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二度目の召喚

3本の…

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あれから執務室を出て、そのまま侍女長に連れられて地下室へとやって来た。

「良いと言われる迄、出て来るんじゃないよ」

と言った後、侍女長は外から鍵を掛けてから去って行った。
この部屋にはシングルベッドが二つあり、一つにはブランが眠っていた。

「抜き打ちの視察って、よくあるんですか?」

「普通はあまりないわ。今回のは特別な事よ。多分……私達の事が関係しているのかもね。」

数年前から噂に上がっていた事─



“アマリソナ領では、人身売買が行われている”



国によって違うが、このクロスフォード王国では、人身売買や奴隷制度は禁止されている。罪人に関しては例外もあるが、一般人の私やケイティさん、ブランに枷を嵌めているのは違法になる。

「このチャンスを生かさないと…ノワール、私に…魔力を流す練習をしましょう。」

他人ひとに自分の魔力を流した事なんてないけど、今はやるしかないー

私は手をギュッと握り締めて、コクリと頷いた。




ーそう言えば…“破壊する”って、どう言う事…なんだろう?ー










「ノワールは、魔力の扱いが上手ね」
「え?」

私、褒められました。落ちこぼれだと思っていたから、めちゃくちゃ嬉しいです。喩え嘘であっても。

「ふふっ、嘘じゃないからね。」
「ありがとうございます。」

兎に角、昨日はあれから寝る事なく魔力を流す練習をした。あまり流し過ぎると私が倒れてしまう為、ほんの少しだけ流してみると、ケイティさんの体内の魔力も少し流れができたようだった。

「この枷さえ外せれば、後は私がノワールとブランの枷も外すから…任せてね!」

ニヤリ─と自信満々?に微笑むケイティさんは、やっぱり、とんでもない魔力持ちなのかもしれない。何故か、ケイティさんに任せておけば大丈夫なような…安心感がある。

「ノワールは…がしたい?」
「え?」

ー仕返しは…考えてないけど?ー

なんて、言えない雰囲気なのは…気のせいかな?

「まぁいっか。ノワールの分迄私が、きっちり落とし前をつけるから……ふふっ……」
「……」

ーあれ?ケイティさん、人が変わってませんか?ー

これが、本来のケイティさんなのか…一体ケイティさんは何者で、どれ程の魔力持ちなのか……



それは、2日後、私は………私達は思い知らされる事となる。








******

アマリソナ領の視察は2日に渡って行われる。良く無い噂があるのは、その領内に住んでいるキルソリアン子爵家の周辺だけだった為、2日目の視察はキルソリアン邸のみとしていた。




「これはこれは……王太子殿下直々の視察でしたか……」
「あぁ、今回は極秘の抜き打ち視察だから…私が行う事も箝口令を敷いていたんだ。」

ニッコリ微笑む王太子に、ジェイミー=キルソリアンは内心焦っていた。視察に来るのは、どうせ王城から依頼を受けたアマリソナの文官だと思っていたのだ。それが、まさかの王太子。彼の発する言葉は全て実行されるし、しなければならないのだ。誤魔化しや屁理屈は通用しない。

「それで…今回はどのような視察を?」
「“どのような”とは、どう言う意味かな?」
「それは────」

ジェイミーが口ごもると、その様子を目にしたアレサンドルは目をスッと細めてから口を開いた。

「ここには……とても珍しい色をした使用人が居るそうだね。」

「──っ!?」

「昨日、街で色々聞き込みをしてみたら、“たまに来るキルソリアン邸の使用人が、珍しい黒色の髪で、王都に興味があるようで”と耳にしてね。から、王都の事を教えてあげようかと思ってね。その子を……呼んで来てくれるかな?」

“くれるかな?”と疑問形ではあるが、これは決定事項だ。呼んで来なくてはいけないのだ。


キルソリアン夫妻は、ノワールとブランとケイティには、いつも首元が隠れる服を着せていた為、使用人達は3人が枷を嵌めている事を知らない。
その上、その3人は邸の外へ出す事はしていなかった──つもりだったのだが……、いつもノワールに仕事を先輩使用人2人のお陰で、ノワールは街に出掛ける事ができ、その存在を知られる事になっていたのだ。勿論、そんな事は、ジェイミーとシエンナの耳に入る事は無かった。

ある意味、先輩使用人2人は、良い仕事をしていたのである。

ジェイミーが部屋に控えていた家令に目配せをすると、その家令は一礼して部屋を出て行く─

「余計な真似はしないようにね」

と、アレサンドルは、その家令の背中に声を掛けた。










「ノワール、今から視察にいらっしゃった王太子殿下の元へ連れて行くが、一切何も喋るな。その枷も隠し通すように。でなけれは──」

と、家令がノワールの首に嵌めてある枷に魔力を流す。

「───い──────っ!」

ビリビリと電流のような痛みが体中に流れ込み、思わずノワールは蹲った。

「「ノワール!」」

そんなノワールに、ケイティとブランが走り寄って背中を撫でたりしている。

「分かったな?余計な真似をすれば───」

「ノワール、辛いかもしれないけど、今がチャンスよ。私に…流してくれる?」

「………」

痛みはまだ残っているノワールだったが、ケイティの言う通り、ケイティの腕にそっと触れて一気に魔力を流し込んだ。







『これだけあれば、充分よ』


そう言って微笑んだケイティさんの瞳は琥珀色ではなく、金色に輝いていた。
そして、ケイティさんが自分の首に嵌められている枷に手をやると─パンッ─と大きな音を立てて枷が粉々に弾け飛んだ。


『あぁ……これでようやく……を護れる。』

うっそり微笑むのはケイティさん───だよね?
そのケイティさんの頭には三角のケモミミが現れ──


何故か、お尻に3本のふさふさもふもふの尻尾が着いていた。


『たっぷりと……をしなければね?』





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