者にしか知らされない事であり、今では父である国王陛下と王太子である私しか知らない事である。魔力が足りたとしても、召還はできないのだ。

妹は、魔力が足りないから召還は成功しない─と言う事だけを知っている。そう、成功しないと分かっていて、ある1人の魔導士に召還魔法を使わせたのだ。

この馬鹿で愚かな脳内お花畑な妹は、聖魔法しか使えはしないが、魔法陣を描く事は得意としていた。描くだけで発動させる事はできなかったが、魔力持ちの者に発動させ、そこから蝶やリスなど、小動物を作り上げて遊んだりしていた。
きっと、召還の魔法陣を見て覚えて描き、それを魔導士に発動させたのだろう。

「失敗すると分かっていて、何故、召還魔法を使わせた?」

「何故か?失敗すると分かっていたから、召還させたのよ?あの女の跡を辿るのが大変で…2年も掛かってしまったけど……何故か、2年経ったある日、あの女の魔力がこちら側と繋がっている跡が見付かったと、あの魔導士から連絡があって……それで、召還させたのが半年前だったかしら?」

ふふっ─と笑う妹はソレだけを見ると綺麗だ。

「魔法陣を展開して暫くは頑張っていたけど……やっぱり魔力が足りなかったみたいで、倒れてしまったわ。あの女は……どこにのかしら?ざまぁ無いわ。私のルーを誑かした罰を受けたのよ……ふふっ…」


更なるその笑みに、私はゾッとした。


しおりを挟む
感想 223

あなたにおすすめの小説

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。 そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。 この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。 聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。 ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

王太子殿下から逃げようとしたら、もふもふ誘拐罪で逮捕されて軟禁されました!!

屋月 トム伽
恋愛
ルティナス王国の王太子殿下ヴォルフラム・ルティナス王子。銀髪に、王族には珍しい緋色の瞳を持つ彼は、容姿端麗、魔法も使える誰もが結婚したいと思える殿下。 そのヴォルフラム殿下の婚約者は、聖女と決まっていた。そして、聖女であったセリア・ブランディア伯爵令嬢が、婚約者と決められた。 それなのに、数ヶ月前から、セリアの聖女の力が不安定になっていった。そして、妹のルチアに聖女の力が顕現し始めた。 その頃から、ヴォルフラム殿下がルチアに近づき始めた。そんなある日、セリアはルチアにバルコニーから突き落とされた。 突き落とされて目覚めた時には、セリアの身体に小さな狼がいた。毛並みの良さから、逃走資金に銀色の毛を売ろうと考えていると、ヴォルフラム殿下に見つかってしまい、もふもふ誘拐罪で捕まってしまった。 その時から、ヴォルフラム殿下の離宮に軟禁されて、もふもふ誘拐罪の償いとして、聖獣様のお世話をすることになるが……。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

巻き込まれではなかった、その先で…

みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。 懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………?? ❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。 ❋主人公以外の他視点のお話もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。 ❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

処理中です...