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46 王太子レイモンド
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目が覚めると、そこはまた王城内の客室で、お父様とクレアお姉様が居た。
「魔道具が壊れてしまっていたようだ」
番を認識できなくなる魔法が組み込まれている魔道具。その魔道具を発動させる為に、私はその魔道具に毎日魔力を込めて、自分自身に魔法を掛けていたのだけど、その魔道具が壊れてしまっていたそうだ。
「だから、番を認識できてしまったのね」
「シーフォールスに居る筈のリュシーが、ユーグレイシアの王城で倒れたって聞いて、本当に驚いたわ」
「お父様、クレアお姉様、色々とごめんなさい」
「リュシーが悪い訳じゃないだろう?全て話を聞いて、本当に驚いたけど、王太子殿下には感謝しかない。ユラとか言う小娘を拝めなかったのは…残念だがな……」
「お父様………」
お父様の殺気の含まれた笑顔は久し振りだ。
「それで、これが新しい魔道具だ」
「ありがとう」
これで、また安心──と言ったところだけど、どうして王太子様にはバレたのか。王太子様は人間だから、獣人の番に対する感覚は分からない筈。
「また後で話をしに来ると仰っていたが、2日後にトルガレントへと送ってくれるそうだ。後2年、頑張りなさい」
「はい。お父様」
「ちゃんと手紙も書く事。お兄様なんて、いつもリュシーの心配ばかりして、お母様に呆れられているわ。本当は、今日もお兄様が来たがったのだけど、あまりにも騒ぎ過ぎるものだから、お母様とクロエに軟禁されてるのよ。馬鹿よね?」
「ふふっ……お兄様宛の手紙を書くわ」
それから1時間程3人で話をしてから、2人は帰って行った。
******
「落ち着いた…かな?」
「はい。父を呼んでいただき、ありがとうございました。それに…何度も助けていただいて、本当にありがとうございました」
「お礼は受け取ったから、これでおしまい─と言いたいところだけど…少し、話でもしようか?」
「はい」
ここは、王太子様専用の応接室。扉付近に護衛が2人、壁際に女官が2人。そして、中央にあるテーブルを挟んで向かい合うように、王太子様と私がソファーに座っている。
パチン─と王太子様が指を鳴らせば、私達2人の周りに、音を遮断する結界が張られた。
「さて…どこから話そうか…それとも、クレイオン嬢に質問してもらって、答えて行く方が良いかな?」
そう言ってもらえるのなら、遠慮せず訊くしかない。正直に答えてくれるかどうかは分からないけど、回りくどく訊いたところで、時間が無駄になるだけだ。
「では………あの…どうして、私の番だと分かったのですか?王太子殿下は人間であって、番に対する感覚や感情は分からい筈…ですよね?」
「そう…だね。人間である私には…分からない感情ではある。ある……けど………」
王太子様は腕を組んで、目を閉じた。
「───何かが足りない。でも、足りない何かが、そこにある。それは、とても愛おしいもの。唯一無二のもの」
ーえ?ー
「それが欲しくて欲しくて、この手を伸ばして、掴んで、捕らえて、捕らえたら…二度と離さない」
「……………」
王太子様は腕を組んだまま目を開けた。
「大切にしたいのに、触れるのが恐ろしくもなる…そんな感情だろうか……」
ー何故?ー
まさしく、その通りの感情だ。獣人の私でさえ、番に出会う前まで、そんな感情は全く分からなかったのに、何故、人間の王太子様が分かるのだろうか?勿論、王太子様が獣人だと言う事はない。曾祖父母の代迄遡っても、そこに獣人の血は混ざっていない。
「その相手が、同じ獣人なら求め合えるから問題無いんだろうけど…相手が人間なら…素直に喜べない……」
「どうして………その様な事まで………」
「かつて、私には……誰よりも愛する人が居たんだ」
“かつて”?“居たんだ”?
今迄、王太子様に婚約者どころか、恋人が居たと言う事を耳にした事はない。だから、今でも多くの高位貴族の令嬢達が王太子妃の座を狙って蠢いている。
「でも、大切にしたいのに彼女に触れると壊してしまいそうで、大切にしたいから距離をとっていたら……私は最愛の彼女を喪ってしまったんだ。愚か者だろう?」
「……………」
“大切にしたいから距離をとっていた”
ーアーティー様も…そうだったとしたら?ー
「あの…うしなってしまったと言う事は……」
「私の知らない所で、彼女は……追い詰められてしまって、本当の意味で気付いたのは、彼女が亡くなった後だったんだ」
「……どうして………そんな…話を私に………」
ーまさか…ねー
「どうして、私はあの時、自分の口から想いを伝えなかったのか。どうしてあの時、私は彼女を護らなかったのか。どうしてあの時────彼女をケイトに任せてしまったのか………」
「ケイ………ト?」
「私は……恨まれて当然だった…………エリナ」
「魔道具が壊れてしまっていたようだ」
番を認識できなくなる魔法が組み込まれている魔道具。その魔道具を発動させる為に、私はその魔道具に毎日魔力を込めて、自分自身に魔法を掛けていたのだけど、その魔道具が壊れてしまっていたそうだ。
「だから、番を認識できてしまったのね」
「シーフォールスに居る筈のリュシーが、ユーグレイシアの王城で倒れたって聞いて、本当に驚いたわ」
「お父様、クレアお姉様、色々とごめんなさい」
「リュシーが悪い訳じゃないだろう?全て話を聞いて、本当に驚いたけど、王太子殿下には感謝しかない。ユラとか言う小娘を拝めなかったのは…残念だがな……」
「お父様………」
お父様の殺気の含まれた笑顔は久し振りだ。
「それで、これが新しい魔道具だ」
「ありがとう」
これで、また安心──と言ったところだけど、どうして王太子様にはバレたのか。王太子様は人間だから、獣人の番に対する感覚は分からない筈。
「また後で話をしに来ると仰っていたが、2日後にトルガレントへと送ってくれるそうだ。後2年、頑張りなさい」
「はい。お父様」
「ちゃんと手紙も書く事。お兄様なんて、いつもリュシーの心配ばかりして、お母様に呆れられているわ。本当は、今日もお兄様が来たがったのだけど、あまりにも騒ぎ過ぎるものだから、お母様とクロエに軟禁されてるのよ。馬鹿よね?」
「ふふっ……お兄様宛の手紙を書くわ」
それから1時間程3人で話をしてから、2人は帰って行った。
******
「落ち着いた…かな?」
「はい。父を呼んでいただき、ありがとうございました。それに…何度も助けていただいて、本当にありがとうございました」
「お礼は受け取ったから、これでおしまい─と言いたいところだけど…少し、話でもしようか?」
「はい」
ここは、王太子様専用の応接室。扉付近に護衛が2人、壁際に女官が2人。そして、中央にあるテーブルを挟んで向かい合うように、王太子様と私がソファーに座っている。
パチン─と王太子様が指を鳴らせば、私達2人の周りに、音を遮断する結界が張られた。
「さて…どこから話そうか…それとも、クレイオン嬢に質問してもらって、答えて行く方が良いかな?」
そう言ってもらえるのなら、遠慮せず訊くしかない。正直に答えてくれるかどうかは分からないけど、回りくどく訊いたところで、時間が無駄になるだけだ。
「では………あの…どうして、私の番だと分かったのですか?王太子殿下は人間であって、番に対する感覚や感情は分からい筈…ですよね?」
「そう…だね。人間である私には…分からない感情ではある。ある……けど………」
王太子様は腕を組んで、目を閉じた。
「───何かが足りない。でも、足りない何かが、そこにある。それは、とても愛おしいもの。唯一無二のもの」
ーえ?ー
「それが欲しくて欲しくて、この手を伸ばして、掴んで、捕らえて、捕らえたら…二度と離さない」
「……………」
王太子様は腕を組んだまま目を開けた。
「大切にしたいのに、触れるのが恐ろしくもなる…そんな感情だろうか……」
ー何故?ー
まさしく、その通りの感情だ。獣人の私でさえ、番に出会う前まで、そんな感情は全く分からなかったのに、何故、人間の王太子様が分かるのだろうか?勿論、王太子様が獣人だと言う事はない。曾祖父母の代迄遡っても、そこに獣人の血は混ざっていない。
「その相手が、同じ獣人なら求め合えるから問題無いんだろうけど…相手が人間なら…素直に喜べない……」
「どうして………その様な事まで………」
「かつて、私には……誰よりも愛する人が居たんだ」
“かつて”?“居たんだ”?
今迄、王太子様に婚約者どころか、恋人が居たと言う事を耳にした事はない。だから、今でも多くの高位貴族の令嬢達が王太子妃の座を狙って蠢いている。
「でも、大切にしたいのに彼女に触れると壊してしまいそうで、大切にしたいから距離をとっていたら……私は最愛の彼女を喪ってしまったんだ。愚か者だろう?」
「……………」
“大切にしたいから距離をとっていた”
ーアーティー様も…そうだったとしたら?ー
「あの…うしなってしまったと言う事は……」
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「……どうして………そんな…話を私に………」
ーまさか…ねー
「どうして、私はあの時、自分の口から想いを伝えなかったのか。どうしてあの時、私は彼女を護らなかったのか。どうしてあの時────彼女をケイトに任せてしまったのか………」
「ケイ………ト?」
「私は……恨まれて当然だった…………エリナ」
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―――『私の番には飼い主がいる』
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