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33 無効化
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ー“白い探し物”とは、一体何だろう?ー
ユラに付いている護衛は、イーデン様がリューゴ商会で雇っている護衛だった。どうやら、シーフォールスにやって来てからは、その護衛と共に“白い探し物”を探していたそうだ。
「色々考えたんです。白い物は何なんだろう?って。生き物だろうと言う事は分かっていたんですけど……アラスター様に直接訊こうかと思ったけど、どうしても驚かせたくて。それで、色々調べてみたら、この世界には普通の動物以外にも、魔獣と呼ばれる生き物が居るって事を知って…」
この世界に魔獣が存在すると言う事は、この世界に来てからすぐに教えてもらってる筈だ。メグは既に知っていたのだから。どれ程ユラが不勉強なのかがよく分かる。
ー白色の生き物か……ー
生き物─普通の動物にとっての白は、色んな意味で大変だったりもする。種や住んでいる土地によって普通である白なら問題無いけど、白変種による白は、それだけで色々と狙われやすくなる。珍しいからペットに─なんてものはいい方で、毛皮目的で狩られたりもする。中には、幼獣の方が毛並みが綺麗で皮も柔らかいから─と、幼獣が狩られる事もある。
ヴェルティル様が、そう言う意味で手に入れたいとは思ってはいないだろうけど。嫌な予感しかないのは、ユラが関係しているからだ。
「この森の中に、その探し物かもしれないものが居るんです」
ユラが指し示したのは、王都から少し離れた場所にある森だった。王都にある森でありながら、奥の方は鬱蒼として暗くてよく見えない。それでも、嫌な感じはしないから穢れはないだろう。穢れが無いと言う事は、魔獣が出る訳でもないだろう。
「この森で、よく白い生き物が目撃されるそうなんです。とっても毛並みの綺麗な白い生き物が!」
「…そうなんだね」
こんな森に白色の生き物とは─白狼とか?白狼は、地域によっては神の遣い手とも呼ばれたりするから、もし白狼なら、ユラの手から守らなければならない。本当に…面倒事を持ち込む天才かもしれない。
「取り敢えず、中に行きましょう!」
ユラは意気揚々と森の中へと進んで行った。
******
「なかなか出て来ませんね」
「そうだね」
「…………」
森の中を歩き始めて1時間。白色の生き物どころか、小動物の一匹すら目にしていない。
「?」
それと、何故かずっと感じている違和感。その違和感が気になって仕方無い。
「この森全体に、目くらましのような魔法が掛かっているようだね。だから──」
「なるほど!だから、白色の生き物が居ないように見えてるんですね!?」
「その可能性はある。だから─」
「それなら任せて下さい!私、魔法を無効化にする魔道具を持ってるんです!」
「「は?」」
ー何でそんな高価な魔道具を持ってるの!?ー
「ユラ、何故そんな──今はそれは置いといて!ユラ、それを使っては──」
「無効化!!」
「「ユラ!!!!」」
その魔道具を使ってはいけない!──
と、ヴェルティル様が止めようするよりも前に、ユラが無効化の魔道具を発動させてしまった。
パンッ─と何かが弾けるような音と同時に鬱蒼とした森に光が溢れた。
ーヤバい!!ー
本当に色々とヤバい!国王のお膝元にある森全体に掛けられていた魔法と言う事は、国王が意図的に掛けた魔法である可能性が高い。その魔法を、他国の人間が解いてしまったのだ。それと─無効化の魔法と言う事は、私に掛けている魔法も解けると言う事だ。勿論、私に掛けている魔法は、私自身が番を認識できなくなる魔法だ。その魔法が解けてしまったら───
ドクンッ───
「─────っ!!」
爽やかなのに、甘さを含んだ香り。
その香りが、欲しくて欲しくて──この手を伸ばして、掴んで、捕らえて──捕らえたら────
ー二度と離さないー
「ユラ!今すぐその魔道具を停止させるんだ!でなければ、俺達は犯罪者になるかもしれない!」
「え?む…無理です!これは一度発動させると数時間は止まりません」
「──っ!」
ーしっかり…しろ!私!!ー
手を伸ばすな
その手を捕らえるな
彼は…私のモノではない
「ユラ、その魔道具を───クレイオン嬢?」
「──っ!!」
どうやら、私の異変に気付いたようだ。
「クレイオン嬢、大丈夫?顔色が……」
「だっ……いじょ…ぶなので……今はユラを……」
ーそれ以上、私に近付かないで!ー
「クレイオン嬢?」
「っ!!」
「クレイオン嬢!!」
私の方へと伸ばされたヴェルティル様の手から逃れる為に、私はその場から走り出した。
ーヴェルティル様から、離れないと!逃げないと!ー
「クレイオン嬢!」
「えっ!?ちょっ!アラスター様!?」
その場に留まっているユラと護衛を置いたまま走り出した私と、私を追ってくるヴェルティル様。
ーこのままでは…追い付かれる!ー
そして、暫く走り続けた後──
「クレイオン嬢!」
私は獣化して、更に走り続けてヴェルティル様から逃げ切った。
ユラに付いている護衛は、イーデン様がリューゴ商会で雇っている護衛だった。どうやら、シーフォールスにやって来てからは、その護衛と共に“白い探し物”を探していたそうだ。
「色々考えたんです。白い物は何なんだろう?って。生き物だろうと言う事は分かっていたんですけど……アラスター様に直接訊こうかと思ったけど、どうしても驚かせたくて。それで、色々調べてみたら、この世界には普通の動物以外にも、魔獣と呼ばれる生き物が居るって事を知って…」
この世界に魔獣が存在すると言う事は、この世界に来てからすぐに教えてもらってる筈だ。メグは既に知っていたのだから。どれ程ユラが不勉強なのかがよく分かる。
ー白色の生き物か……ー
生き物─普通の動物にとっての白は、色んな意味で大変だったりもする。種や住んでいる土地によって普通である白なら問題無いけど、白変種による白は、それだけで色々と狙われやすくなる。珍しいからペットに─なんてものはいい方で、毛皮目的で狩られたりもする。中には、幼獣の方が毛並みが綺麗で皮も柔らかいから─と、幼獣が狩られる事もある。
ヴェルティル様が、そう言う意味で手に入れたいとは思ってはいないだろうけど。嫌な予感しかないのは、ユラが関係しているからだ。
「この森の中に、その探し物かもしれないものが居るんです」
ユラが指し示したのは、王都から少し離れた場所にある森だった。王都にある森でありながら、奥の方は鬱蒼として暗くてよく見えない。それでも、嫌な感じはしないから穢れはないだろう。穢れが無いと言う事は、魔獣が出る訳でもないだろう。
「この森で、よく白い生き物が目撃されるそうなんです。とっても毛並みの綺麗な白い生き物が!」
「…そうなんだね」
こんな森に白色の生き物とは─白狼とか?白狼は、地域によっては神の遣い手とも呼ばれたりするから、もし白狼なら、ユラの手から守らなければならない。本当に…面倒事を持ち込む天才かもしれない。
「取り敢えず、中に行きましょう!」
ユラは意気揚々と森の中へと進んで行った。
******
「なかなか出て来ませんね」
「そうだね」
「…………」
森の中を歩き始めて1時間。白色の生き物どころか、小動物の一匹すら目にしていない。
「?」
それと、何故かずっと感じている違和感。その違和感が気になって仕方無い。
「この森全体に、目くらましのような魔法が掛かっているようだね。だから──」
「なるほど!だから、白色の生き物が居ないように見えてるんですね!?」
「その可能性はある。だから─」
「それなら任せて下さい!私、魔法を無効化にする魔道具を持ってるんです!」
「「は?」」
ー何でそんな高価な魔道具を持ってるの!?ー
「ユラ、何故そんな──今はそれは置いといて!ユラ、それを使っては──」
「無効化!!」
「「ユラ!!!!」」
その魔道具を使ってはいけない!──
と、ヴェルティル様が止めようするよりも前に、ユラが無効化の魔道具を発動させてしまった。
パンッ─と何かが弾けるような音と同時に鬱蒼とした森に光が溢れた。
ーヤバい!!ー
本当に色々とヤバい!国王のお膝元にある森全体に掛けられていた魔法と言う事は、国王が意図的に掛けた魔法である可能性が高い。その魔法を、他国の人間が解いてしまったのだ。それと─無効化の魔法と言う事は、私に掛けている魔法も解けると言う事だ。勿論、私に掛けている魔法は、私自身が番を認識できなくなる魔法だ。その魔法が解けてしまったら───
ドクンッ───
「─────っ!!」
爽やかなのに、甘さを含んだ香り。
その香りが、欲しくて欲しくて──この手を伸ばして、掴んで、捕らえて──捕らえたら────
ー二度と離さないー
「ユラ!今すぐその魔道具を停止させるんだ!でなければ、俺達は犯罪者になるかもしれない!」
「え?む…無理です!これは一度発動させると数時間は止まりません」
「──っ!」
ーしっかり…しろ!私!!ー
手を伸ばすな
その手を捕らえるな
彼は…私のモノではない
「ユラ、その魔道具を───クレイオン嬢?」
「──っ!!」
どうやら、私の異変に気付いたようだ。
「クレイオン嬢、大丈夫?顔色が……」
「だっ……いじょ…ぶなので……今はユラを……」
ーそれ以上、私に近付かないで!ー
「クレイオン嬢?」
「っ!!」
「クレイオン嬢!!」
私の方へと伸ばされたヴェルティル様の手から逃れる為に、私はその場から走り出した。
ーヴェルティル様から、離れないと!逃げないと!ー
「クレイオン嬢!」
「えっ!?ちょっ!アラスター様!?」
その場に留まっているユラと護衛を置いたまま走り出した私と、私を追ってくるヴェルティル様。
ーこのままでは…追い付かれる!ー
そして、暫く走り続けた後──
「クレイオン嬢!」
私は獣化して、更に走り続けてヴェルティル様から逃げ切った。
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