二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん

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二度目の召喚

二度目の召喚?

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今でもハッキリと思い出せる。
あの日は満月で、銀色の月の光がキラキラと輝いていてとても幻想的な景色が広がっていた。
そこで2人が微笑み合っていて───


「何でまた……ここに?」


異世界召喚って、そんなにも簡単にできるものなんだろうか?魔力の多い者が、転移魔法を使って移動できる事は知っているけど…異世界ともなれば、そんなにはできない筈だよね?

「一体…どうなって………」
『────キャンッ!!』

夕方近くの森で、座り込んだまま考えていると、少し奥の方から犬?の鳴き声が聞こえて来てた。

「……犬…だよね?魔獣とかじゃ…ないよね?」

魔獣だったらどうする?

「あっ!」

自分を落ち着かせてから目を瞑り、自身の体内のを確認してみる。

ー良かった…少し…弱くはなってるけど、私の中に魔力が流れてるー

4年も普通の生活をしていたからか、4年前のような強い魔力はないけど、いざと言う時には、逃げる為の時間稼ぎ位はできるだろう。

「兎に角…動かなきゃ……」

ここは、王都からかなり離れた領地だった筈。
二度とこの世界に来る事は無いと思っていたけど、来てしまったなら……仕方なくも無いけど、また還りたいなら……王都を─あの人達に会いに行かなければいけないんだよね?

ー兎に角、先ずは……さっきの声のする方に行ってみようー

警戒しながらも、私は森の奥へと入って行った。







そこで目にしたのは、真っ白の毛並みの犬だった。しかも、何故か足枷が嵌められていて、口から血が出ているせいで、口の周りは白い毛が真っ赤に染まっていた。

「大変!だっ…大丈夫!?」
『──グルルルル……』

その犬は、私を目にした途端歯を剥き出しにして威嚇するように低い唸り声を上げた。

「お…落ち着いて?何もしない…と言うか、その枷を外せるかどうか…試させて?それに、怪我の具合が見たいだけだから…」

何て言ったところで…分かってくれないよね?と思っていたけど、暫く私を威嚇し続けた後、唸るのをやめてその場に体を横たえた。

ー異世界の動物は、人間ひとの言葉が理解できるのかなぁ?ー

そう思いながらその犬にゆっくりと近付いた。




4年前、私は水属性の魔力を持っていた為、軽い怪我ならその魔力で治す事ができていた。“怪我を”感覚だ。
見たところ、この犬は口の中に傷があるだけで、体は大丈夫そうだった。
その口の中の傷を治すと、その犬の尻尾が少しだけユラユラと揺れ出した。

その後、何とか足枷を外そうかと試みてみたけど、鍵穴どころか繋ぎ目さえない為に外せなかった。

「ひょっとして…魔法で嵌められてる?」

もしそうなら、外す事は難しいだろう。でも、何故犬に足枷?と思った時、その犬の耳がピクッと反応した後勢い良く立ち上がった。

「こんな所に居たか!」
「えっ!?」

いつの間にか、私の背後に数人の男の人が居て、犬がその人達に飛び掛る。

「沈め!」
『──グゥーッ』
「えっ!?」

ある一人の男の「沈め」と言う言葉に反応するかのように、犬が、上から叩き付けられたように平伏す。

ーえ?一体、何が起こってるの!?ー

「何でこんな所に子供ガキが居るんだ?」

ハッ─とした時には手遅れだったようで、カシャンと言う音と共に、首に何かを着けられた。

ー何!?ー

首に着けられたに手を当てると、ソレは酷く冷たいモノで、体から体温を奪っていくかのように、自分の体が冷えていくのが分かる。

「へぇ……お前、珍しいだな。ガキだから娼館ってのは無理だが…これはこれで高くかもなぁ…」

と、目の前の男の人が、下卑た笑みを浮かべている。

ー“売れる”って何?ー

訊きたい事がいっぱいあるのに、今すぐ逃げなきゃいけないのに、体が冷えて動かない。魔法も……魔力がうまく流れていないのか……魔法を使える感覚が全く無かった。

「兎に角、ここは今日中には出ないと約束の日には間に合わないから、そのガキも連れて行くぞ。おらっ!さっさと立て!」
『キャン───ッ』
「っ!!」

未だ地面に平伏したままだった犬のお腹を蹴り上げて立たせた後、首にロープを縛り付けて引き摺るようにして歩き出した。

「ほら、お前も蹴られたりしたくなかったら、黙って歩け!」

「っ!」

犬が……私の願望もあるけど、心配そうな目で私を一瞥した後、またズルズルと歩き出す。
そして私は、冷えた体のせいか、恐怖からなのな分からない体の震えを耐えながら歩き出した。


何故また、この世界に召喚されたのか。誰が私を召喚したのか分からない。
今分かった事は

“今ここには、私を召喚した人は居ない”

と言う事だけだった。


ー私はこれから先……どうなるの?ー





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